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火の中へ

龍鳳高校体育館

放課後の部活が始まり、体育館はバスケのボールが響き合う活気で満たされた。磨かれたコートに、選手たちのスニーカーがキュッキュッと鳴り、夕方の陽射しが天窓から差し込む。インターハイ予選を控え、龍鳳高校バスケ部はコートをぐるぐる走る準備運動に汗を流す。初めて、1年生が本格的な練習に参加を許され、興奮と緊張が交錯する。

佐藤陸が拳をグッと握り、長身が弾むように走る。「やっとだ!やっと先輩たちと一緒に練習できる!」

西田健太は曇ったメガネをクイッと直し、緊張を隠してニヤッ。「マジで。もう何週間も寝てる時にドリブルの音が聞こえてくるんだから。」

中島優斗はクスクス笑い、がっしりした体が揺れる。「俺、ドリブル練習は平気だったよ、正直。でも先輩たちと一緒?ボコボコにされるだけだろ、ハハ。」

田中瞬はボールをドリブルしながら走り、中島に軽く睨む。「おい、そう言うなよ。今、先輩たちとやれるんだから喜べって。信じろ、絶対上手くなるから。」

3年生の石橋春樹が近くで聞き、ペースを落とす。スパイクヘアが汗で濡れ、しっかり頷く。「その通り。いきなり上手いなんて誰も期待してねえ。それが練習の意味だ。俺たちもみんなそこから始めたんだ。」

白根レンジは瞬の横で静かに走り、ボールをギュッと握る。鋭い黒目がコートに釘付け。(すぐ上手くなれるなんて分かってる。でもバレーを捨ててバスケを選んだ。遊びで来たんじゃねえ。早く上達しなきゃ。)

体育館の反対側では、バレー部主将の高田純がカーテンに寄りかかり、レンジの流れるような走りを見る。(バスケ部で馴染んできたな、レンジ。俺たちのチームにいてほしかったけど、あそこがお前の飛躍の場だ。天性のアスリートだよ、レンジ。一歩ずつ進め。)

中村陸の鋭い手拍子が二回、パンッと響く。チームはコートの中央に集まり、ストレッチのために円を作る。1年生は緊張でモゾモゾしながら、先輩たちの動きを真似る。

ストレッチ中、2年生の山田海斗と斎藤春人がひそひそ話す。声に不安が滲む。

「なあ、斎藤」と山田が周りをチラッと見ながら囁く。「鬼道高校、ほんとに大丈夫か?なんかヤバい予感しかしねえ。」

斎藤はハムストリングを伸ばし、顔が渋い。「お前だけじゃねえよ。正直、極円高校より鬼道高校の方が気になる。」

山田は頷き、がっしりした体がピクッ。「だろ、あいつらほぼ犯罪者じゃん。誰かケガしても驚かねえよ。」

斎藤はため息、先輩たちをチラ見。「最善を願うしかねえ。俺としては、コートに立たないのが一番だ。」

山田はニヤッと半笑い。「それ、ちょっと自分勝手じゃね?…でも、俺も同じこと思ってる。」

近くでストレッチしていた森啓太が聞き、自信たっぷりにニヤリ。緑の毛先のポニーテールが揺れる。「ハハ、リラックスしろよ、二人とも。ルール通りにプレーさせりゃいい。バスケには選手を守るルールがあるんだ。コートでいきなり殴りかかってくるわけねえだろ。」

山田は眉を上げ。「あいつらが退場を気にすると思うか?」

森は肩をすくめ、動じず。「確かに。でも全員退場したら、俺らの不戦勝じゃね?ハハ。」

斎藤は眉をひそめ、声低く。「冗談じゃねえよ、森さん。ケガよりヤバいことになるかもしれねえ。」

森の笑顔が少し柔らかくなり、でも口調はどっしり。「まあ、なんとかなるさ。周り見ろよ。誰かビビってる奴いるか?バスケやるんだよ、ケンカじゃねえ。ここは俺らのホームだ。」

