1.再会の街、風車亭へ
午後、エラナ=シルの森を出たふたりは、なだらかな丘陵を越えて、再びアルトレールの街へと戻ってきた。
いつかの道――けれど、少しだけ懐かしくて、少しだけ変わった気がした。
「……ただいま、って感じだね」
「もふっ(うん、なつかしい匂い)」
街の門を通り抜けると、賑やかな声と風車の回る軽やかな音が、ふたりを出迎える。
◆風車亭、再び
チェックインしたのは、前回と同じ宿《風車亭》。
「おや、また来てくれたのね」
受付の女性は微笑みながら帳簿をめくると、部屋の鍵を差し出した。
「今回は、少し長めの滞在かしら?」
「いえ、今度はちょっと、別の立場で動く予定でして」
ユウは軽く頭を下げる。
「今回は“商人”として、ね」
「……なるほど」
意味ありげに微笑む受付嬢に、フェルがくぅんと一声。
◆冒険者ギルド:再訪
夕方、街の中央にある冒険者ギルド支部にも顔を出す。
「やぁやぁ、おかえり!」
前回対応してくれた女性職員が、笑顔で手を振ってくれた。
「無事に戻ってこれたみたいで何より。次はどんな依頼を?」
「いえ、今回はちょっと……裏方寄りの準備で」
「ふふ、なるほどね。また何かあったら気軽に声かけてちょうだい」
変わらない空気に、ユウはほっとしたように頷いた。
◆部屋にて:ふたりの準備会議
夕食後の部屋、窓から入る夜風が心地よい。
「さてと……今回は“商人ギルド”に登録してみようか」
「しょうにん……? ゆう、あたまのうえでカリカリかくやつ、するの?」
「それは算盤じゃないかな……?」
くすりと笑ってから、ユウは仮面と小道具が入った袋を取り出す。
「仮面の商人《ラウル=ディス》。この街で活動するには、そろそろ別の顔が必要だからね」
「ラウル……ディス? ちょっと、しぶい」
「でしょ? でも中身は、ちょっとお茶目な交渉人、って設定でいこう」
フェルは肉球で「うーん」と頬をかきながら、仮面を見つめた。
◆ラスト:仮面の商人、街に立つ
夜が深まり、街角にて――
人々が眠りにつきはじめた時間、風車の影を背にひとりの男が静かに現れる。
仮面をつけた、落ち着いた青年。
その名は――ラウル=ディス。
「さて……この街で、何を買って、何を売ろうか」
仮面の奥の視線が、じわりと街を見渡した。




