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正体は、街の外に置いてきました〜ギルド登録の地味冒険者と、街に現れる謎の職人の関係〜  作者: 流浪の旅人
(セフィリア精霊郷)ルミル=ナア編:風の宿り木と、フェルの光
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4.森を駆ける、ふたりの背中

朝。ルミル=ナアの森は、やわらかな光に包まれていた。


風が木々のあいだを通り抜け、葉がさわさわと揺れる音がする。

それは、まるで“森そのものが息をしている”ような静けさ。



「よし、今日の依頼は《風路の整備》だってさ」


ユウは地図を片手に、森の入り口でフェルに声をかける。


「うん、森の小道、ちょっと荒れてるって」


「でも、あの風の精霊たちも通る道だし、ちゃんと整備したらきっと喜んでくれるはずだよ」


フェルはうなずいて、軽やかに先を行く。


くるんと回るように、ふわりと跳ねるしっぽ――

その後ろ姿に、ユウは自然と笑みをこぼす。



ふたりは、小さな石をどけたり、崩れた木橋を補修したり。

ときおり精霊のいたずらで飛んでくる落ち葉に笑いながら、黙々と作業を進めていく。


「フェル、あの上の枝に、風の精霊がいるみたい」


「……うん、あの子、昨日もいた。名前、あるのかな?」


「あるかもね。でもきっと、“言葉じゃなくて感覚で呼ぶ”んじゃないかな」


そんな会話をしながら、ふたりは森の奥へと進んでいった。



昼すぎ。


風路の終点にある《風見の丘》で、ふたりはひと休みしていた。

そこには、小さな村の子どもたちが数人、遊びに来ていた。


「わぁ! お姉ちゃん、あの子、お話してる! 精霊さんと!」


「きれーい……風が、ぐるぐるしてる」


フェルは、子どもたちに囲まれながら、森の精霊たちと“言葉にならない会話”を交わしていた。


手をそっと差し出すだけで、風が形を取り、子どもたちのまわりをくるくると回る。


「ふふ……ちいさな風さん、こっちおいで」


声は小さくとも、その笑顔は、どんな言葉よりもやさしかった。



「フェル、人気者だったね」


帰り道、ユウがそう言うと、フェルは少し照れたように顔をそむける。


「……なんか、こそばゆかった。でも、うれしかった」


「精霊も子どもたちも、君のことが好きなんだよ」


「……じゃあ、わたしも、すき」


ぽつりとこぼれたその言葉に、ユウは目を細めた。


「うん。そんなフェルが、誇らしいよ」



森を抜けたとき、ふたりの背中に、また風が吹いた。


それは、あの日の加護のように――やさしくて、力強い風だった。

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