山田と斎藤はチームを見渡す。中村の集中したストレッチ、工藤の落ち着いた存在感、レンジの鋭い視線。疑念が薄れ、あごが上がり、目の前に迫る挑戦に立ち向かう決意がキラッと光る。

龍鳳高校周辺

その頃、龍鳳高校近くの通りを、紺のブレザーを着た5人の生徒が歩く。鬼道高校のグループだ。黒崎悠真が先頭で鋭い目で辺りを見回す。

狩野翔太が腰に手を当て、通りをキョロキョロ。「おい、ここで合ってるよな?」

坂口鷹也がスマホのナビアプリを確認し、うめく。「ああ、ナビだとそう。なんで俺がこんなことやってんだよ?」

黒崎は手をポケットに入れ、鋭い笑み。「俺がそうしろって言ったからだ。俺の命令に文句あんのか?」

でかい松岡剛が手を挙げ、場を落ち着ける。「落ち着けよ、悠真。ケンカしに来たんじゃねえ。坂口のおかげで合ってるみたいだな。」

坂口は頭をかき、ニヤッ。「どうってことねえよ。」

天野龍司が通りを指差し、目がキラリ。「なあ、悠真、ゲームセンターあんぞ。ちょっと寄ってみね?」

黒崎の笑みが広がる。「悪くねえな。軽くウォームアップするか。」

ゲームセンターの中、バスケのアーケードマシンがブーンと唸り、ライトがチカチカ。6年生の小柄な少年が、集中してシュートを打つ。独り言。「うっ、今日フォームがイマイチだな。もう一回。」

コインを入れると、マシンがガチャンと動き出す。(今日、フォームがなんかおかしい。基本に集中しなきゃ。)ボールをゆっくり持ち上げ、フープに目を固定。シュートを放つ瞬間、感覚がバッチリ。(これだ!この感覚、忘れねえぞ。)だが、狩野が突然飛び出し、ボールをバシッと叩く。

「ハッ!ブロック!」狩野がニヤニヤ叫ぶ。

少年はよろめき、睨む。「何だよ!?やっとコツ掴んできたのに!」

狩野は笑い、腕を組む。「おいおい、ガキ。本物のバスケやったことあんのか?ディフェンダー相手で練習しないと。」

少年の顔が赤くなる。「ここ、バスケコートじゃねえよ!邪魔すんな!」

黒崎がのんびり近づき、マシンのボールを拾う。片手をポケットに入れ、軽くシュート。ボールがスッとフープに吸い込まれる。少年の目がパッと開く。(すげえ!)

「そんな時間かけて撃つからブロックされるんだよ」と黒崎、ニヤリ。

少年はムッとして反論。「基本を磨いてたんだ。こんなとこでブロックされるなんて思わねえよ。」

黒崎は鼻で笑う。「基本?撃ち方なんかどうでもいい。大事なのは決めることだ。」

少年は一瞬止まり、頭で考える。(そいつ、間違ってる…でも、完全には間違ってねえ。あの片手シュート、基本無視なのに決まった。)

黒崎が松岡に。「よ、剛。このガキのポケットチェックしろ。俺が見本見せてやる。」

松岡が少年に迫り、でかくそびえる。「コイン出せ、ガキ。面倒くせえことすんな。」

「嫌だ!」少年がポケットをギュッと押さえて叫ぶ。

松岡の目が細まる。「後悔すんなよ。」

松岡は少年を軽く持ち上げ、ポケットをガサッ。100円玉がポロッと落ちる。「ちっ、100円だけかよ?」

黒崎は肩をすくめ。「ウォームアップには十分だ。」

「返せ!それ、俺の最後の金だ!」少年が這って立ち上がり叫ぶ。

松岡は無視し、少年を押しのける。少年はドサッと床に倒れる。松岡がコインを黒崎に渡す瞬間、少年は黒崎の名札をチラ見。黒崎悠真。

少年の目が大きく開き、ピンとくる。「待て…お前、KYか!?」

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