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必死の策

レンジと一年生、最後の試練だ! 先輩たちが来るまで耐えられるか?

龍鳳高校体育館

体育館が熱気でうねり、第四クォーターの残り時間が4分を切った。フリップ式のスコアボードが43対36と表示され、白陽がリードを保っていたが、龍鳳の一年生たちは執念で食らいついていた。白陽のベンチで、コーチの目が細まり、頭がフル回転していた。(この一年生たち、見た目よりタフだ……だが、龍鳳の主力が入る前に勢いを奪わないと。)白陽の戦略は明確だった。一年生の未熟さを突き、リードを広げ、中村たち主力が入る前に余裕のある点差を確保することだ。

白陽はオフェンスの戦略を継続し、前クォーターで佐々木のハイポスト攻撃に龍鳳の2-3ゾーンが崩れたことを見逃さなかった。ゾーンが機能せず、龍鳳はマンツーマンディフェンスに切り替え、できるだけ時間を稼ごうとした。新井が鋭い声で指示を出した。「テンポを上げろ! 今、点差を広げるんだ!」佐々木が185cmの巨体でポストに構え、龍鳳で二番目に背が高い佐藤(177cm)を圧倒した。佐藤が歯を食いしばり、細身の体で必死に耐えた。(強すぎる……またやらせちゃダメだ。)だが、佐々木は容赦なく、体重をかけてリムに迫り、肘が佐藤の胸に食い込んだ。

「佐藤、ポストで完全にやられてる!」二階の手すりで観戦する生徒が友人に囁き、スマホで撮影を続けた。「白陽のミスマッチ戦略だ。相手のセンターが大きすぎて、佐藤じゃ一対一で止められないよ。」友人が頷き、解説した。「そう、ポストアップだと身長とパワーがものを言う。龍鳳のあいつ、一人じゃ無理だ。」

シュンがトップ・オブ・ザ・キーから状況を読み、佐々木にダブルチームに向かって走った。「佐藤、俺がカバーする!」と叫び、ヘーゼル色の瞳が佐々木を捉えた。(また得点されたら終わりだ……パスをさせなきゃ。)佐々木がニヤリと笑い、シュンが来る前からダブルチームを予感していた。(読めてるぞ。)ノールックパスを放ち、小林がレーンを切り裂くようにカットイン。小林がフリーで、ペイントを守るレンジの上から高く弧を描くシュートを放った。

シュンが小林のシュートを見て目を見開いた。「くそ、小林をフリーにしちまった!」と小さく呟き、苛立ちが募った。(レーンに近づいておくべきだった……)レンジの黒い瞳が見開いた。(そのシュート……めっちゃ高い!)ブロックに跳んだが、ボールの弧が速すぎて届かなかった。ボールがネットを揺らし、スコアが45対36に。レンジが着地し、拳を握った。(反応が遅れた……)佐藤がポストでの奮闘から息を整えながら呟いた。「レンジ、あのストップが必要だった……」その声には失望と焦りが混じり、レンジの守備への依存が感じられた。観客席から、ある生徒が友人に説明した。「あれはフローターだ――白陽のガード、賢いプレーだ。レンジみたいな長身ディフェンダーに対して有効だ。高い弧とソフトタッチでブロックを避けるんだよ。」

新井が即座に手を叩き、叫んだ。「フルコートプレス! 今だ!」白陽の選手たちが龍鳳のインバウンドプレーを容赦ない圧力で襲った。ボールをインバウンドする中島の手が震え、額に汗が滲んだ。(ミスっちゃダメだ……でも、どこもかしこも囲まれてる。)頭が真っ白になり、白陽のプレッシャーに圧倒された。去年の県大会の記憶が蘇る――中島は中学のスタメンポイントガードだった。準決勝進出がかかった試合の最終局面で、プレッシャーに耐えきれず、決定的なシュートをエアボール。ブザーと共にチームの夢が散った。仲間たちの失望した目が今も忘れられない。(またダメだ……同じ失敗はできない。)

