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龍鳳のエース

レンジのダンクの余韻が残る中、黄色ビブス組はニヤニヤしながら守備に戻る。

西田が両手を突き上げる。

「マジで決まったー!」

斎藤が軽く親指を立てる。

「ナイス、佐藤くん」

佐藤は顔を赤くしながら頬を掻く。

「え、えっと……瞬に言われた通りに投げただけで……」

山田が目を輝かせて小さく拳を握る。

「すげえ……このまま勝てるかも」

瞬がバシッと手を叩いて空気を引き締める。

「いいぞ! でもまだ浮かれるな! 守備に戻れ!」

(あれは序章だ。ここからが本当の化け物たちだ……)

ハーフコートを越えて、森啓太がゆったりとボールを運んでくる。ポニーテールが揺れる様子は、まるで散歩でもしているかのようだ。瞬に視線を投げて、口角を上げる。

「監督の言う通りだな。悪いけど、そう簡単にはいかせねえよ」

西田の背中に冷や汗が伝う。

(いきなり森先輩かよ……瞬、俺を殺す気か……!)

森はドリブルを低く構え、静かにフロアを見渡す。

マンツーマン。ヘルプも来ない。

完璧だ。

西田が必死に構える。

来る——

鋭いクロスオーバー。

森の肩が沈み、ボールが脚の間を抜けて——もういない。

西田の横を風が吹き抜ける。

「ヘルプ!!」

山田が自分のマークを捨てて飛び出す。

「俺が止める!」

森はスピードを落とし、肩を揺らす——ヘジテーション。

山田が一瞬完全に食いつく。

森(退屈そうに)

(完璧なスイッチだな。……まあ、どうでもいいけど)

山田の横をスルリと抜け、優雅に浮いてガラスに優しくキス。

レイアップ。

2-2 同点

山田が悔しそうに床を叩く。

「くそっ! シュート行くと思ったのに……!」

斎藤が駆け寄って肩をポンと叩く。

「気にすんな海斗。相手は森だ。龍鳳のエースなんだから当然だ」

佐藤が目を丸くする。

(エース……森先輩が? 先輩たちが強すぎて、今まで誰がエースかなんて考えたこともなかった……)

瞬が頬の内側を噛む。

(やばい。二人がかりでもあっさりやられた……俺、なんで監督なんてやってんだ……)

中村が横目で森を見て、小さく笑みを漏らす。

「相変わらず派手だな」

森がポニーテールを軽く払う。

「一回クロスしただけだよ、キャプテン」

「文句はねえ。どうやってでもリングに入れりゃいい」

「うす。任せとけ」

黄色組がインバウンド。

小学生以来のポイントガード、山田が両手でボールを抱えて運んでくる。体育館中の視線が突き刺さり、肩がガチガチだ。

(マジで俺がポイントとか……プレッシャーやばい。プレスなくてよかった……)

中村は逆サイドのウイングで腕を組んで見守る。

(さあ瞬。お前のオフェンス、見せてくれよ)

黄色組はパスを回して隙を探る。赤組はまるで練習のように完璧にローテーションし、隙を見せない。

やがてボールがトップの山田に戻る。

レンジがローブロックから上がってきて、石橋を背負った完璧なスクリーンを張る。

マークの工藤が反射的に出てボールマンにプレッシャーをかける。

石橋がレンジの壁に完全に封じられて叫ぶ。

「工藤、ボケっとすんな!」

工藤がニヤリ。

「わかってるって。ただ出てくればいいんだろ?」

山田がスクリーンを使って左へドライブ。

工藤が胸を張ってレーンを塞ぐ。

逆サイドから中村の声が鋭く飛ぶ。

「工藤——後ろ!」

工藤が振り返る。

レンジはもういない。

スクリーンにコミットした瞬間、レンジはスリップしてゴール下へ一直線。

遅い。

山田が完璧な高弾道のロブを上げる——中学時代に何百回と打ったトスの高さ。

レンジにとって、それはロブじゃない。

トスだ。

身体に刻まれたタイミングが勝手に動く。

最高到達点で片手で掴み、ネットがバサッと鳴るほど豪快に叩き込む。

4-2 再び黄色リード

体育館が前より大きく沸く。

工藤が揺れるネットを見上げて呆然。

(……あれバスケじゃねえ。完全にスパイクだ……)

中村が小さく吹き出す。

(スリップスクリーンからのバレースパイク……さすが瞬か。面白いことになってきた)

葉山が赤面する工藤に声をかける。

「先輩、レンジに変えてもらいます?」

工藤が汗を拭って唸る。

「一瞬油断しただけだ。次は絶対ねえ」

葉山がクスッと笑う。

「さっきも同じこと言ってましたよ?」

「うるせえ。今すぐ取り返す」

赤組がインバウンド。ボールはまた森へ。

レンジが静かに、でもはっきりと声を上げる。

「スイッチ。俺が森先輩につく」

体育館が一瞬静まり返る。赤組でさえ驚いた顔をする。

瞬が一瞬迷って、すぐに頷く。

(どっちにしろ毒選びだ……)

「よし、やろう」

西田が死刑囚が恩赦もらったみたいに息を吐く。

工藤が今度は西田に乗りかかり、殺気立った目で睨む。

「なんでホッとした顔してんだ? 俺の方が楽だと思ってんのか?」

西田が手をブンブン振る。

「ち、違いますってば!」

森がボールを一回回して、レンジと目を合わせる。

いつもの遊び笑みが消えていた。

その気概は買うよ、レンジ。

でも最近、ちょっと調子に乗りすぎだ。

バスケは、そう甘くねえってこと——教えてやるよ。

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