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始まり始まり

   …………やっと…………


   …………願いが叶う…………

 

   …………私の…………


   …………ううん、私“達”の…………


























「やっと、片付けが終わったな~」


 僕の名前は、天之川 悠太。今年で高校1年だ。

 今僕は、お爺ちゃんが住んでいた家に来ている。

 なぜかというと、ここの町の高校に通うことになったため、今は誰も住んでないこの家に一人で住むことになったからだ。

 お爺ちゃんは元は大学の先生で家には沢山の本があるんだ。その中には資料で使ったのか、たくさんの昔話や童話なんかが山のようにある。

 僕が小さい頃、その物語をよく読み聞かせてくれたっけ……。

 そんなお爺ちゃんの影響からか僕は自分で物語を作りたいと作家を目指すようになった。

 そのためお爺ちゃんが教師をしていたこの町にある大学の付属高校の文学部に入学したんだ。

 

「しっかし、ほんとにいっぱいあるな~」


 僕は片付け終わった部屋から出てお爺ちゃんの書斎に入ったらその中にはお爺ちゃんが集めた本が埃をかぶって眠っていた。


「うっわ……懐かしいな……。この本」


 その中から一冊の本を手に取る。これはお爺ちゃんがよく読んでくれた童話や神話、昔話が書いてある本だった。


「日本昔話にグリム童話、アンデルセンのもある。……これはイソップ物語、こっちは千夜一夜物語。でこっちはギリシャ神話……ほんとにいろいろあるな」


 その一つ一つを手にとってみれば、小さいころの思い出が蘇ってくる。




 ――――僕ねぇ、こんなぼうけんがしてみたいんだ―――― 




「…………言ってたな…………そんなこと」


 小さい頃の夢。それは物語のように僕も冒険したい、そんな子供が夢見るありふれた夢。


「すっかり忘れてたな~そんなこと」


 昔の思い出に浸りながら、ふとあることを思い出した。



 ――――いいなぁ、一緒にいきたいな――――



「そういえば…………あの時仲良くなった女の子がいたっけな……」


 あれは何時だったか、幼い頃の夏休みにお爺ちゃんの家に1、2週間泊まりに来た時に出会った女の子。

 なんだか寂しそうに一人で公園にいたから、いっしょに遊ぼうって誘ったらびっくりしながらもとても嬉しそうに遊んでいた。夕方になるといつも帰りたくない、まだ遊んでいたいって言ってたなぁ。


「元気にしてるかなぁ? あの子」

 

 ――――また明日~、ゆうくん!!――――

 ――――うん!! また明日遊ぼう!! ○○○○!!――――


「……ありゃ? あの子の名前……なんだっけ?」


 一人うんうんとうねっても、全くあの子の名前が思い出せない。昔のこととはいえ、人の名前を思い出せないのは悪い感じがする。


「……あ、そうだ。お爺ちゃんの墓参り行ってないや」


 そういえばこの家の整理ばっかりでそっちに気が回っていなかった。天国でお爺ちゃんが早く挨拶に来い!……なんて言って怒っているかもしれない、なんて思ってしまった。お爺ちゃんは優しかったけど、気が難しいところの方が多かったから期限を悪くしちゃってるかもな、なんて考えた。


「なら墓参りのついでに街を見てこよう。……もしかしたらあの子に会えるかもな」


 そんなことを考えた僕は懐かしい思い出に溢れたこの家から出て、懐かしい思い出に溢れたこの町にくり出すことにした。





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「うわ~、なっつかしいもんだな。こりゃ」


 町は昔に来たときから変わっていた。あのとき遊んだ草むらが今では住宅街になっていた。たくさんあった田んぼも潰されて今はショッピングモールが建てられていた。

 だけど変わっていなかったところもある。あのとき遊んだ公園。いくらか新しくなっているがあのとき遊んだブランコやすべりだいは今もあった。木のぼりをしたり虫取りをした大木も公園の真ん中にドンと存在していた。今もあの木で遊んでいる子供達をみると、自分もあそこで同じことをしていたのが嘘のように感じる。


「なんだか、寂しかったり嬉しくなったりするもんだな。こういうのって」


 僕は町が変わったところと、変わらないところを見てそんなふうに思っていた。


「…………結局、会えなかったな。まぁ会えるとは思ってないけど」


 あの子――今まで忘れていた思い出がこんなにも気になるなんて思ってもいなかった。本当に今どうしているんだろうか。元気にやっているのかな?

