ラウンド4:富と機会の格差~誰のための豊かさか?~
あすか:「皆様、おかえりなさいませ。『失われた星々のサロン』での語らい、いかがでしたでしょうか?」(和やかな表情から、再び進行役の顔に戻る)「さて、議論を再開いたします。ラウンド4のテーマは『富と機会の格差~誰のための豊かさか?~』です」
あすか:「ラウンド1や先ほどの休憩でも触れられましたが、石丸様は現代日本において、首都・東京と地方との間に、富や様々な機会の面で大きな格差が存在すると指摘されています。具体的に、どのような問題があるのか、お聞かせいただけますか?」
石丸:「はい」(頷き、落ち着いた口調で語り始める)「まず経済的な面では、平均所得や求人の数・質において、東京と地方の間には歴然とした差があります。地方では、若者が希望する仕事に就けず、やむなく東京へ流出するという状況が続いています。これは単に経済の問題に留まりません」
石丸:「教育においても、質の高い教育機関や多様な学びの選択肢は、やはり東京に集中しています。地方の子供たちが、生まれた場所によって受けられる教育の機会が制限されてしまう。医療についても同様です。最新の設備や専門医は首都圏に偏在し、地方では十分な医療を受けられない『医療格差』も深刻化しています。文化施設や、社会の動きを知るための情報量にも大きな隔たりがある。これらは全て、人が豊かに生きる上での『機会の格差』と言えます」
あすか:「所得、雇用、教育、医療、情報…生活のあらゆる面で格差が生じている、と」
石丸:「その通りです。結果として、地方は活力を失い、ますます人が減っていく。この負のスパイラルは、社会の公平性を著しく損なうだけでなく、日本全体の持続可能性をも脅かしているのです。この現状を、私たちは放置して良いのでしょうか?」(問いかけるように、他の対談者を見渡す)
始皇帝:「ふん、何を甘いことを申すか」(石丸氏の訴えを鼻で笑う)「富や機会に差があるのは当然のことよ。首都は帝国の心臓であり、最も栄え、最も強くあらねばならぬ。地方の民が、首都と同じ暮らしを望むこと自体がおこがましいとは思わぬか?むしろ、首都の威光と豊かさを目の当たりにして、地方の民は帝国の偉大さを知り、より一層忠誠を誓うであろう。格差とは、秩序の現れでもあるのだ」
あすか:「格差は秩序の現れ…ですか。トクヴィル様、この始皇帝陛下のご意見、どのようにお聞きになりますか?」
トクヴィル:「陛下のお考えは、ある種の社会においては合理性を持つのかもしれません」(冷静に受け止めつつ、反論する)「しかし、わたくしが理想とする民主主義社会においては、そのような考えは受け入れられません。民主主義の根幹には、全ての市民に、その能力を最大限に発揮するための『機会の平等』が保障されるべきだ、という理念があるからです」
トクヴィル:「石丸殿が指摘されたような、生まれた場所によって人生の選択肢が大きく制限される社会は、決して公正とは言えません。富と機会の極端な偏在は、人々の間に嫉妬や不満、対立を生み出し、社会全体の安定を脅かす危険性も孕んでいます。国全体の調和と長期的な繁栄のためには、富と機会をより広く、公平に行き渡らせる努力が必要不可欠だと考えます」
あすか:「機会の平等、ですか…。リンカーン大統領は、ご自身も決して裕福ではない家庭から大統領にまでなられました。機会の重要性については、どのようにお考えでしたか?」
リンカーン:「(自身の過去を思い返すように、少し間を置いて)…ええ。私が育った時代の開拓地では、誰もが貧しかった。しかし、そこには努力次第で未来を切り開けるという希望…機会があったように思います。我が国アメリカは、常に『機会の国』であろうとしてきました。西部に新たな土地を求め、自らの手で生活を築こうとした人々…彼らに土地を与え、挑戦を後押しする(ホームステッド法のような)試みもありました」
リンカーン:「しかし、現実は理想通りにはいきません。富を持つ者と持たざる者の格差は常に存在し、そして何よりも…肌の色によって機会そのものが奪われるという、奴隷制という巨大な不平等が存在した。私は、その不平等を終わらせるために戦いましたが、格差の問題そのものの根深さを痛感しました」
リンカーン:「ですから、格差は容易になくせるものではないでしょう。しかし、だからと言って放置して良いものでもない。国家は、人々がその境遇に関わらず、可能性を追求できるような『機会』を提供するために、可能な限りの努力をすべきです。それが、『人民の、人民による、人民のための政治』の一つの責務だと信じています」
始皇帝:「人民に機会を与えれば、分をわきまえぬ野心家が現れ、国を乱すだけのことよ」
石丸:「しかし、リンカーン大統領。現代日本では、その『機会』そのものが地方から失われつつあるのです。努力する以前の段階で、選択肢が狭められている。これを是正するために、国家…あるいは首都である東京が、もっと積極的な役割を果たすべきではないでしょうか?」
あすか:「格差は当然か、克服すべき課題か。そして、国家や首都が果たすべき役割とは…。富と機会をめぐる議論も、皆様の国家観の違いを浮き彫りにしました。いよいよ次は最終ラウンド。これまでの議論を踏まえ、未来に向けた提言を伺います」(最終ラウンドへの期待感を込めて締めくくる)