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遠藤VSレンジ、パート2

龍鳳高校体育館

体育館は熱気と興奮で脈打っていた。汗と期待で空気が重く、フリップ式のスコアボードは冷たく光る:白陽48、龍鳳41、第4クォーター残り2分強。観客の歓声が波のように押し寄せ、コートの激しいリズムとシンクロする心臓の鼓動のようだった。龍鳳の3年生—中村、葉山、森、工藤—は静かな闘志をまとって動く。紺と赤の「RYUHO」ユニフォームが蛍光灯の下で輝く。唯一残った1年生、白根レンジはペイントエリアを守り、黒い瞳に決意と不安が混じる。(これ、ただの試合じゃない) 彼は胸を上下させながら思う。(先輩たちが背負ってる何かデカいもの。俺もその一部になってる)

ベンチでは瞬が身を乗り出し、ヘーゼル色の瞳が焦りで大きく見開く。「時間がほとんど残ってねえよ!」 彼は声を詰まらせて呟く。「ここからはディフェンスが全てだ」

西田はメガネが熱気で曇り、緊張しながら調整する。「3年生が出てると、佐々木のミスマッチを白陽が突けねえよな」

中島は肩を落とし、声に罪悪感が滲む。「俺がちゃんとやってれば… 全部俺のせいだ」

瞬が鋭く、でも温かく遮る。「誰も責めてねえ、中島。チームだろ。俺だってシュート外したし、ディフェンスは穴だらけだった」

西田が頷き、かすかな笑みが浮かぶ。「ああ、俺もミスしまくったし」

瞬の視線が固まり、信念を込めて声が大きくなる。「ミスの話はもういい。終わったことは終わった。今はコートにいる奴らを応援して、信じようぜ」 彼は立ち上がり、拳を握り、叫ぶ。「ディフェンス! ディフェンス!」 西田と中島が素早く視線を交わし、熱を帯びた声で加わる。龍鳳の生徒たちがその火花を掴み、体育館を揺らす雷鳴のような応援に膨れ上がる。「ディ! フェンス! ディ! フェンス!」

コート上、森のポニーテールが揺れ、笑みを浮かべる。「すげえ盛り上がってんな! みんなの期待、裏切れねえぜ!」

葉山の緑の瞳が鋭く光り、いつもの軽い笑みが消える。「じゃあ、勝つしかねえな」

工藤の巨体が緊張し、低い声が響く。「終わらせようぜ」

中村の灰色の瞳がチームを見渡し、冷静で威圧的。「調子に乗るな。まず仕事を終わらせろ」

レンジは観客のエネルギーが体を突き抜けるのを感じる。バレーボールでは味わったことのない、ゾクゾクする衝動だ。(これ、違う) 彼は思う。(まるで何かが俺を前に押して、強くしてるみたいだ)

白陽がボールを持ち、白と黒の「HAKUYO」ユニフォームが機械的な精度でコートを切り裂く。中村の声が騒音を突き破る、刃のように鋭く。「白根、遠藤はお前のマークだ。フルコートで張りつけ。息もさせんな」

レンジの脈が跳ねるが、しっかり頷く。「分かった!」 3年生たちはニヤリと笑い、中村の意図を読み取る。(試されてる) レンジは顎を固くして思う。(絶対に失敗できねえ)

白陽の1年生、背番号10番の遠藤がニヤリと笑う、自信が滲み出る。「離れてマークしねえの? 大間違いだな、ルーキー」

ベンチで西田が眉を寄せる。「なんでレンジが遠藤をそんな高い位置で守るんだ? ペイントにいるべきじゃね?」

中島も身を乗り出し、困惑する。「ああ、こんなんじゃ遠藤にやられちまうぞ」

瞬の目が細まり、状況を理解する。「中村先輩、こんな時でもレンジに成長のチャンスをくれてるんだ」 彼は眉をひそめ、呟く。(でも、なんで今リスク取るんだ? 時間ねえのに)

コート向こうの白陽のハドルは嘲りでざわつく。背番号4番でキャプテンの荒井が遠藤にボールを投げ、軽蔑を込める。「遠藤、舐められてるぞ。1年生に1対1で守らせる? 恥かかすなよ」

