表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正体は、街の外に置いてきました〜ギルド登録の地味冒険者と、街に現れる謎の職人の関係〜  作者: 流浪の旅人
(セフィリア精霊郷)ルミル=ナア編:風の宿り木と、フェルの光
58/77

5.風の灯火、未来への種

朝の森は、まだ深い霧に包まれていた。

ルミル=ナアの小さな宿を出たふたりは、森の奥へと静かに歩みを進めていた。


目指すのは――精霊郷の長老のもと。

旅立ちの前に、ひとつだけ、挨拶を済ませておきたかった。



長老の館は、樹齢千年を超えるといわれる巨木《ティエラの枝殿》の中にあった。


「――ようこそ、“風の導かれし者たち”よ」


静かな声が、空気に染み渡るように届く。


現れたのは、白銀の髪と緑の瞳を持つ、老いたエルフの姿の精霊長。

その目は、フェルを見ると、ふわりと細められた。


「心を試し、風に認められた者よ。……そなたの中に、まだ揺らぎはあるが――」


フェルは、静かに頭を下げた。


「……でも、前に進みたいって、そう思ってる」


「ふむ……風の精は、時に“人の姿”をとって現れるという。

いずれ、その子は“風の精”となるやもしれぬ。どうか、その歩みに、灯火を」


長老はユウに視線を移す。


「……願わくば、“護る者”として、“見守る者”として……」


ユウはまっすぐにうなずいた。


「もちろん。俺の旅は、フェルと一緒です。どんな未来であっても――」


「ならば、ゆくがよい。

風は止まず、心が望むかぎり、流れ続ける」



その後、ふたりは静かにルミル=ナアの町を抜けた。

風見の塔を遠くに眺めながら、緩やかな丘を越えていく。


「……ねぇ、ユウ」


「ん?」


「わたし、ここに来てよかった。森も、風も、精霊さんも……やさしかった」


「うん。君の中の風が、ちゃんと微笑んでた。俺には、それが何より嬉しい」


フェルはそっと手を伸ばし、ユウの指先に触れた。


「……また来ようね、いつか」


「約束だよ」


風がそっと吹く。


旅はつづく。

けれど、この街で過ごした時間は、確かにふたりの心に“灯火”を残していた。


それは、記録にも伝説にも残らないかもしれない。

でも――ふたりにとって、何よりも大切な“物語の一幕”だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