3.もふもふ喫茶と、もうひとつの出会い
アルトレールの街角に、小さな喫茶店がある。
名前は《こもれびの庭》。
中庭付きのその店は、花と風と、そして“もふもふ”に満ちていた。
◆“看板わんこ”フェノ、登場
「……というわけで、今日はこの子が看板犬です」
「もふっ!」
ラウル――擬装ユウの一言と同時に、フェル(もふVer.)がくるんと回って、子どもたちの前に姿を見せた。
「わあ……!」「ふわふわ……!」「かわいいー!」
店の主人が、ちょっとした“街のイベント”の一環として頼んできたのだ。
「うちの店、時々“癒しのふれあい”をしていてね。街の子たちに、動物と触れ合ってもらってるんだよ」
ラウルは笑って答えた。
「この子は“フェノ”。ちょっと賢くて、ちょっともふもふで、ちょっとだけ特別な相棒です」
◆ぺたん、と座って、ふにゃんと笑う
フェルは、子どもたちに囲まれて最初はぎこちなくしていたが――
次第に、しっぽを振りながらそっと寄り添ったり、背中に乗せて遊んだりと、“癒しの天使”に。
ある小さな子が、言った。
「この子……ねてるとき、夢を見てるのかな」
ラウルが小さく笑った。
「そうだね、優しい夢を見てるのかも。きっと、君たちと遊ぶ夢だよ」
◆ほっこり伝説のはじまり
午後のひとときが終わる頃、喫茶店の前に立ち止まる人がぽつりぽつりと増えはじめた。
「……さっきの“もふもふ”、なんか良かったね」
「娘が、ひさしぶりに大声で笑ってて……」
「なんて名前だったっけ。“フェノ”?あの子……いい子だなぁ」
気づけば、街の掲示板の隅に、こんな紙が貼られていた。
【もふもふの休日】
こもれびの庭 × 看板犬フェノ
※不定期出演、笑顔保証つき
◆その夜、静かに訪れる成長
風車亭の一室。
お風呂から上がったユウが、タオルで髪を拭きながら、窓辺に座るフェルを見つめた。
「今日は、人気者だったな」
「……なんか、くすぐったかった。でも、たのしかった」
フェルは人の姿のまま、ゆったりと脚を投げ出しながら髪を指で梳いている。
湯上がりの頬は少しだけ赤く、目元はどこか満ち足りた表情。
「……そういえば、なんだか、今日は人化が長く続いてる気がする」
「……あ、ほんとだ……。そっか、もしかして……」
ユウは静かに頷いた。
「感情が共鳴したとき、力が自然に“ひらく”ことがあるって話、思い出したよ」
フェルはきょとんとしながら――
にこっと笑った。
「じゃあ、わたし……もふだけじゃなく、“ひと”としても、ちゃんと“いていい”って、思われたのかな」
「もちろんさ。今日の君は、“みんなの希望”だった」




