Day1
※この作品はフィクションです
※専門用語バリバリ使うので、あとがきに「バカでもわかる流れの説明」を加えています。流れに追いつけなくなったら、見てね!
※実在の人物や施設とはなんも関係はありません
Day 1
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私は武漢に住んでいる日本人。月俣蓮。
武漢で科学の研究しているをしておるので、住むことになってる。
早朝に散歩する習慣があるのだが、
いつも歩いていた道に大きい黒いゴミがあった。ここは家の近くだったから拾って捨てようとした。
日本だったら大きなゴミが落ちているなんてありえないかもしれないが、ここは中国だ。でも、何年も住んでいるから慣れている。
でも、近くに行ってみると、ゴミではなかった。
死んだコウモリだった。
ちょうど私は動物実験の検体に死んだ哺乳類が欲しかったので、そのまま研究所へ持ち帰った
研究所に着くと、まだ誰も来ていなかった。
朝の静けさが、白い廊下に響いていた。
私は手袋をつけ、コウモリの死骸を丁寧にビニール袋から取り出した。
羽は広がったままで、毛並みもまだ崩れていない。
死後間もないのか、腐敗臭もない。
目立った外傷はなく、体表もほぼ無傷。
「いい検体だ」――そう思った。
私はそれをステンレスのトレイに乗せ、簡易冷蔵庫で一時保存し、
午後の時間を使って解剖とサンプル採取を行うことにした。
私は冷蔵庫の扉を閉め、白衣の胸ポケットからスマホを取り出した。
――時刻は13時42分。
今日も一日が始まる。
だが、まさかこの小さな死骸が、すべての“始まり”だったとは、
このときの私は知る由もなかった。
午後14時15分。
私はラボ内の解剖室に入り、冷蔵保存していた検体──死んだコウモリ──の初期観察と標本採取を開始した。
検体コード:WZ-34
種:Rhinolophus sinicus
体長:11.4 cm
性別:不明(後の解剖で雌と判明)
防護装備は通常通り、マスク、フェイスシールド、陽圧フード付き作業衣、ダブルグローブ。
接触感染・飛沫感染のリスクを考慮し、滅菌作業台上にて操作。
■ 解剖および初期観察:
腹部を切開し、臓器を1つずつ取り出す。肝臓、肺、脾臓、腎臓、腸、脳組織を順にサンプルチューブに保存。
目視では特段の病理変化は見られない。肺に軽微な出血斑あり──が、外傷か病変かは判断困難。
「はいはい...今調べますからねぇ.......]
心腔部より採血。抗凝固剤(EDTA)入りのマイクロチューブにて保存。
ここまでは通常のプロトコル通りだった。
問題は、血液サンプルをRNAウイルス用qRT-PCR用に抽出処理した直後に起きた。
■ qRT-PCR反応系
ターゲット:コロナウイルス汎用
結果──
増幅曲線は検出閾値(Ct値)を通過、陽性反応。
ただし、Ct値は通常よりも低く、ウイルスRNA量が異常に高いことを示していた。
「仮に新種のウイルスであれば、既存のSARS-CoVやMERS-CoVとは異なるゲノム特徴があるはずだ....!」
この時点で、私の脳裏に浮かんだのは、SARS-CoV-2の初期アウトブレイクの記録だった。
封じ込めに失敗した例を、私は知っている。
そして、同じ過ちを繰り返してはならないという強烈な義務感も。
私は上司である王主任に、初期結果を添えて以下の報告メールを送信した:
件名:【緊急】検体WZ-34より新型ウイルス検出の可能性
本日午後に採取・分析を行ったコウモリ検体(WZ-34)より、
コロナウイルス類似配列を含むRNAが高濃度で検出されました。
現在、フルゲノム解析中。
至急のご確認をお願いいたします。
送信後、私はシーケンスランの準備を終えたまま、しばらく操作室の椅子から動けなかった。
「届いてくれ...!この状況.....!!!」
異常に高いRNA量。
配列の不一致。
これは、偶然の産物ではないかもしれない。
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では、ここまでの流れをバカでもわかるように説明しよう。
科学の研究の仕事で武漢に住んでいる主人公の「月俣蓮」が、死んだコウモリ(キクガシラコウモリ)を拾って、研究用に調べてみた。コウモリを解剖して、肺・肝臓・腸・脳などの臓器を取り出して、さらに、血液を採取して検査した。さらに、加えて感染症の検査(PCR検査)をやってみた。
そしたら、ウイルスの反応が出た!しかも、通常より、ありえないほど量が多かった!詳細を調べると、今まで知られているどのウイルスにも遺伝子が一致しなかった!
ーえっ?これやべぇやつじゃね?ー
すぐさま上司へ連絡した月俣は、このやばい状況に焦っていた.......