14.静かなる昇格
「ふぅ……これで、今日の分も完了」
ユウは、依頼書の“完了印”を確認して、小さくうなずいた。
今日の依頼は、荷馬車の補修とルート調査の簡易護衛。
特に問題もなく、落ち着いて進められた。
依頼主も満足そうに「また頼むよ」と言ってくれた。
夕方。冒険者ギルド、カウンター前。
ユウは、完了報告と報酬の受け取りのために、静かに列に並んでいた。
「あっ、ユウさん。今日もお疲れさまです!」
受付の女性が、少し笑顔を向けてくれる。
「報告内容、確認しました。問題なしですね……」
彼女は魔導端末に手をかざし、しばらく何かを確認するようにして――
不意に、目をぱちぱちと瞬かせた。
「……えっ、ユウさん?」
「あの、今、お時間ありますか?」
ユウは少し首をかしげてうなずいた。
「実はですね、昇格対象になっています」
「Fランクから、Eランクへ昇格の判定が可能なんです!」
(……やっぱり、きたか)
コツコツと積み重ねてきた依頼。
無駄なく、正確に。地味だけど丁寧にこなしてきた結果。
その蓄積が、ようやく評価に届いたのだ。
「昇格には“累積実績の確認”と、“簡易面談”があります」
「少しだけ、お時間いただいてもよろしいですか?」
■ギルド裏手・面談室にて
小さな個室。魔導端末がひとつ、応対するのは中年の男性職員。
「ユウ=アルフェン、ね」
「報告精度、実績、依頼完了率、クレームゼロ……ふむ」
「一言で言えば、“非常に真面目な新人”だな」
「……ありがとうございます」
「もう少し自己主張があってもいいが……まぁ、Eランクとして十分やっていけるだろう」
書類に印が押され、魔導印章が光を放つ。
「――これで、正式にEランク昇進だ」
「おめでとう」
ギルドカードの端に、新しい“E”のランクマークが追加される。
それを見つめながら、ユウは静かに小さく息を吐いた。
(……ここからが、本当の“冒険者らしさ”かもしれないな)
いきなり目立つことはない。
でも、確実に“ひとつ上”の立場へと進んだ感触があった。
ギルドを出た帰り道、空は少しだけ赤く染まりはじめていた。
「よし。まずは、今日の晩ごはんを考えようか」
そのつぶやきには、ほんの少し――誇らしさがにじんでいた。




