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スターの波とつまずき

龍鳳高校、1年2組

白根レンジが教室に足を踏み入れると、騒がしい空気が爆発した。週末の白陽との練習試合の熱狂がまだ冷めていなかった。学生服が少し乱れたレンジに、視線が集まり、囁きが飛び交い、叫び声が響く。

「来たぞ!」一人の生徒が叫び、レンジを指さす。

ガリガリの同級生、田村がニヤニヤで近づく。「よ、白根、練習試合のダンク、マジすげえな!俺、田村。バスケはよくわかんねえけど、応援してるぜ。」

レンジが頭を掻き、照れ笑い。「サンキュ。レンジでいいよ。」

もう一人の生徒、北野が群れを押し分け、スマホを手に叫ぶ。「よ、レンジ、北野だ、覚えてるか?SNS見たか?お前、トレンド入ってるぞ!」

レンジが目をパチクリ。「いや、SNSあんま見ねえんだ。興味ねえし。トレンドって何?」

北野がニヤリ、スマホをスクロール。「見てみろよ。まだトップ10入ってるはず。」

レンジがため息をつき、スマホを出す。「わかった、わかった、見るよ…そういや、瞬はまだか?」

1年2組の外、廊下

一方、田中瞬は廊下で他クラスの女子に囲まれ、身動きが取れない。ジャージが引っ張られ、彼女たちのクスクス笑いと囁きに閉じ込められる。

「お願い!」一人の女子が手を合わせ、懇願。「白根さんを紹介して!」

瞬が髪をかき、うんざり。「だからさ、レンジに話したいなら直接行けよ!」

別の女子が頬を膨らませ、赤くなる。「でも、恥ずかしいじゃん!」

「じゃあなんで俺にこうやって絡むのは恥ずかしくねえんだよ?」瞬がイラつき、返す。「何が違うんだ?」

三人目の女子がクスクス、ストレートに。「だって、白根さんみたいなカッコいい奴じゃないし、瞬ってちょっとチビじゃん。」

瞬の目がピクつく。「はいはい、俺がチビでカッコよくねえのはわかった。でも、こうやって押してくると余計にやりたくねえんだよ。頼むから放してくれ。」

女子たちが不満げに。「チッ、つまんね…」ブツブツ言いながら去る。

瞬が壁にもたれ、ため息。(くそ、レンジの人気、急にすげえな。毎日こんなんかよ、めんどくせえ。)

ブツブツ呟く中、後ろから柔らかい声。「あの、白根さんのチームメイト、ですよね?」

瞬が振り返り、イラッ。(またかよ!?) 「いい加減、直接話せよ!俺を巻き込むな!」

女子がひるむ。「あ、ごめんなさい、迷惑でした。」

落ち着いた声に瞬がハッとし、振り返る—同級生の市川結衣、ヘーゼルの目が優しい。(うわ、ヤベ、市川さんじゃね!?) 慌てて取り繕う。「待って、市川さんだろ?さっきはゴメン、ファンガールかと思った。」

結衣が首を傾げる。「ファンガール?」

瞬が首を掻く、気まずそうに。「長い話。まあ、レンジにファンクラブできたって感じ。」

結衣が小さく笑う。「なるほど。あのダンクの後じゃ不思議じゃないね。」

瞬の顎が落ちる。「え、試合見たの!?」

「配信でね」と結衣がカバンを直す。「じゃ、教室行くね。また。」

瞬の顔が落ち、目に見えない涙。(俺のこと、認識してねえ…) 「あの、同じクラスなんだけど。田中だよ。」

結衣が立ち止まり、目をパチクリ。「あ、田中?ごめん、名前覚えるの苦手で。」

瞬がため息。(ずっとそこにいるんだけどな…) 「いいよ。俺も教室行くし、一緒に行こうぜ。」

1年2組

教室に戻ると、レンジがスマホをスクロール、目を丸くする。「なんだこれ?メッセージめっちゃ来てる!全部返せねえよ!」

北野が覗き込み、ニヤリ。「返さなくていいよ。スターの特権だろ。」

レンジが眉をひそめ、アプリをスクロール。「そういう考え、わかんねえな。」中学のバレー部のグループチャットが大荒れ:『おい、レンジ、いつバスケ始めたんだ!?』『バレーやめるのか?』混乱と応援の嵐に頭がクラクラ。

