4.心を映す、仮面の下の魔法
◆翌朝、魔導ギルド本部・別館の応接室
演示会の翌朝。
ユウ――いや、“ルヴィス=アル”の名で仮登録していた彼は、
ギルドからの呼び出しに応じていた。
応接室に通されると、
そこには複数のギルド役員と、
昨夜の演目を見ていた高位魔導士たちの姿が。
「ルヴィス殿。あなたの演目、非常に興味深かった」
「記憶を“読み取らず”、観客自身の心に“映し出させる”……あれは、投影魔法の新しい地平だ」
「しかも補助魔法の組み合わせによる、舞台魔導との融合……まさかFランク相当の登録とは思えんよ」
ユウは――静かに首を横に振った。
「ぼくは、“見せる”つもりじゃなくて、“感じてもらう”つもりでした」
「誰かの心に、静かに触れるような……そんな魔法があっても、いいと思っただけです」
その言葉に、応接室はしばし沈黙した。
やがて、誰かがふっと笑う。
「……いいね。仮面の下にあるのは、静かな革命だ」
◆フェル、ギルド職員と会話する
その頃、フェル(人化Ver.リーア)は、
ギルド職員たちと簡単な会話を交わしていた。
「昨日の演目……すごく感動しました」
「あなたの舞、とても素敵だったわ。まるで、風が語りかけてくるようで……」
リーアは、少し照れたように微笑んで――
「……わたしの中にある“風”が、みんなに届いたのなら……よかった」
その姿は、もう“ただの魔獣の擬人化”ではなかった。
彼女は確かに、“ひとりの表現者”として、舞台に立っていたのだ。
◆噂、静かに広まる
数日後。
街の一角にある小さな魔導ショップで、こんな会話が交わされていた。
「聞いたか? 演示会で“仮面の魔導師”が幻灯花火を使ったって」
「“記憶を使わない記憶魔法”なんて、あり得るのか……?」
「しかも、あの演者の少女……“本物じゃない”のに、本当に“心を伝えてきた”って」
「伝説ってほどじゃない。けど、なんか……あれは、残る」
“記録に残る魔法”ではなく、“記憶に残る魔法”。
その種は、確かに人々の心のどこかに蒔かれていた。
◆帰り道・宿への帰還
ユウとフェルは、ふたり並んで街の小道を歩いていた。
「仮面の下の魔法……ちゃんと、届いてたみたいだな」
「……うん。みんな、やさしかった」
「君の動きが、誰かの記憶を“揺らす”んだよ。踊りって、そういう力あるんだなって」
フェルは少しだけユウを見上げて――
「……ねえ、ユウ。わたし、“風”じゃなくて、“人”でもありたい」
ユウは、迷いなく答えた。
「君は、フェルで――リーアで。君が“なりたい君”でいていい」
「ありがとう、ユウ」
ふたりの間に吹いた風が、
ほんの少し、あたたかくなった気がした。
◆静かな夜のひとコマ
その夜。
「……そういえばさ。演示会の終盤、誰かが涙ぐんでたの、見えた?」
「うん、いた。……なんかね、“心の奥がほどけた顔”だった」
「それが……魔法でできたって、ちょっと不思議な気分だな」
ふたりは静かに、ベッドの上で天井を見上げていた。
仮面の魔導師が刻んだものは――
たった一夜の“伝説”ではなく、
“心に灯る、優しい魔法”の記憶だったのかもしれない。




