1.街灯のぬくもりと、再訪の足音
「ただいま、アルトレール――って感じ、だな」
ユウが小さく呟いたその声に、フェルが「もふっ」と応える。
ふたりはかつて短い滞在をしたこの街に、再び帰ってきた。
赤い屋根の街並み、花咲く窓辺、どこか懐かしい石畳の香り。
「変わらないな、この街……」
街の入り口から少し歩けば、見慣れた看板が目に入る。
《宿屋「風車亭」》。
風に揺れる木製の風車が、くるくると小さく音を立てていた。
◆再会の宿屋「風車亭」
「あらあら……おかえりなさい!」
出迎えてくれたのは、前回と同じ宿の女将。
柔らかく笑うその顔に、ユウは少し照れながら頭を下げた。
「また、泊まらせてもらいます」
「もちろんよ。あの“しっぽの可愛い子”も一緒ね?」
フェルは「もふっ」と返しつつ、得意げにしっぽをふわんと揺らした。
落ち着いた部屋に案内されると、すぐにほっとひと息。
荷を解き終えたユウは、さっそくギルドへ向かうことにした。
◆冒険者ギルド:アルトレール支部(再訪)
「いらっしゃい、ユウさん。また来てくれて嬉しいわ」
カウンターにいたのは、前回と同じ女性の受付職員。
落ち着いた笑みと、親しみのある声が懐かしい。
「次の目的地はエラナ=シルなんです。できれば途中でこなせる依頼があればと」
「ええ、ちょうどよかった。橋の点検と、動物の監視記録の提出ね。
ついでにやるにはぴったりだと思うわ」
「助かります」
慣れたやり取りは、まるで街の“仲間”と話すようだった。
◆夕暮れ散歩と、ふたりの時間
「今日はのんびりできるな、フェル」
「もふもふ(よゆう、だね)」
ギルドからの帰り道。
ふたりは、かつて歩いた路地をもう一度めぐっていた。
雑貨屋の前、以前買った飾り布と同じ柄の新色が並んでいたり。
ベンチのそばには、前と同じ看板猫が、のんびりと日向ぼっこしていたり。
「……あのときより、街が近く感じるな」
ユウはそう呟いて、何気なくスケッチブックを取り出し、
夕暮れの街角を描き始めた。
フェルはその隣で、しっぽをくるんと丸めながら静かに寄り添っていた。
◆宿屋で、ふたりの夕食
「今日はね、前と同じにしてみたのよ。覚えてるかしら?」
女将がにっこりと運んできたのは――
香ばしく焼かれた肉の煮込みと、香草パン。
「もちろん、覚えてます。……やっぱり、この味、落ち着くな」
「もふっ(おかわり)」
「それは早いって……!」
ふたりは、前と同じ席で、前と同じ料理を味わいながら、
少しだけ大人になった“今のふたり”の時間を過ごした。
窓の外では、街灯がひとつ、またひとつと灯っていき、
旅人たちをやさしく包み込んでいく――そんなアルトレールの夜。