結衣と瞬が入ると、男子の目が結衣に輝き—瞬が一緒なのを見て睨む。

「おい、田中、なんで市川さんと一緒なんだよ?」一人が吠える。

男子が頷き、声を揃える。「そうだ、そうだ!」

もう一人が続ける。「市川さんは神聖不可侵だ。指一本でも触れたら許さねえ!」

瞬の目がピクつく。(コイツら、完全に誤解してんな。) 「一緒に来ただけだよ、落ち着け!」

一人が鼻で笑う。「ウソだろ!ストーカーしたな!」

瞬がうんざり。(バカの相手すんの無駄だ。) 「勝手にしろよ。」

レンジが結衣を見つけ、手を振る。「おはよう、結衣!この前はありがとな。」

男子が凍る。「結衣!?」と叫ぶ。「結衣って呼んだ!?」

瞬がニヤリ。(お、レンジ、やっちゃったな。)

背の高い高橋がレンジに迫る。「ちょっと説明してくれよ、白根。」

男子が畳み掛ける。「そうだ、そうだ!市川さんと付き合ってんの?」

レンジが慌て、目をパチクリ。「付き合う?いや、全然そんなんじゃねえよ。ちょっとした約束しただけ。」

高橋が目を細める。「約束?見合いみたいなもんか!?」

結衣がため息、堪忍袋の緒が切れそう。(このバカども、まともに考えられねえな。) 「なんでもねえよ。バスケシューズ貸しただけで、返すって約束しただけ。それだけ。」

男子が一瞬落ち着くが、ガリガリの木村がまた火をつける。「でも、なんで名前で呼ぶんだよ?」

結衣が一瞬止まる。(ああ、確かに。) 「別に気にしてねえよ。友達みんな名前で呼ぶだろ、アイツ。」

木村が目を輝かせる。「じゃ、俺らも—」

「却下」と結衣がピシャリ。

木村が絶望の叫び、倒れ込む。教室の女子数人がクスクス笑い、木村のオーバーな反応に囁き合う。「アイツ、めっちゃ滑ったね!」教室が笑いに包まれ、朝のチャイムが鳴り、先生が入ってきて騒ぎを鎮める。

龍鳳高校体育館、午後の練習

体育館はスニーカーのキーキー音で響き、午後の練習が始まる。レンジが早く着き、教室の騒ぎにまだ動揺しつつ、森啓太がすでにシュート練習中、ポニーテールが弾む。

森がニヤリ、レンジを見つける。「よ、レンジ、だいぶ有名になってきたな。」

レンジが首を掻く、照れ臭そうに。「わかんねえよ。ダンクしただけだろ。ゴミ箱に放り込むのと同じって、前も言ったじゃん。」

森がクスクス、ボールを回す。「そんな考えだから、まだまだ未熟なんだよ。」

レンジが肩をすくめる。「俺、全然うまくねえと思う。てか、何を練習すりゃいいか、ホント迷ってんだ。」

森が頷き、真剣に。「経験だ。それが大事。ドリブル、シュートは一人で練習できる。でも、試合のほとんどのことはコートで学ぶ。ほら、ちょっと見せてやる。1対1でディフェンスしろ。」

レンジが頷き、気合い。「よし、やろうぜ。」

森がニヤリ、低くドリブル。「俺、動くからな。知ってる限りで止めろよ。」

レンジがスタンスを広げ、森の手をロック。森がレンジを測り、右に突進。レンジがブロックに飛び出すが、足を着く前に森がクロスオーバーで左へ。レンジがよろけ、勢いでドスンと尻もち。(何!?なんでそこにいる!?)

森が手を差し出し、止まる。「わかったか?」

レンジがハアハア、首を振る。「全然わかんねえ。」

森がニヤリ。「要は、俺がその動きするって知ってりゃ—もしくは、するかもって思ってりゃ—引っかからなかったってこと。」

レンジが眉をひそめる。「でも、どうやって知るんだよ?」

「経験だ」と森がボールを叩く。「試合を重ねると、パターンが見えてくる。間違える時もあるけど、別の動きの可能性があるって知ってると、本能で反応して、こうやってコケねえよ。」

レンジの目が輝く。「森先輩、もう一回お願い!」

森が笑い、手を振る。「落ち着け、新人。100回やっても同じだ。お前のディフェンススタンス、めっちゃダメだ。経験は大事だが、基本は背骨みたいなもん。それがなきゃ、コートに立てもしねえ。」ボールをレンジに投げ、笑顔が柔らかくなる。「基本から始めろ。そしたら全部ついてくる。」

レンジがボールを受け、決意が燃える。(基本、か。背骨を作らなきゃ。) 体育館にチームの声が響き始め、レンジは肩を正し、コートに自分の居場所を刻む準備をした。

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