4.絆という名の契約
森の中。焚き火の灰が、細く煙を上げていた。
夜は明けきらず、空はまだ淡い紫をまとっている。
ユウとフェルは、焚き火のそばに肩を並べて座っていた。
言葉もなく、ただ――小さな距離感を保って。
■従魔契約の提案
「……なぁ、フェル」
ユウが少しだけ間を置いて、静かに切り出す。
「このまま別れるより……一緒に行かないか?」
「お前がよければ、“従魔契約”を結ぶのも、アリだと思ってる」
フェルは、びくりと小さく反応した。
「……じゅうま、けいやく……?」
「そう。強制じゃない。
でも、俺は“パートナー”として、お前を守りたい」
■迷うフェル
フェルは視線を落とし、小さな手をぎゅっと握りしめる。
「……つよいヒトは、みんな、つかうだけ……」
「わたしは……“つかわれる”の、もう……いや」
ユウは、はっきりと首を横に振った。
「違う。俺は“支配”しない。
契約は、信頼があって初めて成立するもんだ」
「従魔じゃなくても、お前の“生きたいように生きる”道を邪魔する気はないよ」
その言葉に、フェルはまた長く沈黙した。
けれど、やがて――
ゆっくりと、瞳をユウに向けた。
「……じゃあ……もし、わたしが……まちがっても」
「いっしょに、かんがえてくれる?」
「もちろん」
ユウは、迷いなく答えた。
「お前が間違ったら、一緒に考えるし、間違える前に止める。
……それが仲間ってもんだろ?」
■従魔契約
フェルは、静かに立ち上がった。
黒銀の髪が、朝の光にふわりと揺れる。
「……けいやく、する」
「ユウと……なら、いい」
ユウは、そっと片手を差し出す。
フェルも、小さな手でそれを取った。
魔力がゆっくりと融合する。
二人の間に、小さな光の輪が浮かび――
従魔契約、成立。
ユウのギルドカードに、“従魔:フェル”の文字が追加された。
同時に、フェルの中にも、
“心の奥で何かが温かく灯った”感覚が、確かに残った。
けれど、その人の姿は長くは続かず、
ほんの2時間足らずで、再び黒銀の“もふもふ”な魔獣へと戻っていった。
「……あ、戻っちゃったね」
「……も、もどる……しかたない……」
ユウは苦笑しながら、その頭をそっと撫でた。
■翌朝:ふたりで歩き出す
翌朝――
朝の光を浴びて、黒銀の毛並みを持つフェルがユウの隣に並ぶ。
大きめの旅用ローブの裾から、もふっとした尾がのぞいていた。
「……いく、セレヴァール」
「ああ、相棒。よろしくな」
“もふもふの相棒”と共に――ユウの旅が始まった。




