2.はじまりの牙と手
■初対峙
魔獣が跳んだ――
その動きは、まるで矢のように鋭く、無音。
ユウは横に跳ねてかわしながら、
魔力で作り出した小型の防護障壁を展開する。
「……動きも、攻撃の間合いも、読みにくい」
魔獣は、その黒銀の毛並みを風に揺らしながら、
何度も姿勢を変えて、ユウを翻弄する。
一撃ごとの重さ、反応の速さ――
その動きは、間違いなく“知性”を持っていた。
ユウは、創造魔法で即席の捕縛陣を構築し、
一瞬のスキを狙って“封じ”を狙う――
魔獣が踏み込んだ瞬間、その足元が爆ぜる。
「……そこだ!」
同時に展開していた解析魔法による“筋肉構造の読み取り”で、
動きのクセを先読みし、狙いすました一撃を放つ。
■勝利と重傷
ユウの魔力刃が、魔獣の肩口を深く切り裂いた。
「っ――!」
魔獣が低く唸り、跳ねるように後退する。
血が、地面にぽたりと落ちる。
片脚を庇うようにして、魔獣は身構えた。
それでもなお、睨むようにこちらを見る白銀の瞳。
ユウは、魔力の余波を消しながら、静かに呼吸を整えた。
「……勝負あり、だ」
■助けの手
ユウは構えを解き、ゆっくりと近づいた。
魔獣は動かない。
ただ、肩を上下させながら、鋭い視線だけは逸らさない。
「お前……強かった」
「でも、それ以上に――“孤独”だろう?」
ユウは腰のポーチから、簡易包帯と回復薬を取り出した。
「……動かないで。治すだけだから」
魔獣の肩に手を伸ばした瞬間、
「ガァッ……!」と小さく、低く、唸りが返ってくる。
でも――噛みついてはこなかった。
ユウはゆっくりと、傷口を洗い、回復薬を滴らせ、
布でしっかりと傷を巻いた。
「……これで、少しはマシになるはず」
■助けの手
治療を終えても、魔獣は何も言わない(鳴かない)。
ただ、白銀の瞳が、じっとユウを見つめている。
動こうとすれば、逃げる。
でも、こちらが動かなければ、じっとそこにいる。
「……警戒してるな。まぁ、当然か」
ユウは少し離れた倒木に腰掛けて、
一緒にいた空間に無理に入り込まないようにした。
風が吹く。葉が揺れる。
そして――
森に、静かな時間が戻ってきた。




