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第6話:銀貨がもたらす「革命」とモフモフの宴

食堂を出た私の足取りは、まるで雲の上を歩いているかのように軽かった。

懐でチャリン、チャリンと鳴る銀貨の音。それは前世での「残業代」や「ボーナス」の響きとは全く違う、自分の力で、そしてなっちゃんと共に掴み取った「自由の足音」のように聞こえた。


「よし、なっちゃん、ルル。今日は大盤振る舞いだよ。まずは……あの隙間風が通るボロ小屋を、最低限、人間(と一頭と一匹)が住める聖域にしよう」


私は活気あふれる市場へと向かった。

向かったのは、入り口に古びた秤が吊るされた雑貨屋『万屋トト』。店主のトトさんは、私の胸元から鼻をヒクヒクさせて顔を出すなっちゃんを見て、眼鏡をずらして三度見した。


「おやおや、珍しいお客さんだ。その……綿あめに黒いインクを落としたような生き物は、北の聖獣の子供かい?」


「いえ、ミニ・ホルスタインのなっちゃんです。今日は、生活を一新するための道具を揃えたくて」


トトさんの「可愛いねぇ、おまけしちゃうよ」という商売上手な誘いに乗りながら、私は次々と「革命」のための道具を選んだ。


ふかふかの綿入りマットレス: 手で押すとゆっくり沈み込み、優しく押し返してくる弾力。前世の安アパートで使っていた、背中にスプリングが刺さる煎餅布団とは次元が違う。


魔法の無煙ランタン: 芯に魔石をはめ込むだけで、太陽のような温かい光を放つ。オイルの臭いも煙もなく、なっちゃんが夜中に興奮して蹴飛ばしても火事にならない安全設計だ。


鉄製の深鍋と魔法のコンロ: 火属性の魔石を動力源とするコンロは、つまみを回すだけで弱火から強火まで自由自在。これでようやく、焦げたスープ以外の料理が作れる。


高級小麦粉、干し肉、そして黄金色の蜂蜜: これこそが文明の味だ。


買い物を済ませ、レンタルした荷車に山積みの荷物を載せて夕暮れの道を戻る。

荷車の上では、なっちゃんがマットレスの感触を確かめるようにパカパカと跳ね、その横でルルが楽しそうに羽を広げていた。


小屋に帰り着き、さっそく「劇的ビフォーアフター」を開始した。

埃まみれの床を拭き、新しいマットレスを敷き詰め、魔法のランタンに火を灯すと、冷え冷えとしていたボロ小屋が、まるでおとぎ話に出てくる隠れ家のような温かさに包まれた。


炙ったパンに蜂蜜をたっぷりとかけ、なっちゃんのミルクを一口。

「ポメラニアンサイズなら飼えるのに」——あの日、四十度のお湯の中で漏らした独り言。

現実では「叶わぬ夢」だったものが、今、こうして魔法と銀貨の力で現実となっている。私はなっちゃんのふかふかの背中を撫でながら、心からの安らぎを感じていた。

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