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最後の抵抗

レンジの頭ん中、混乱が渦巻いてる!ピック・アンド・ロール、どう止めるんだ?

龍鳳高校体育館

体育館は緊張感に満ちていた。第四クォーターの残り時間は3分を切り、フリップ式のスコアボードは45対38と、白陽がリードを保っていた。龍鳳のメンバーは、新入生の瞬、中島、佐藤、そしてレンジ、そして3年生の石橋で構成され、最後のディフェンスに備えていた。その重圧が肩にのしかかっていた。サイドラインでは、中村、葉山、森、工藤がジャージを整え、コートに目を固定しながら出場準備を進めていた。観客席からの歓声が波のように押し寄せ、期待と緊張が入り混じった空気が響き合っていた。龍鳳にとって、このポゼッションは決定的だった――もし白陽が再び得点すれば、試合は手の届かないところに行ってしまうかもしれない。

瞬はポジションに駆け寄り、ヘーゼル色の目で白陽の動きを鋭く見つめた。「ここを抑えるぞ!」彼は落ち着いた、しかし切迫した声で叫び、新入生たちを鼓舞した。瞬自身も1年生としてプレッシャーを感じていたが、それを決意に変え、中島と佐藤を奮い立たせようとした。石橋は汗で濡れたトゲトゲの髪を揺らし、若い選手たちを見やって、厳しくも支えるような表情を浮かべた。「目を上げろ、1年生たち。奴らが来るぞ。」中島と佐藤は短く頷き合い、集中した表情を見せたが、中島の手は緊張で震え、佐藤の顎は固く締まっていた。レンジはペイントエリアを守り、白陽の選手たちを黒い瞳で睨みつけた。「かかってこい、白陽」と彼は小さく呟き、低い姿勢で準備を整え、まるで挑戦するかのように構えた。

龍鳳のベンチでは、上級生たちが決意と焦りに満ちたエネルギーを放っていた。工藤が拳を鳴らし、広い肩を張って仲間たちに声をかけた。「あと2分で逆転するぞ。準備しろよ――ミスは許さん。」彼の声はぶっきらぼうだったが、口元には遊び心のある笑みが浮かんでおり、雰囲気を和らげようとしていた。葉山は腕を伸ばしながら、からかうような笑みを浮かべて言い返した。「工藤先輩、シュートが下手なのは先輩だけですよ、覚えてます?」工藤の笑みが消え、偽りのしかめっ面に変わった。「黙れ。俺はペイントを支配するんだ。」森はいつものように冷静な声で二人のやり取りを遮った。鋭い目がコートに固定されていた。「ふざけるのはやめなよ、二人とも。このポゼッションが勝負を決める。白陽は得点を狙ってる。」中村は少し離れて立ち、試合の展開を見つめていた。表情は読み取れなかった。「準備しろ」と彼は静かに言い、その声には他の者を黙らせる重みがあった。「もしここで白陽がリードを広げたら、かなり厳しくなるぞ。」彼の視線はレンジに向かい、かすかな考えが頭をよぎった。(白根、次はどうする?また何か驚くようなプレーができるか?)

白陽はボールを入れる準備を進め、緊張感が漂っていた。荒井はボールを手に深呼吸し、頭の中が忙しく動いていた。(ためらってる暇はない。ここでリードを広げるんだ。)彼は仲間たちに向き合い、落ち着いた、しかし力強い声で指示を出した。「みんな、あのプレイで行くぞ。」遠藤の目が輝き、獰猛な笑みが広がった。「もちろん、キャプテン、俺はやる気満々だ。」後藤はしかし、少し躊躇した表情で眉をひそめた。「あとで使うつもりじゃなかったっけ?」佐々木もそばで頷き、慎重な口調で言った。「うん、今見せるのはもったいない気がする。」小林は戦略家らしく、狡猾な笑みを浮かべて反論した。「他のチームは遅かれ早かれ気づくさ。今のうちに完璧にしておこう――予選はすぐそこだ。」荒井は頷き、決断を下した。プレイが決まった。

白陽がボールをコートに進める中、荒井は遠藤と目を合わせ、鋭い合図を送った。「今だ!」遠藤は荒井に向かって全力で走り、大きな体でスクリーンをセットした。動きは素早く、的確だった。瞬の目が見開き、プレイを察知した。「ピック・アンド・ロールだ!」彼は切迫した声で叫んだ。レンジはペイントエリアに立ち、既視感に襲われた。(これ、見たことある……工藤先輩と葉山先輩が練習でやってた。でも、どうやって止めるんだ?)

