白陽の宣言
レンジの心、ドクドク鳴ってるぜ!このコート、熱すぎる開幕だ!
龍鳳体育館、龍鳳高校
体育館は熱気と緊張でざわめいていた。汗と気迫が空気に漂い、蛍光灯の下で磨かれた木の床が光っていた。何年もの練習で擦り傷だらけだ。白陽との練習試合がまもなく始まる。観客は少ないが、活気に満ちていた。高田純が壁にもたれ、鋭い目で試合を見守り、陸上部の生徒たちがサイドラインで寝そべって囁き合い、クラスメイトたちが2階の手すりから覗き込み、スマホを構えていた。龍鳳の紺色のユニフォーム、赤いラインと「RYUHO」の文字が目立ち、ウォームアップで動き回っていた。白陽の白いユニフォーム、黒いストライプが「HAKUYO」を切り裂くように走り、静かな威圧感を放っていた。
だが、190センチのバスケ新入生、白根レンジ(#15)はどこにもいなかった。
キャプテンの中村陸(#4)が手を叩き、灰色の目が鋭く光った。「集中しろ! 白陽は遊びに来たんじゃないぞ。」彼はチームを見渡した。工藤の巨体、森の揺れるポニーテール、葉山の気楽な笑み、石橋のトゲトゲした髪。だが、そこで止まった。「白根はどこだ?」
沈黙。工藤大知(#5)が肩をすくめ、低い声で言った。「来てねえ。」森啓太(#7)がボールを指で回し、呟いた。「どっかで考えすぎてんじゃね?」葉山翔吾(#8)が笑いながら後ろに寄りかかった。「なんだよ、バレーに戻ったとか?」田中瞬(#14)、ヘーゼルの目が大きく、ウォームアップで乱れた髪を揺らし、つま先で弾んだ。
「誰か白根の番号持ってるか?」中村がキツい声で聞いた。
瞬が手を挙げ、すでにスマホを手にしていた。「お、レンジの番号なら俺が!」彼は「白根レンジ(怪物)」までスクロールした。チームは息を止め、彼が電話をかけるのを見守った。
白根家
レンジのスマホが机の上で震え、画面に「カリーバカ」と表示された。部屋は静かだった。ベッドはきちんと整えられ、バレーボールの雑誌が龍鳳のジャージのそばで開いたままだった。レンジはいない。スマホは再び震えたが、誰も応答せず、陽光が空気中の埃を照らした。
龍鳳体育館
瞬がスマホを下げ、顎を固くした。「キャプテン、レンジ出ねえよ。」
中村の目が細まったが、動じなかった。「なら、そいつなしで始める。」コーチの池田、白髪がぐしゃぐしゃで、だぶだぶのトラックスーツを着て、肩を叩いた。「中村、お前が采配しろ。」
中村は頷き、声に力がこもった。「1年生、スタメンだ。石橋、お前も一緒。」
1年生たちは凍りついた。瞬が「は!?」と声を漏らし、目が飛び出した。西田健太(#12)、メガネが曇り、ジャージを握り潰した。「え、俺たち? スタメン?」佐藤陸(#13)、長身で物静か、素早く瞬きした。「白陽相手に?」中島優斗(#11)、細身で、呟いた。「マジで頭おかしい…」石橋春樹(#6)が手を叩き、大きく笑った。「行くぞ、新人ども! 根性見せろ!」
1年生たちは互いに視線を交わした。驚き、緊張、そして僅かな闘志。中村の睨みつけで文句は封じられた。コートの向こうでは、白陽の5人が準備万端だった。荒井直也(#4、180センチ、キャプテン)、佐々木悠斗(#5、185センチ)、小林颯(#6、170センチ)、後藤健司(#7、175センチ、ガード)、そして遠藤陸矢(#10、190センチ)。白いユニフォームが輝き、荒井の視線は冷たく、遠藤のニヤつきは危険だった。
