18.この街を背に、次の扉へ
ギルドカードの端、実績の進捗ゲージはもうほとんど満ちていた。
「……あと1件」
ユウは静かに立ち上がり、窓から街を見下ろした。
ここ“ミルゼット”で過ごした日々。
気づけば、もう三ヶ月以上が経っていた。
魔法の確認。特技の検証。
擬装、鍛治、ギルド活動。
地味な依頼の数々。
それらのすべてが、今の“自分”を作っている。
「……ここで十分、準備はできた」
「次は――“昇る”ための場所へ」
ユウが目指すのは、王国の首都:エリオン(Elion)。
ギルドの中央支部があり、昇進の手続きや評価も本格的に行われる都市。
「Dランク昇進は……あの街でやろう」
決意は、風のように静かで、でも確かなものだった。
■ギルドへの報告
翌日、ユウはギルドカウンターに立ち、担当の受付嬢へ告げた。
「すみません。次の拠点を“首都・エリオン”に移そうと思います」
「今までの実績データ、引き継ぎ申請だけお願いします」
受付嬢は少し驚いた表情をしたあと、やさしく微笑んだ。
「……ユウさんなら、どこに行っても大丈夫ですね」
「きっと、すぐ次のランクに手が届きます」
端末に手をかざし、魔導印でギルドデータの“引き継ぎ”を実行。
ミルゼット支部での評価・履歴はすべて、中央へ送られる。
■出発の朝
翌朝、まだ空が白み始めたころ。
ユウは宿の前に立ち、荷物を背負った。
お世話になった女将さんに一礼し、静かに街を後にする。
「……ありがとな、ミルゼット」
ふとつぶやく声は、小さいけれど確かだった。
ここで過ごした日々は、決して派手じゃなかった。
でも、ユウにとって“最初の礎”だった。
そして――
旅人は、新たな地平を目指して歩き出した。
目指すは、首都。
新たな挑戦が、そこに待っている。