ベンチでは、中村の表情が引き締まり、分析的な頭がフル回転していた。(遠藤とのピック・アンド・ロールか?これはカバーするのが難しい。)森は隣で身を乗り出し、ポニーテールがわずかに揺れた。(レンジ、次はどうする?)と心の中で呟いた。葉山と工藤は視線を交わし、興味を引かれた――彼ら自身もよくツーマンゲームを展開していた。白陽のピック・アンド・ロールに注目が集まった。葉山は片眉を上げ、かすかな笑みを浮かべ、工藤の鋭い視線はコートに釘付けだった。

コート上では、石橋が声を張り上げ、指示を出した。「1年生、ちゃんとローテーションする準備しろ!気を抜くな!」新入生たちは頷いたが、不安が表情に滲み出ていた――中島の手は緊張で震え、佐藤の顎はさらに固く締まった。瞬の頭は急速に動いていた。(こんな時にピック・アンド・ロールか?これをずっと隠してたのか?)レンジはまだプレイに戸惑い、自信が揺らいでいた。(ローテーション?ここで何をすればいいんだ?)

遠藤のスクリーンに石橋が不意を突かれ、大きな体にぶつかり、荒井がフリーになった。レンジの直感が働き、先輩たちとの練習でのツーマンゲームの記憶が蘇った。(4番にオープンシュートは打たせられない。)彼は石橋のカバーをしようと荒井に素早く詰め寄った。しかしその瞬間、遠藤がバスケットに向かってロールし、猛獣のようにレーンを切り裂いた。瞬の声が鋭く響いた。「間を埋めろ!」レンジの心臓が沈んだ。(くそっ!)佐藤はローテーションのためにポジションに駆け寄り、細い体で遠藤をカバーしようと限界まで走った。しかし、荒井の目が計算高い笑みで輝いた。(引っかかったな。)外科医のような正確さで、彼はコーナーにいる完全にフリーの佐々木にスキップパスを送った。パスはディフェンスを切り裂く完璧な弧を描いた。佐々木はボールを捕まえ、優雅な動きでシュートを放った。石橋は危険を遅れて察知し、急いでカバーに向かったが、距離が遠すぎて有効にディフェンスできなかった。ボールがネットを通過し、スコアボードが48対38に変わった。体育館は一瞬静まり返り、龍鳳の選手たちは凍りついたように立ち尽くし、信じられないといった表情で口を開けた。苦労して縮めた点差が再び二桁に戻り、試合時間は残り2分強だった。

龍鳳のサイドラインでは、葉山が工藤に近寄り、緑の瞳を鋭く光らせながらも軽い口調で言った。「あのピック・アンド・ロールからスキップパス、うまいな。荒井が完全にローテーションを誘った――高レベルだ。」工藤は腕を組み、がっしりした体を緊張させ、ぶっきらぼうながら感心した声で答えた。「ああ、レンジが前に出た瞬間、遠藤のロールで全員が引き寄せられて、佐々木がフリーでシュートを打てた。スキップパスがローテーションのミスをきっちり突いたな。1年生たちは厳しい状況に追い込まれたよ。」龍鳳の上級生たちは動揺せず、サイドラインでしっかりと立っていた。中村の顎が締まり、頭の中でプレイを分析していた。(荒井のパス、遠藤のペイントでの脅威、そして佐々木のシュート精度……危険なトリオだ。)葉山は拳を握り、闘志が燃え上がり、工藤の表情は硬くなり、先ほどの軽い雰囲気は消えていた。森はポニーテールを整え、鋭い目を細めて呟いた。「これが白陽の本当の武器だ。手強い戦いになるな。」

ストリートコート

ストリートコートでは、晃貴、拓海、大輝、浩二がタブレットでライブ配信を見続けていた。正午の陽射しがひび割れたコンクリートに鋭い影を落としていた。元白陽の生徒たちである彼らは、母校を応援しており、レンジ、瞬、森にストリートコートで負けたことへの遺恨からその反応は熱を帯びていた。晃貴は拳を突き上げ、興奮した声で叫んだ。「よし!あのピック・アンド・ロール、完璧だ――白陽が勝つぞ!」拓海は満足げな笑みを浮かべて頷いた。「荒井のあいつ、よくやってるな。めっちゃ成長したな。」大輝はボールを指で回し、得意げな口調で言った。「うぇい!これが龍鳳の奴らにこのコートでやられたことへの仕返しだ。」浩二はフェンスにもたれ、苦々しい笑いを漏らした。「奴ら、きっちり終わらせてくれよ。あのポニーテールの野郎にはもううんざりだ!」