レンジが中島の動揺を感じ、サイドラインに向かって走りながら叫んだ。「おい! ここだ!」その声で中島が我に返った。考える間もなくレンジにロブパスを放ったが、ボールが強すぎた。ボールがスコアボード近くのアウトオブバウンズに向かって飛んだ。中島の心臓が沈んだ。「やばい、強く投げすぎた!」と声が震え、パニックが滲んだ。レンジが体を投げ出し、バレーのディグのような動きでボールを弾き、ボールをコート内に残した。だが、レンジは床に叩きつけられ、スコアボードの台座に激しく滑り込んだ。観客が一斉に息を呑み、驚嘆と心配の声が響いた。二階のバルコニーで観戦する生徒たちが目を丸くした。「え、ちょっと待って、今の、なんだったんだ? あんな風にダイブして弾いたぞ?」「うん、バスケのプレーじゃないな……どこでそんなこと覚えたんだ? めっちゃすごいな!」と興奮気味に囁き合った。

石橋がウィングから叫んだ。「ナイスセーブ、レンジ!」その声には安堵と励ましが混じり、プレーの勢いを保ちながらコートを駆け上がる準備をした。

「レンジ!」シュンが心配そうに叫び、ハーフコート近くで転がるボールに向かって走った。小林が稲妻のような速さで先行し、自信に満ちた目が光った。(これは俺のボールだ。)だが、レンジのハッスルに奮起したシュンがさらに加速した。(レンジがあんなにやってる……俺が負けるわけにはいかねえ!)シュンがダイブし、指先でボールをわずかに弾き、小林の動きを乱した。小林が躓き、スティールを確保できず、苛立ちを爆発させた。「ちっ、めっちゃ惜しい!」と拳を掌に叩きつけ、バランスを取り戻した。シュンが床に倒れたまま呟いた。「掴むべきだった……危なすぎる。」自己批判がチームを引っ張る決意を燃やし、次のプレーに集中する力を与えた。

石橋がエネルギーを感じ、ボールを拾い上げた。「くそっ、お前ら……俺をこんなに本気にさせやがって!」と叫び、珍しく笑顔が浮かんだ。(先輩として、お前らに負けてられないな。)無人のコートをドリブルでリムに向かった。後藤が追いかけ、叫んだ。「させねえぞ!」石橋がリムに近づき、レイアップを狙ったが、背筋が凍った。(何か来る……)遠藤が猛スピードで突進してきた。石橋が本能的にスピードを落とし、待つことを選んだ。遠藤が嘲笑した。「どうした、トゲ頭? 止まっちゃったのか?」石橋は無視し、冷静さを保ち、コートを見渡した。(まだだ……セットアップしないと。)石橋がチームに呼びかけた。「あと1ポゼッションと1ストップだ! ここに全てをかけろ!」

レンジが立ち上がり、肩を押さえながら顔をしかめたが、黒い瞳が決意で燃えた。(大丈夫だ……まだやれる。)一年生たちが気を引き締め、目に決意が宿った――中島以外は。彼の視線はまだ揺れていた。(また固まっちゃダメだ……今じゃない。)

白陽のプレッシャーが緩まなかった。新井が中島の動揺を見抜き、指示を出した。「ボールをダブルチームしろ! あいつはもうダメだ――マークしなくていい!」白陽が石橋を包囲し、中島がコーナーでフリーになった。石橋が選択肢なく中島にパスを放った。中島が震える手でボールを受け取った。遠藤がニヤリと笑い、近づいて挑発した。「またエアボールでも打つ気か? それともターンオーバーか?」

中島の心臓が激しく鼓動し、プレッシャーが押し潰した。(ダメだ……またミスっちゃう。)シュンが仲間を見抜き、叫んだ。「気にすんな、中島! 大丈夫だ。ボールを持て、ショットクロックが切れる前に打て――外してもいい。レンジがいる。信じよう。」シュンの言葉が雑音を切り裂き、中島を現実に戻した。(レンジを信じる……よし、できる。)頭の中で呟いた。(最後の瞬間まで待って打つ。)