両チームがコートの中央に整列した。中村が一歩進み、軽く頭を下げた。「よろしくお願いします。」荒井が同じく、鋭い声で応じた。「よろしく。」チームも続いた。瞬の声は大きく、西田は震え、遠藤は自信満々に。この儀式が戦いの幕開けを固めた。
山田海斗と斎藤春人が審判として登場し、シンプルなTシャツと短パン姿だった。山田、がっしりした体で、コートに立ち、笛をぶら下げた。「ちゃんとやれよ!」斎藤、細身で、フリップ式のスコアボードを操作し、詳細な記録用のノートを脇に置いた。両チームがセンターサークルに集まり、緊張が張り詰めた。遠藤がティップオフで西田の上にそびえ、190センチ対179センチ。西田はメガネを直し、喉を鳴らした。遠藤の目が、獲物を狙うように光った。
体育館が静まり返った。山田がボールを上げた。
龍鳳高校近くのスポーツショップ
蛍光灯のブーンという音に混じって、店のベルがチリンと鳴った。棚にはギアがぎっしり。野球のバット、剣道の竹刀、バスケットシューズが高く積まれていた。ニカパルスやアディスターといったブランドが並んでいた。カウンターの後ろで、白髪の店員が目を細め、独り言を呟いた。(あいつ、ずっとここにいるな。買う気あんのか? 確か、最初に来た時、バレーボールやってるって言ってたな。)
バスケットコーナーで、レンジが肩を落とし、黒い目で値札を睨んでいた。フーディとトラックパンツは、光沢のある棚に照らされて、めっちゃ浮いてた。すべてのシューズをチェックし、指で値札をなぞり、顎を固くした。(バスシューってこんな高いのか?)財布には7,000円しか入っていない。足りない。レンジは小さく悪態をつき、ポケットを叩いた。(スマホ忘れた。母さんにiPayで金送ってもらえたのに。)
時計は11:10を指していた。(試合始まってる。)心臓がドクドク鳴った。(家に帰って試合のほとんどの時間を逃すか? それとも靴なしで現れて、事情を説明して試合に出ないか?)アディスターのペア、10,000円、一番安いものを手に取ったが、迷った。(これ、絶対無理だ。)
ベルがチリンと鳴った。肩までの黒髪が完璧な肌を縁取る少女が入ってきた。白いTシャツとジーンズはシンプルだが目を引いた。レンジを見つけ、立ち止まった。「白根さん?」
レンジは不意を突かれ、瞬きした。「え、はい。」
「何か探してる?」彼女は軽く、だが興味深く尋ねた。
レンジはぎこちなく頷いた。顔は見たことあるけど、名前が思い出せない。「う…うん。」
彼女はニヤリと笑い、からかった。「え、覚えててくれると嬉しいんだけど? 市川結衣、1-2組。」
レンジの顔が熱くなった。「あ、うわ。ごめん、市川。なんか…授業中、ぼーっとしてて。」
結衣は小さく笑った。「いいよ。学校始まったばっかだし。いつも夢見てる背の高いやつ、でしょ?」
店員がぶっきらぼうに叫んだ。「結衣、そイツ知り合いか?」
結衣は頷き、棚にもたれた。「うん、パパ。クラスメイト。」彼女はニヤついた。「静かなやつ。」
レンジの目が見開いた。(パパ?)結衣の父である店員は唸った。「もう1時間近くいるぞ。平気だっつったけど、詰まってんだろ。」
結衣はレンジの手にあるアディスターに目をやり、驚いた。「バスシュー? 学校でバレーボールやってるって言ってなかった?」
レンジは首を掻き、ためらった。「実は…」彼は声を低くし、バスケへの転向とシューズのドタバタを説明し始めた。
結衣は耳を傾け、表情が好奇心から理解へと変わり、頷いた。「なるほど…で、試合は何時?」
