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初めての朝

「うーむ」


昨日は一睡もできなかった。

無理に目を閉じ、ウトウトしかけた頃に、目の前を横切るこいつらが気になって目覚める。何度繰り返しただろう。

カーテンの隙間から朝日がキラキラと輝き部屋の中に降り注ぐ。煌びやかなその光景は、まるで、これから天使降臨でも始まるかの様だった。

部屋の中では、二人の天使が浮いたまま寝ている。白く輝くワンピースを身に付けている彼女達は、背中についている純白の羽根で、極たまに小さく羽ばたきフワフワと宙に浮かんでいる。

カーテンの隙間から漏れる朝日と相まって、本当の天使みたいだ。まあ、彼女達曰く本物の天使らしいのだが。

ウリエルは自ら上級天使と言うだけあって、寝ている姿も非常に上品で膝を抱えて丸まり、静かに寝息を立てている。肩まであるライトブルーの髪の毛もまとまっており、寝顔も美しい。

一方、天使見習いのガブリエルは、長いピンク色の髪を振り乱し、大の字で部屋の中を右へ左へと漂っている。ああ、口元で朝日に照らされキラキラ輝いてるのはヨダレだな。


これ以上横になっていても眠れそうに無いので、俺は諦めて起きることにした。

立ち上がり、部屋のカーテンを開けた。朝日が一気に入ってきた為か、二人の自称天使が同時に目を覚ました。


「おはようございますですの」


ウリエルは床に座り、まだ眠そうに目を擦っている。


「お姉様……おはよう……あれ?ここは?何だか世界が逆さまです」


いや、逆さまなのはお前だ、ガブリエル。


「おおおお姉様!ここは!思い出しましたたた。ままま魔王の城にににに……」

「ガブリエル落ち着いてですの。あなた逆さまですの」

「あぁわたしとした事が。まず、落ち着きます。はい、落ち着きますとも」


いや、ガブリエル。お前は逆さまなんだ、裏返っても後ろを向くだけで逆さまなのは変わらんぞ。

さて、これからどうなるのやら……


◇◇◇◇◇


しかし、本当にこいつらよく食うな。全く、天界には美味い飯は無いのかよ。


「あぁ、ガブリエル。ここは魔界だと言うのに、食べ物は物凄く美味しいですの」

「お姉様、この黄色い目玉の様な食べ物が凄く美味しいです。最初は悪魔の目玉かと思い警戒していましたが。」

「あら、こっちのふかふかで周りが茶色い四角い食べ物も美味しいですのよ。特にこの黄色い物を塗れば美味しさが倍増しますの」


ガブリエル、それは目玉焼きと言うんだ。それとウリエル、パンとバターも知らないのかよ。こんなごく普通の朝食に目を輝かせて。一体お前ら普段何食ってんだ……。


「魔王は食べ物を作り出す能力がすごいのですの。神様からの知識の中に、そんな情報はありませんでしたの」


おいまて、お前らは魔王を倒すために来たんだろ。この状況、完全に魔王に餌付けされているぞ。

美味そうに食べる二人をただ眺めていた。これから食費がやばそうだ。

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