3.君の想いを、ぼくの中に
◆精霊の庭にて
翌朝、エルフの長老の勧めで、
ユウとフェルは“精霊の庭”と呼ばれる神聖な空間へと案内された。
静かな水音、草木の香り、
微かに揺れる空気に混じって、“精霊の気配”が漂っている。
「ここ……なんか、あったかい」
フェルが、すぅっと息を吸い込んだ。
ユウは微笑んで言う。
「精霊って、たぶん“心の形”で感じる存在なんだろうね」
◆伝える術ではなく、伝わる術
長老は、ふたりに言った。
「精霊は、言葉よりも“波”で交流する。
願いや想いが澄んでいれば、自然と共鳴するものじゃよ」
ユウは、ふと考える。
(じゃあ……この魔法が、使えるかもしれない)
ユウは、開発中の補助魔法を起動した。
補助魔法:《イメージ・サブリミナル・リンク》
感情の断片、記憶のかけら――
それらを“魔力のゆらぎ”として、微かに伝える魔法。
◆フェルの想い、ユウに届く
「……フェル、試してみようか。
何もしゃべらなくていい。“伝えたい気持ち”を、ただ浮かべて」
「う、うん……やってみる……」
フェルは、そっと目を閉じる。
肩を寄せ、ユウの手のひらに、そっと自分の手を重ねた。
一瞬――
ユウの意識に、ふわりと温かい光が流れ込んでくる。
さびしさ、うれしさ、あたたかさ……
どこか不器用だけど、真っすぐな“フェルの心”。
(……ああ、これが……)
言葉にならないけれど、ちゃんと“伝わった”とわかる。
ユウはそっと笑って、目を開いた。
◆伝わること、それだけで
「……フェル、すごく上手だったよ」
「……ほんと? なにか、つたわった?」
「うん。全部。まるごと、伝わった」
フェルの頬が、ふわっと赤くなる。
「……よかった……ユウにも、わたしの“きもち”が……」
ユウは、ぽんとフェルの頭に手をのせた。
「こっちこそ、ありがとう。こんな風に繋がれたの、初めてだったから」
しばらく、ふたりは黙って座っていた。
風がやさしく吹き抜ける中、
森の中の精霊たちも――その静かな共鳴に寄り添っていた。
◆ひとつの種が芽吹くように
その日以降、ユウの新しい補助魔法は完成に近づいた。
《イメージ・サブリミナル》は、感情の“微細な揺れ”すら読み取り、伝える技術に進化していく。
そして、フェルの中でも、小さな“芽”が芽吹いていた。
言葉ではなく、想いで通じ合えたこと。
それが――“心の絆”という意味を、少しずつ教えてくれた。




