3.小さな観光日和と、もふもふの街歩き
■朝:少し遅めの目覚めと、穏やかな朝食
朝――
ヴィオランの街に、優しい朝日が差し込む頃。
ユウとフェルは、珍しくゆっくりとした朝を迎えていた。
「……今日は、休もうか」
ベッドの上で伸びをしながら、ユウがぽつりと呟く。
「ん……やすみ……?」
フェルは毛布の中でもふもふと顔を出し、まだ半分眠たげな声で返した。
「うん。旅も続いてたし、今日は観光でもしよう。せっかくだしな」
そんなユウの言葉に、フェルはこくんと頷くと、もふっとした尻尾がゆるく揺れた。
ふたりはゆったりと朝食をとり、身支度を済ませてから、街の広場へと向かった。
■午前:街の広場と市場の散歩
ヴィオランの広場は、ちょうど朝市が開かれていて、小さな露店や屋台がにぎやかに並んでいた。
花屋の香り、焼き菓子の甘い匂い、人々のざわめき――
「フェル、あれ見てみろよ。お前に似てないか?」
ユウが指差したのは、飴細工屋の犬型の飴。黒と銀を混ぜたような配色に、確かにどこかフェルを思わせる。
「……わたし、あんな丸っこくない」
と、フェルはぷいっと顔をそむけるけれど、尻尾がふりふりしているのは見逃せない。
小物屋では、フェルに似合いそうな小さな首飾りを見つけて、ユウはこっそりと購入した。
きっと、次の“少年フェル”の擬装に合わせて使えるはず――そんな思いを込めて。
■昼:人気のパン屋で軽めのランチ
お昼は、行列ができる人気の石窯パンの店へ。
ユウは焼きたてチーズパンを、フェルには“焼き肉パン”を。
「おいしい?」
「……ん。ちょっと、すきかも」
■午後:川辺のベンチで昼寝とひなたぼっこ
ふたりは街の端にある小さな川辺に移動し、ベンチに腰掛けてしばしの休息。
川のせせらぎと小鳥のさえずり。
ユウは地図を広げ、これから向かう“ルミエナ”の名を静かに指先でなぞった。
「“光と知識の街”か……。次は、少し緊張感のある場所になりそうだな」
隣では、フェルがうとうとしながらもふもふと丸くなっていた。
「フェルは、ああいう街、得意かな」
そんな独り言に、フェルはぴくりと耳を動かしただけで、返事はなかった。
■夕方:宿に戻る前に、ちょっとだけ買い物
夕方、ふたりは宿への帰り道、小さな文具屋に立ち寄る。
ユウは旅日記用の新しいノートを購入。
「また、書くの?」
「うん。今日のもふもふ観光日和も、ちゃんと残しておかないとな」
「……へんなこと、書かないでね」
「えっ、なんでバレてる?」
ユウの茶化しに、フェルがじろりと睨み、思わず苦笑い。
でも――こういうやりとりが、なによりも日常を感じさせてくれる。
■夜:今日一日をふたりで振り返って
夜。
部屋の灯りが消え、静かな時間。
ユウはベッドの上、旅日記を閉じて天井を見上げながら、ぽつりと呟いた。
「……こういう日が、もっとあってもいいよな」
その声に、布団の中のフェルが、小さな声で「……うん」と応えた。
もふもふの温もりと、今日のやさしい一日を胸に、ふたりは静かに眠りについた。
そして――次なる舞台は、ルミエナ。
新たな伝説の予感を胸に、ふたりの旅は続いていく。




