4.ギルド通りと、繋がる縁
翌日――
ユウとフェルは、テレミアの中央通りを歩いていた。
ここは「ギルド通り」と呼ばれる地区で、冒険者、職人、商人たちが店舗や仕事場を構えるにぎやかな一角。
王都のような華やかさはないが、実直な気風と職人魂にあふれた活気のある街だ。
「……なんだか、懐かしいな。この道、昔、兄さんたちの買い物に付き合って歩いた」
「うん、でも……今は、ユウが自分で歩いてる道、だね」
フェルの言葉に、ユウは小さく笑った。
ふと立ち寄った小さな店で、道具の手入れを頼んだり。
街角の屋台で、スパイスの効いた軽食をふたりで頬張ったり。
ほんの些細な出来事のひとつひとつが、ユウの心に静かな喜びを灯していく。
◆
そんな中――
「おおっ、兄ちゃんたち、あのときの旅人じゃねぇか!」
懐かしい声に振り返ると、そこには以前に世話になった鍛冶屋「ベルナ工房」の職人ベルナの姿。
セレヴァールからたまたま仕入れに来ていたらしく、まさかの再会だった。
「おぉ、あん時の“仮面のノール”!……じゃなくて、今は“素のユウ”か?」
「えぇ、まぁ。仮面の方は……ちょっと事情があって」
「いいんだよ、そんなの。あのときのお前の仕事は、ほんとに見事だった。忘れちゃいねぇさ」
ベルナはそう言って、ユウの肩をポンと叩いた。
「人ってのは、どこで誰に見られてるかわかんねぇ。……でも、良い仕事をしてれば、ちゃんと“誰か”が見てる」
その言葉が、ユウの胸に深く染み込んでいく。
◆
夕暮れ――
ふたりはギルドに顔を出し、軽い報告とあいさつを済ませた。
そしてその帰り道、フェルがふと思い出したように言った。
「ねえ、ユウ。あの人――ベルナさん。“仮面のこと”には、なにも触れなかったね」
「うん。たぶん、察してたんだと思う。……でも、全部じゃなくて、“必要なぶんだけ”」
「そういうのって……やさしい、ね」
「うん。……すごく、やさしい」
◆
夜。
宿の窓から見下ろす、街の灯り。
淡い光が、まるで“つながる縁”のように、遠くまで連なっていた。
ユウは静かに、ひとつ息を吐いた。
「この街にも、少しだけ……帰ってこられた気がする」
フェルは隣で、そっとその言葉を噛みしめるように頷いた。
「……おかえり、ユウ」




