2.風の草原と、古井戸の音
朝、アルトレールの宿屋「風車亭」。
差し込む陽光に照らされながら、ユウとフェルは最後の朝食をとっていた。
「……パンもスープもおいしかったね。フェルも、ちゃんと食べた?」
「もふっ!」
ふたりは静かに荷物を整え、チェックアウトを済ませると、
のどかな街道を抜けて、次なる目的地――「ヴィオラン」へ向かって出発した。
■道中:古井戸の調査
アルトレールからヴィオランへの道すがら、
草原のはずれにぽつんと佇む、石造りの古井戸があった。
「ここか……不思議な音がするって噂の井戸」
風が草をなびかせる中、ユウは慎重に井戸の周囲を調査し始める。
フェルはあたりの気配を探るように、耳をピンと立てていた。
井戸の奥に、古びた金属板のようなものが引っかかっていた。
音の正体は、それが風に揺れて、井戸の壁とぶつかる微細な反響だったらしい。
「……このままじゃ、また誰かが驚くだけだし――ちょっと細工しようか」
ユウは即席で防振機構を組み込み、不要な反響音を抑える仕掛けを施した。
古びた井戸に、ほんの少しだけ“静けさ”が戻る。
「これで……大丈夫、かな。ね、フェル」
「もふっ」
■2泊3日の移動旅
井戸を後にして、草原を越えて、小高い丘をいくつか越え――
旅はゆっくり、でも着実に進んでいく。
途中、小雨に打たれて野営した夜。
小さな焚き火を囲みながら、フェルはもふんとユウの横に身を寄せていた。
「明日には、ヴィオランに入れるかな……フェル、風邪ひかないでよ?」
「もふ……(こくん)」
■到着:ルフェン公国 中都市
3日目の夕刻、ようやく街の灯が見えてきた。
ルフェン公国の象徴とも言える石造りの尖塔群――
それが中都市ヴィオランだった。
「着いた……なかなか立派な街だね」
フェルも足元でくるんと尻尾を揺らして、嬉しそうな様子。
■ギルドにて報告
ギルドでは、アルトレールからの依頼報告に対して
「丁寧な処理だった」と好意的な評価を受けた。
「“黒銀の従魔”か……あの噂、本当だったんだな」
「仮面じゃないけど、本物の職人技を持った冒険者、ってね」
静かに、しかし確実に、
ユウとフェルの存在が“広がり始めている”気配があった。
■夜:宿屋にて
「……ふぅ、今日は移動も長かったし、早めに休もうか」
ヴィオランの宿屋のベッドに倒れ込むように横たわるユウ。
その隣で、フェルもくるんと丸くなって寝息を立て始めていた。
旅路の先に、まだ見ぬ出会いが待っている。
でも今は――ただ、静かな夜の休息を。