ショットクロックが3秒に迫った。中島がシュートモーションに入り、リムをしっかりと見据えた。まるでフリースローのように丁寧に狙い、呼吸が落ち着いた。白陽がリバウンドの位置を取り、遠藤がレンジをボックスアウト。ボールが中島の手を離れ、リムから大きく外れ、遠くに跳ね返った。中島の肩が落ち、声が震えた。「また外した……」自己嫌悪が滲んだ。だが、シュンが手を叩き、叫んだ。「ナイスショット、中島! 打てただけでいいぞ!」その励ましが中島の気持ちを支え、チームの結束を示した。観客席の生徒が呟いた。「賢いプレーだな。こんなプレッシャーの中で、シュートを打つだけでいい。時間を稼いで、オフェンスリバウンドのチャンスを作るんだ。」

レンジが遠藤にボックスアウトされながら、ボールの軌道を追い、運動神経が働いた。ボールの行方を鋭く見極め、ボックスアウトを離れ、ボールが落ちる方向へ一直線に走った。ボールが遠くに跳ね、レンジが宙でボールを弾き、石橋に向かって転がした。体育館が再び歓声で爆発し、白陽の選手たちが動揺した。新井が小さく呟いた。「くそ、どこにでもいるな!」遠藤の苛立ちが爆発し、唸った。「あの新人が、ムカつく!」

白陽の焦りが佐藤をゴール近くでフリーにした。小林がミスに気づくのが遅れ、叫んだ。「やばい、マーク漏れてる!」しかし手遅れ――白陽のディフェンスがボールを追いかける焦りで崩壊していた。新井が拳を握り、苛立ちを抑えた声で言った。「バラバラだ……立て直せ!」石橋が冷静にパスを出し、佐藤がリムのすぐ近くでボールを受け取り、迷わずバンクショットを決めた。スコアが45対38に。体育館が再び爆発し、観客の歓声が響き渡った。シュンが笑みを抑えきれず、ヘーゼル色の瞳が輝いた。(このチーム、最高だ。)石橋の言う「あと1ポゼッション」が決まり、点差を縮めて貴重な時間を稼いだ。

残り3分を切り、白陽が素早くボールをインバウンドし、流れを取り戻そうと急いだ。新井が自らボールを持ち、ドリブルでコートを進みながら指示を出した。「広がれ! 行くぞ!」その声は鋭かったが、どこか焦りが感じられた――龍鳳の一年生たちに動揺させられていた。

龍鳳高校近くのスポーツショップ

スポーツショップで、市川結衣がカウンターに立ち、スマホで生配信を見ていた。常連の年配客が孫の用具を買いに来て、結衣の肩越しに画面を覗いた。「いい試合だね」と温かい声で言った。結衣が頷き、画面に目を奪われた。「みんな、めっちゃ頑張ってて……目が離せません。」(レンジ……応援してるよ。)客が笑い、「俺の高校時代を思い出すよ。この情熱、最高だね。」と語った。結衣が柔らかく微笑み、チームとの絆が深まった。

ストリートコート

ストリートコートで、コウキ、タクミ、ダイキ、コージがタブレットの周りに集まり、表情が険しかった。コウキが身を乗り出し、拳を握った。「この一年生たち、ムカつく……こんなに持つはずねえだろ。」タクミがポニーテールを直し、分析的に呟いた。「11番……プレッシャーを克服し始めてる。このままなら白陽、危ないぞ。」ダイキがボールをコンクリートに叩きつけ、プライドが傷ついた。「白陽、負けるなよ――龍鳳にまた負けるなんて俺、嫌だ。」コージがフェンスに寄りかかり、皮肉な笑みを浮かべた。「この調子で龍鳳が押し続けたら、白陽、ヤバいことになるな。」

一年生たちの粘り、すごかったな! 次はどうなる? X: @RyuhoBasketballで語ろうぜ!

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