4.旅人たちは、光を背に
朝のアルトレール。
街の空気は静かで、けれどどこか名残惜しさを含んだ風が吹いていた。
風車亭の前で、仮面の商人ラウル=ディスは、旅装姿のまま佇んでいる。
隣には、ふわふわとしっぽを揺らすフェルの姿。
「じゃあ、これで本当に出発だな……」
◆商人ギルドにて
出発の前に、ふたりは商人ギルドへと立ち寄った。
受付の女性が、仮面のラウルを見つけると、少し寂しそうに微笑む。
「短い間でしたけど、本当に助かりました。……また来てくれますか?」
「ふふ、また“商談”があれば、ぜひ」
ユウは少しだけ照れながら、仮面の奥で視線をそらす。
その横で、フェルがくるんとしっぽを巻きつけた。
職員の足に、そっと一巻き。
「また、もふっていいよ」
「ふぇ……っ、うれしい……!」
職員は顔を赤らめ、でも最後まで笑顔で見送ってくれた。
◆風車亭の裏路地――仮面を外す場所
人目につかない小道で、ユウは仮面を外し、髪を整え、いつもの“素のユウ”に戻っていた。
「ラウルは、ここまでだな」
「……でも、かっこよかった。わたし、すき」
「ははっ、ありがとう、相棒」
仮面をしまいこむ手には、ほんの少し名残惜しさが残っていた。
◆冒険者ギルドへ再び
素の姿に戻ったユウは、フェルとともにギルド支部を訪れる。
受付では、以前から顔なじみの職員が、にこやかに迎えてくれた。
「おっ、また戻ってきたんだね。今日はもう出発かい?」
「はい。ひとまず、次の目的地――セレヴァールへ向かいます」
「道中、気をつけてな。君たちの旅、応援してるよ」
「ありがとうございます」
ギルドの扉をあとにしながら、ユウはふと、フェルに問いかけた。
「……セレヴァール、覚えてる?」
「うん。はじめて、ふたりで歩いた街。……もふの始まりの場所」
◆街の外れ、出発の風
ふたりは、朝の光を背に街を出る。
道の先には、あの日見た懐かしい景色が待っている。
でも、ふたりは知っている。
“今の自分たち”なら、あの街も――
きっと違って見えるはずだって。
「……セレヴァール、行こ?」
「うん。ふたりで、また新しい歯車を動かそう」
もふもふのしっぽが、軽やかに風を切った。
ふたりの旅路は、やさしく続いていく――。