レンジは時計を見て、顔をしかめた。「今やってる。」
結衣の目が見開いた。「今!? シューズ決めた?」
レンジは10,000円のアディスター、サイズ30センチを掲げた。「これ。一番安い奴。」
結衣は箱をひったくった。「オッケー、今日払わなくていいよ。」彼女はカウンターに振り返った。「パパ! 学校まで送ってって! 私が店番するから。」
店員はため息をつき、鍵を掴んだ。(なんでこうなるんだ? バスケットシューズ、今度はタクシーか?)「わかった。」
レンジは首を振った。「いや、好いって—」
結衣が遮った、きっぱり。「白根さん、チームをガッカリさせたい? 待ってるんだよ。早く!」
レンジは口を閉じた。(彼女の言う通りだ。)「ありがと、」と呟いた。
車の中で、店員がチラリと見た。「で、なんでバスケ? バレーのやつだろ。」
レンジは窓の外を眺め、龍鳳体育館が頭に浮かんだ。「色々変わったんだ。模索してる。」
店員は笑った。「波乱万丈だな。頑張れよ、ガキ。けど、支払いは忘れんな。」
レンジは頷いた。「うん、絶対。助かった、ありがと。」
龍鳳体育館、ティップオフ
山田がボールを投げ上げた。遠藤陸矢(#10)が跳び、190センチの体が西田の179センチを圧倒した。ボールは荒井(#4)に渡り、コートを駆け抜けた。龍鳳の1年生たちは慌てて対応したが、遅れた。
瞬が叫んだ。「レーンを塞げ!」西田、メガネがずれて、喘いだ。「速すぎる!」佐藤と中島が急いだが、荒井はリムに到達。レイアップを放った—強く、意図的だ。ボールはバックボードに激しく当たり、高く跳ねた。
1年生たちは息をついた。中島が呟いた。「外した? そんな大したことねえな。」佐藤が頷き、拳を緩めた。「いけるぞ。」
瞬の声が割れた。「おい、気をつけろ! わざとだぞ!」
遅かった。遠藤はすでに動いていた、フリースローラインから突進。靴がキーキーと鳴り、空中でボールを追った。リムに叩きつけるような*ドン!*で、フレームが揺れた。体育館が爆発した。陸上部が息を呑み、高田の顎が固まり、クラスメイトがスマホを落としそうになった。
龍鳳の先輩たちは冷静だった。中村の灰色の目が細まった。(あいつ、跳べるな。)工藤の腕は組み、顔は無表情。(新人にしては悪くねえ。)森はボールを回し、唇が微かに動いた。(すげえ見せつけだ。)葉山は後ろに寄り、薄く笑った。(派手だな。持続できるか?)彼らの落ち着きは、頭の中の火花を隠していた。遠藤の運動能力は本物だった。
遠藤は着地し、ニヤつき、龍鳳のベンチを睨んだ。荒井が前に出て、声は氷のよう。「それがお前らが俺たちを舐めた結果だ。この青臭い1年生で勝てると思ってんのか?」
遠藤が指をさし、鋭い笑み。「遠藤陸矢。この名前、忘れんな、蛆虫ども。」
瞬は拳を握り、歯を食いしばった。(このクソ生意気!)西田の膝が震え、メガネが曇った。「あれ…やばい…」佐藤の顔が固まり、手が震えた。中島が唸った。「ただの見せびらかしだ!」石橋が強く手を叩いた。「気にするな! 挑発してんだ。戦え!」
1年生たちの僅かな自信は遠藤のオーラで砕けた。怒りが燃えた—白陽の挑発は深く刺さった—だが、恐怖が彼らを縛った。瞬は空っぽのベンチをチラリと見、腹が締め付けられた。(レンジ、どこにいんだよ!?)
中村は腕を組み、見守った。スコアボードが切り替わった:白陽2、龍鳳0。(見せてみろ、1年生。)
レンジの初試合、どうなる!? Xで熱く語れ! @RyuhoBasketball #クロスオーバー