龍鳳高校体育館

体育館に戻り、龍鳳はタイムアウトをコールし、レフェリーの笛が空気を切り裂いた。新入生たちは頭を下げ、罪悪感に満ちた表情でベンチに向かった。中島の声が震えた。「ミスった…また点を取られた。」佐藤も肩を落とし、頷いた。「止められなかった…。」だが、中村が落ち着いた、しかし確固たる声で彼らの謝罪を遮った。「誰も悪くない。白陽の本物のオフェンスだ――本物だよ。よく耐えた。」工藤はぶっきらぼうさを抑え、真剣な表情で前に出た。がっしりした体が新入生たちを見下ろしていた。「お前たちは役割を果たした。次は俺たちの番だ。」葉山は闘志をむき出しにし、決意に満ちた笑みを浮かべた。「ピック・アンド・ロールができるのは奴らだけじゃないぞ。」森は小さな笑みを浮かべ、興奮を抑えきれなかった。「俺、出るのが待ちきれないよ。」彼は新入生たちを見て、それからレンジに視線を移した。「誰が残る?」中村の視線がレンジに落ち着き、穏やかだが励ますような口調で言った。「白根。お前が残る。自分の直感を信じろ――考えすぎるな。」レンジは静かに頷き、黒い瞳に決意が燃え、静かな覚悟が宿った。

タイムアウトが終わり、笛が鳴り、龍鳳の主力メンバー――中村、葉山、森、工藤、そしてレンジ――が試合に入った。体育館の空気が変わり、上級生たちがコートに立つと観客が沸いた。荒井はハーフコートに立ち、龍鳳の新しいラインナップを見下ろした。表情には好奇心と反抗心が混在していた。(ようやく来たか。2分じゃ足りないぜ、どんなに強くても。)

中村がボールを葉山に入れ、葉山は落ち着いた勢いでハーフコートラインを越えた。後藤にマークされた森は、狡猾な笑みを浮かべて白陽を挑発した。「もうちょっと近くでマークしたほうがいいかもな。」後藤は目を瞬かせ、困惑が顔に浮かんだ。「何言ってんだ?」葉山は考える時間を与えなかった。彼はハーフコートを少し越えたところで足を止め、滑らかなシュートモーションに入った。遠藤の目が見開き、信じられないという表情が浮かんだ。「バカか?必死すぎだろ!」葉山の笑みが深まり、自信は揺らがなかった。ボールが放たれ、遠くからの完璧な軌道を描いた。龍鳳の主力メンバーはボールがリングに届く前にすでにディフェンスに戻っていた。工藤は走りながらレンジに笑いかけた。「なあ、レンジ、どこ行くんだ?ディフェンスに戻れよ!」レンジは不意を突かれ、一瞬だけ戸惑いが目に浮かんだが、すぐに振り返って走り戻った。ボールがネットを通過し、スコアボードが48対41に変わった。体育館は一瞬静まり返り、白陽チーム全員が呆然とした。直後、観客が爆発的な歓声で沸き上がり、ライブ配信のチャットにはメッセージが殺到した――「ハーフコートボム!」「こいつヤバい!」「龍鳳生きてる!」

工藤はレンジの肩を叩き、笑みを広げた。「言ったろ。」レンジの頭の中で、練習中に葉山が言った言葉が新たな鮮明さで響いた。(バスケットボールでは、コート全体が重要なんだ。)ベンチの新入生たちは拳を突き上げ、興奮と驚嘆の声を上げた。瞬の目は信じられないという輝きを放ち、叫んだ。「信じられない!本当にカリーみたいだ!」中島はまだ息を整えながら呟いた。「これは…すごい…。」佐藤は普段の冷静さを破り、珍しく笑みを浮かべ、頷いた。「まだ終わってないぞ。」

観客席はエネルギーに満ち、龍鳳の主力が主導権を握るにつれて勢いが変わった。2階の手すりでは、観客の一人が友人に振り返り、分析的な口調で言った。「あのハーフコートスリー――葉山、動揺すらしなかった。自分の射程距離を分かってて、チームがそのシュートを信頼してる。クラッチな自信だな。」友人も頷き、付け加えた。「時間も無駄にしてない。白陽のリード、安全じゃないぞ。」

残り2分強、試合は新たな緊張感を帯びていた。龍鳳の主力が入り、戦いはまだ終わっていなかった。

龍鳳高校近くのスポーツショップ

スポーツショップでは、唯がカウンターに立ち、シューズボックスの山に立てかけた携帯でライブ配信を見ていた。常連客が数分前に帰り、店内は蛍光灯の微かな音と配信の音だけが響く静寂に包まれていた。葉山のハーフコートスリーがネットを通過し、スコアが48対41になった瞬間、唯の目が見開き、驚きの声が漏れた。彼女はカウンターの端を握り、衝撃と希望が入り混じった鼓動が速まった。(もう少しだよ、諦めないで!)彼女の視線は、レンジのアディスターがあった棚の空いた場所に向かい、彼がコートで戦っている姿を想像しながら、誇らしげな笑みが口元に浮かんだ。

葉山のハーフコートスリー、決まった!逆転なるか?X: @RyuhoBasketballで語ろうぜ!

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