遠藤のニヤリが広がり、レンジを睨む。「心配すんな。このガキ、潰してバレーボールかなんかやってたゴミに送り返してやる」

背番号7番の後藤が暗く笑う。「ああ、場違いだって教えてやれ」

背番号5番の佐々木が落ち着いて頷く。「俺たちがフォローする。お前は自分をやれ」

背番号6番の小林が狡猾にニヤリ。「お前がミスっても、俺が片付けるよ」

遠藤の自信が膨らみ、ボールを強く握る。レンジは190cmの体で遠藤に密着し、影のように追いかける。体育館は期待でざわめき、全ての目がこのマッチアップに注がれる。「ディ! フェンス!」の応援がさらに大きくなり、電気が走るような空気を煽る。

遠藤は低くドリブルし、挑発的な声で囁く。「よお、また会ったな、ルーキー。お前のキャプテン、こんな大事な時に初心者を信用して頭おかしくなったんじゃね?」

レンジは挑発を無視するが、心はざわつく。(信用? いや、試されてるんだ。中村先輩を裏切れねえ) 遠藤がジャブステップをフェイクし、爆発的なスピードでレンジを抜く。レンジの純粋な運動能力でなんとか追いすがり、長いストライドで遠藤のペースに食らいつく。遠藤がニヤリ。「スピードは悪くねえな。でもバスケは走るだけじゃねえぞ」

遠藤のドリブルがトリッキーに変わり、クロスオーバーとヒジテーションが目まぐるしい。レンジの足元が乱れ、経験不足が露呈し、追いかけるのに必死になる。遠藤はその隙を突き、スピンムーブで一気に抜き去る。レンジは立て直そうと慌てるが、遠藤はもう空中に。バムッ!と雷鳴のような音でボールをリングに叩き込み、一瞬リムにぶら下がり、レンジを睨みつける—まるで「お前じゃ俺を止められねえ」と言うように。

体育館が一瞬静まり返り、呆然とする。レンジは固まり、心が揺れる。(何だ、今の!?) 森がレンジを現実に引き戻し、ボールを掴んで中村にレーザーパスを送る。遠藤のダンクを祝う白陽の選手たちは油断していた。荒井が「戻れ!」と叫ぶが遅い。中村がクイックスリーを沈め、ネットがキレに鳴る。スウィッシュ。スコアボードが白陽50、龍鳳44に変わる。

森がレンジの脇を走り抜け、落ち着いた声で言う。「切り替えろ、レンジ。絶対できるって。オフェンスは俺らに任せろよ」

レンジは固く頷くが、失敗の痛みが残る。(俺、みんなの足引っ張ってる)

白陽は遠藤にボールを集め、レンジの未熟さを突く。遠藤は次々と得点—フローター、レイアップ、もう一つのダンク—と、龍鳳の逆転の希望に次々と突き刺さる。3年生たちは激しく反撃し、葉山と中村のスムーズなジャンパー、工藤のペイント支配、森のオフェンスの華やかさで点差が大きく開くのを防ぐ。だが時計は無情で、残り1分を切る。白陽56、龍鳳52。

レンジの胸は苛立ちで燃える。(10番を止めなきゃ。でも、どうやって? ディフェンスのやり方すらわかんねえ) 彼の目は答えを探して彷徨う。ベンチで瞬がレンジの視線を捉え、ディフェンスのスタンスをジェスチャー—膝を曲げ、手を動かし、重心を低く。レンジは眉を寄せる。(ディフェンスのスタンス? 何だよ、それ!?) 瞬が強調して足を指す。レンジの頭にカチッと閃きが走る。(待て… 俺、全部間違えてた)

これまで遠藤の動きを追いかけ、バレーボールの本能で反応していた。だがバスケのディフェンスはジャンプやスピードだけじゃない—ポジション、バランス、予測だ。(攻めすぎてたんだ) 彼は遠藤のフェイクやスピンを思い出し、考える。(追いかけるんじゃなく、動きを読まなきゃ)

ボールが白陽に戻り、遠藤がニヤリと笑う、またレンジを辱めるチャンスを嗅ぎつける。「もう一発食らう準備できてんのか、ルーキー?」

レンジは膝を深く曲げ、手を広げ、瞬が示したスタンスを真似る。黒い瞳が遠藤の腰に固定され、ボールではなく重心の動きを探す。(落ち着け。しっかり読めよ) 「ディ! フェンス!」の応援が再び湧き上がり、レンジの集中を後押しする。

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