3.小さな神秘の森で
◆朝の光と、静かな湖畔
「朝の光……水に反射して、キラキラ……」
フェルは湖に向かってのびをしながら、
ひんやりとした朝の空気を楽しんでいた。
ユウはその横で、旅ノートを広げてひとこと。
「さて今日は……観光日和、かな」
ふたりは宿を出て、湖沿いの道を歩く。
静かなエラナ=シルの街は、
精霊の気配に満ちていて、どこか耳に優しい空気が流れていた。
◆古樹通りの市
午前中は、木漏れ日が美しい「古樹通り」へ。
小さな市が開かれていて、精霊彫りの細工品や、風の薬草が並ぶ。
「ほらフェル、あれ……お前の毛並みに似た色の飾り」
「……かわいい。おそろい、にしよう?」
ユウとフェルは、そっと小さな銀のブローチを購入。
旅の思い出が、またひとつ増えた。
◆“静寂の樹々”への誘い
午後、ふたりは市の外れにある“静寂の樹々”と呼ばれる森へ。
エラナ=シルの語源でもあるこの場所は、
風の音さえも優しく、歩くだけで心が落ち着く神秘的な場所だった。
森の奥――
霧のような魔力がゆらりと揺れ、気配が変わる。
ユウは足を止める。
「……誰か、いる?」
「っ……やさしい、感じ……でも、強い……」
◆フィルヴァリスとの出会い
木々の間から、細身の影がふわりと現れる。
緑銀の髪をなびかせた青年が、静かに一礼した。
「人の子が……“ここ”を訪れるとは、珍しい」
彼の名はフィルヴァリス。
この森に生きる“長命の種族”――エルフのひとりだった。
ユウは丁寧に名を名乗り、敵意がないことを示す。
「私はユウ。こちらは相棒のフェル。
ただの旅人で、静かにこの森を感じていたかっただけなんだ」
「……その目には、偽りがない。
君たちが“風を騒がせぬ者”であることは、森が告げている」
彼はそう言って、小さな包みを差し出した。
「これは、“森の客人”へ贈る品。儀礼のようなものだ」
中には、古いエルフ語で刻まれた小さな矢と、
繊細な刺繍が施された“精霊語の詠唱文”。
「……君が望むなら、また会おう。
精霊のこと、矢のこと、語のこと。少しずつなら教えてやれる」
「……ありがとう、フィルヴァリスさん」
フェルは、そっとユウの袖を引いた。
「……ふしぎ。でも、やさしい。すき」
◆夕暮れ、ふたりのノートに
宿に戻ったふたりは、静かに夕食をとり、
その夜は旅ノートにそれぞれの言葉を綴った。
「風の中で会ったエルフは、まるで精霊そのものみたいだった」
by ユウ
「しずかで、やさしいにおい。フィル……すき。」
by フェル(こっそり書いてた)