 思い出に浸りながら僕は途中に買ったお備え物が入った袋とお花を持って目的の墓地へと向かった。





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「ここも久しぶりだな……」


 そしてついたお寺の墓地。ここにお爺ちゃんが眠っている。

 僕はおじいちゃんが眠っているお墓の前に立つと呟いた。


「久しぶりだね……お爺ちゃん」 


 僕はお墓をきれいに拭いて、買ってきたお花やお爺ちゃんが好きだったおはぎやお酒を供える。そしてお線香を供えて手を合わせて天にむかって祈った。


(僕、作家になろうと思う。これもお爺ちゃんのおかげ……かな。だから……見守ってね、お爺ちゃん)


「……それじゃあ帰ろうかな…………またね、お爺ちゃん」


 そして墓地から出ようとしたとき







     やっと、あえた……ずっとあいたかったんだよ……







「!? ……な、んだ? 今の?」


 いきなり聞こえた声。それは幼い少女の声。それは……


(あれ、この声……どこかで……)



    いつもの場所で、待ってるからね……ゆうちゃん



(!! …………また、この声……)


 その時僕は思い出した。この声はあの子とおんなじ……。そしていつもの場所っていうのははたぶん……っ子供の頃遊んだあの場所だろう。

 何故今思い出したのかわからない。けど……


「……行ってみるかな。“あの場所”……か」










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「…………ここだ…………」


 そしてついたのは、お爺ちゃんの家の裏にある山。この山に昔なんだかとてつもない化け物が住んでいたという言い伝えがある。その化け物はこの山のどこかに封じられたってお爺ちゃんが昔教えてくれたことがある。

 そんな恐ろしい言い伝え何か関係ないと僕はこの山に入って虫とかを取ったりしたんだ。

 その山を登った奥にその場所はあった。


「……あの時のまんま……てわけでもないか」


 そこは洞窟。昔は、防空壕の代わりに使われていたところらしい。

 ここに探検と称して一人で入って行って、そのあと自分だけの秘密基地にしたところだ。その時なかなか帰ってこない僕を探すために大騒ぎになった記憶がある。ものすごく怒られて二度とここにいかないようきつく言われていたけどそのあともよくここで遊んでいた。

 だけどここで何か事件があったらしく今じゃ立ち入り禁止の札が立ててあった。なんだかオバケや幽霊が出そうな雰囲気を醸し出している。良く幼い頃の僕はこんなところで一人で平気に遊んでいたなぁと感心してしまった。


(…………? ひとり、だったけな…………?)


 いや……もう一人いたような……そういやあの子と一緒に遊んだ気もする。




   やっぱり、きてくれたね。ゆうくん




「! やっぱり……」


 また聞こえる声。その声はあの子の声によく似ている。だけど何かが違うような気もする。なんだろうこの違和感は。




  じゃあ、わたしたちの“願い”、かなえよう?




「え、なんだって?」


 私たちの夢?一体何のことだろう、と一瞬考えに耽る悠太。

 その時、僕は誰かに背中を押されてしまった。いきなりのことでバランスを崩し前に出てつんのめってしまった。


「う、うわ!?」


 洞窟が暗かったので気付なかったが、自分の足元に大きな穴があったのだ。

 背中を押されて穴に落ちそうになった僕は穴に落ちまいと必死になって腕をバタバタとふってバランスを取ろうとしたが重力には逆らえなかった。

 そして、そのまま僕は……穴に落ちた。そこが見えないほどの深い深い穴に。


「うわああああああああああああああ!!??」


 暗い洞窟の中に僕の声がこだましていたがその声もどんどん小さくなっていき、最後には音ひとつ聞こえないくらいに静かな空間に戻ったのだった。














 そう。これが、僕の“冒険譚”の始まりだったんだ……。





















 これで……“願い”がかなうよ……ゆうくん……












 

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