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小説『虚空のバベル』5

作者:三澤賢司
最新エピソード掲載日:2026/10/12
白石崇は財務省事務次官の神保に、十年間で総額百兆円を循環させる「バベル・ループ構想」を提案する。年間十兆円の個人向け国債を公募し、元本と利息を一般会計の特例国債で政府保証する。調達した十兆円は政府系金融機関と東洋銀行連合のFintechプラットフォームが、CD(譲渡性預金)やCP(コマーシャル・ペーパー)で運用し、そこから生まれる超過収益を国民へ還元するという構想だ。
還元手法は三つある。運用成果に連動する上乗せ金利、毎月デジタルウォレットへ直接付与するキャッシュバック、そして次回の国債優先購入権による再投資の促進である。神保は財政と市場運用、Fintechが噛み合う設計を評価しつつ、運用を担う現場の反発を懸念する。
白石は日本政策投資銀行(DBJ)で、運用担当専務の木村から逆ザヤやデフォルトのリスクを厳しく追及される。これに対し白石は、元本は政府保証であること、ブロックチェーンによるT+0の即時決済で中間コストを削減すれば超過収益が確実に生まれることを示し、DBJの参画を取り付ける。
二週間後、第1回の特例国債は公募開始から三分で完売し、購入者の七割を二十〜四十代が占める。構想は閣議で国家基本戦略に決定し、欧米の金融機関も国際標準化に関心を示す。白石は「日本のバベルは、もう誰にも止められない」と言い切り、物語は幕を閉じる。
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