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茜色の空

「はぁ、一体何なんだよ・・・」

俺は、学校を後にして途方なく歩いていた。


海からの忠告、それは暦とこれ以上親交を深めちゃいけない事。その理由を海から聞いた。


海のあの時の言葉が、何もかもが頭に蘇った。



「だって、お前らが仲良くしたらっ、月乃がっ!・・・月乃が壊れるっ!」


「なっ、何言ってるんだよ?冗談にしても質が悪いぞ」

俺は、そう言うしかなかった。本当は海が、冗談なんて言ってないと分かっていたのに・・・


「冗談なんかじゃねぇ・・・冗談なんかじゃねぇんだっ!」

海の顔が歪む。


俺は海の顔は出会ってから3年間、見たことがなかった。だけど、なんとか声を出した。


「なんでだ?なんで、俺と暦が仲良くしちゃいけないんだ・・・?理由を教えてくれ」


「それはっ!それは・・・」

海はそこで黙ってしまった。


海も悩んでるんだろう。恐らく、俺に言ってしまったら取り返しがつかなくなるから。後戻りができなくなるから・・・


海自身も、こんな事言いたくないだろう。なんだかんだ言って、こいつは優しい奴だから。男勝りで、暴力的だけど、誰よりも優しいから。だけど、海は口を開いた。


「それは・・・お前が、月乃の兄貴に似てるからだ」


俺と、暦のお兄さんが似てるから?それが理由なのか?


「1年前に、月乃の兄貴が死んだことは、お前も知ってるだろ?」


「あぁ。交通事故で亡くなったんだよな」


「そうだ、そして1年前から月乃はいじめられてる。理由は、月乃を庇って、兄貴が死んだからだ。そして、もう1つある」


「もう1つ?」


それから海は、もう1つの理由を語った。


「月乃の兄貴が死んで、月乃と吉井が悲しんでる中、親身に支えてくれた男の先生がいたんだ。名前は盈月尚人えいげつひさと。この学校に赴任したばっかの先生だった。盈月先生は、皆から好かれててな、人気がある先生だったんだ。そして、この学校を辞めた。その理由は・・・月乃なんだ。盈月先生は兄貴が死んだ月乃と、彼氏が死んだ吉井を親身に支えた。相談に乗り、絶望してしまってた月乃を、絶望して、月乃をいじめる吉井を救ったんだ。それからは、月乃はいじめられる事は無かった。だけど、問題が起きた。致命的な問題が・・・」


「・・・暦か」

俺はそう感づき、暦の名を呟いた。


「そうだ。月乃は、親身に支えてくれた、救ってくれた盈月先生のこ事を、死んでしまった兄貴だと思うようになっていた。盈月先生は、月乃のことを思い、ソレを受け入れてた。そして、月乃が盈月先生を、「お兄ちゃん」と呼ぶようになってから1年後、盈月先生は学校を辞め、「いなくなった」。原因はもちろん月乃だ。毎朝盈月先生の家まで行き、待ち、弁当をつくる。それまで兄貴にしていた様に振舞った。だけど、盈月先生もその行為がだんだんと嫌になり、精神的に追い込まれていった。それだけ似ていたんだ。月乃の兄貴に。怒り方や、慰め方、性格が・・・だから、月乃は「お兄ちゃん」と呼ぶ。だけど、月乃の兄貴が好きな奴はもう一人いたよな?そう、吉井だ。彼氏に似ているんだ、当然吉井も好きになる。その新しく好きになった奴もいなくなった・・・だから、吉井は月乃をいじめるんだ」

