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正体は、街の外に置いてきました〜ギルド登録の地味冒険者と、街に現れる謎の職人の関係〜  作者: 流浪の旅人
(セフィリア精霊郷)ルミル=ナア編:風の宿り木と、フェルの光
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3.加護の兆し、そよ風の誓い

森に、静けさが戻っていた。


それは、ただの“沈黙”ではない。

新しい何かが生まれたあとの、やさしく包まれるような――静謐せいひつ



フェルは、森の中心に立っていた。

風が、彼女のまわりで円を描くように吹き抜けていく。


そして、その中から現れる、透明な風の精霊。


その姿は、形を持たない。

ただ、光の粒子とそよ風の重なりが、“在る”という存在感を伴ってそこにいた。


「風とともに歩む者よ――」


その声は、言葉ではなく、響きで伝わる。


「君の心に宿ろう。我らは、君を祝福する」


精霊は、フェルの胸元へとそっと風を送り込んだ。


それは“加護”という明確な契約ではなかった。

けれど、確かに――フェルの“存在そのもの”を認める合図だった。


「……ありがとう」


フェルの瞳が、少しだけ潤む。

でも、もう涙は落ちなかった。



ユウは、その場から少し離れた木陰で見守っていた。


「……加護、か。発現は……まだみたいだね」


フェルのためにできること。

それを改めて考えながら、ユウは腰の道具袋に手を伸ばす。


取り出したのは、いくつかのメモと、小型の魔導具のコア。

彼は、静かに魔力を注ぎながら、考える。


「……いつでも冷静でいられるように。感情のノイズを、抑える補助魔法……」


《コールドフェイス(感情遮断)》――

自分を押さえるのではなく、“守るため”に感情をコントロールする魔法。


「……フェルが、何かを選ぼうとしたときに、ちゃんと判断できるように」


ユウの表情は、少しだけ硬く。

でも、その目は、どこまでもやさしかった。



森を出るころ。

フェルは、いつものようにユウの隣を歩いていた。


でも――どこか、ほんのすこしだけ違う。


「……風のひと、言ってた。“ともに歩める”って」


「うん。フェルは……ちゃんと、認められたんだ」


「……なんだか、不思議。ずっと昔の自分が、いまのわたしに“だいじょうぶだよ”って言ってくれた気がした」


「それ、たぶん合ってるよ」


ユウは、笑った。


「君は、君のままでいいんだ。誰かの期待じゃなく、誰かの目を気にすることもなく――」


「……うん」


風が、ふたりの背中をそっと押していた。


それは、まるで“旅の続きを祝福する”ように。

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