海は、一息つき、黙った。


「そんな事があったのか。そして、その先生がいなくなったから、暦が壊れた」


「あぁ、盈月先生がいなくなったと、分かった途端、発狂し、暴れだした・・・やっぱお前は知らなかったよな」

海は顔を歪めたまま呟くように言った。


「まぁ、一昨年と去年は色々サボりまくってたからな。その先生の事も暦の兄貴の事も知らん。海、お前はなんで暦の兄貴の事を知ってたんだ?」


「そりゃこの学校の生徒会長だったしな。何かと、会う事は多かったんだ」


この学校に通ってたのか。しかも生徒会長か。


俺はそう反論した


「暦のお兄さんは、全然俺と似てねぇじゃねぇか」


「いや、似てるさ。盈月先生よりも似てる。お前の場合性格とかは全然違うが、雰囲気がそっくりなんだよ」

海はそう断言した。そして続ける。


「だから、月乃と仲良くするなと言ったんだ」


「俺が似てるから、暦が俺をお兄さんと勘違いするようになるから、そしてそうなった場合待ってるのは・・・」

俺はそこから先が言えなかった。


俺の代わりに海が言う。


「そうだ、待ってるのは暦が壊れる事だ。あの時はなんとかなったが、今回は完全に壊れるだろう。なにせ、二度目になるからな。それだけ、似ているんだ。お前は」


似てる・・・か。これは想像以上に厄介な問題だな。


だけど・・・


「そうなったら、俺が暦のお兄さん役になれば暦は壊れない」


海は俺の言葉を聞いて顔をしかめた。


「そんな事出来るわけねぇだろ・・・お前には飛鳥ちゃんがいる」


「だけど、この方法が一番いいだろ」


「それに、お前一生月乃の兄貴役で生きてく覚悟はあるのか?一生だぞ、一生。もし覚悟があったとしても、飛鳥ちゃんはどう思う?」


「それは・・・」


駄目だ・・・まったくと言っていいほど打開策が分からない。くそ、今は打開策を考えない方がいいか?こんな状態でまともな考えが浮かぶわけがない。


俺は、打開策の事を一旦考えないようにし、もう一つ気にかかっていた事を、海に聞いた。


「そういえば、お前は盈月先生が「いなくなった」と言ったが、何処に行ったんだ?」


我ながら、突拍子がない切り替え方だな。


しかし海は数秒間黙ったままだったが、やがて口を開いた。


「自殺したよ。いなくなった数日後に」


「おう!桐生!今、暇か?」

誰かに声をかけられ、意識が戻る。ここは・・・学校の近くの三日月川の土手か。空も夕焼けで、綺麗に茜色に染まっている。きっとボーッとしながら歩いていただろう。


声をかけられた方に顔を向ける。


「なんだ今原か。なんか用か」


「おいおい、なんか用かとはご挨拶だな~。今からカラオケでも行かね?」


こいつは悩みなんて無さそうで羨ましいな。その能天気さを俺にくれ。


今原は俺がずっと今原の顔を見ているので、首をかしげた。


「なんだよ桐生。僕の顔をじっと見て。はっ!お、俺は男には興味なんて無いぞ!」


「はぁ」

ため息しか出てこない。なんでこいつはこんなに馬鹿なんだ?


「た、ため息とは失礼な。まぁ、いいや。んでカラオケ行こうぜ」


カラオケか。なんだか歌う気分でもないんだよな。つっても家に帰っても暦の事で考えるだけだしなぁ。どうするか・・・


俺が考えていると、今原は急に喋りだした。


「ふ~ん。大変だなお前も。いっそ暦ちゃんの事忘れちまえば?」


え?


こいつ、なんて言った?


「お前の事だから忘れるなんて無理かもだね・・・だけどそうしたら暦ちゃんが壊れるんだろ?だったら忘れた方が賢明だと、僕は思うね」


俺は一人で喋り続ける今原を止め、質問を投げかけた。


「なんで「この事」を知ってるんだよ?」


「あー、ごめん。盗み聞きするつもりではなかったんだけど、海との会話聞いちゃってたんだよね。あの時僕も屋上で暇潰そうとして、屋上に行ったらお前らがね」

今原バツの悪そうな顔で俺を見てきた。


「そうか・・・だったらこっちに来ればよかったじゃねぇか」


「いや、あんな場面で行けるわけがないさ。それに海に殴られそうだ」


確かに・・・あの場面で今原が来れば、盗み聞きされた事に激怒して今原の事を殴りそうだ。ちなみに今原は軽音部メンバーとは友達?でもある。


「だからさ、今日はカラオケにでも行ってパッとすっきりしようぜ!」

今原は親指をグッ!と俺に向けてきた。


馬鹿な奴だけどいい奴だよな。こいつ。


・・・だけど。


「悪い、今原。今日は遠慮しとくわ。暦の事・・・考えなくちゃいけないしな」

俺はそう今原に伝えた。


「そうか・・・ま、あんま考えすぎんなよ」


「あぁ。さんきゅな、今原」

俺は礼を言い、帰路についた。


すると、後ろから今原の声。


「桐生。僕は、お前がいなくなるのは嫌だからな。僕は暦ちゃんと喋ったことすらないし、過去の事も偶然聞いて分かったけど、お前が暦ちゃんと一緒にいるのは良くない。それだけは分かる」


俺は黙ったまま歩く。


しかし、今原は続けた。


「お前が盈月みたいになるのは嫌だからな!僕だけじゃなく飛鳥ちゃんや嵐達だってそう思ってるはずだ!大事な事を見失うなよ!」


今原の声が茜色の空に響く。


俺は後ろを振り返った。


今原が俺とは反対の方へ歩いている。


その今原の背中に向かって、呟いた。


「俺だって分かってるさ、ちくしょうめ・・・」

小さな声で、呟いた・・・





お久しぶりです、キリリョーです。 あ、保利かなみさん見てるー?www


・・・すみません、私情を挟んでしまいましたm(_ _)m


保利さんの小説は面白いので、是非皆さんも読んでみてください(^-^)


それに比べて自分の小説は・・・(´Д`)


はぁ、最初に登場人物の交友関係や容姿を細かく書いて?おけばよかっと悔やんでおります・・・


では、短い後書きになりますが今日はこのへんで。


最後に、このような初心者の小説を読んで頂いた、寛大な心を持つ皆様にまた読んで頂けると信じて次回も頑張りたいと思います(^-^)

                              キリリョー

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