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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

狂愛

作者: 高遠ゆめ
掲載日:2024/09/14



——誰が想像していただろう、

あの人がこんなにも狂っているなんて。



目の前が霞むような土砂降りの雨の中。

泥でぬかるんだ山道を、わたしは走っていた。

あの人に与えられた美しい着物は、雨と泥に汚れ、見る影もない。


草履を履く暇がなかった裸足の足裏は砂利が食い込み、滝のような雨が傷に変わる。

知らない土地で一人、土地勘なんて何もなかった。



それでも、



走って走って走って。

逃げて逃げて逃げて。



無理やり連れてこられた山奥の屋敷。

あの人だけが毎日やってきて、

わたしを見つめ、わたしに触り、わたしを抱いた。



知らない知らない知らない。


『また会えたね』


『ずっと探していたよ』



わたしは、

あなたなんて知らない!!



わたしは故郷で家族と、静かに幸せに暮らしてた。

あの日、あの人が仕事でわたしの村へ来るまでは。


あの人は大財閥の御曹司。

わたしを見て、あの人は村への融資額を変えた。

わたしをあの人に”売れば”村は潤う。

親も、親戚も、周りの奴らも、


「きっと幸せになれるよ」


皆がいう。

わたしの気持ちを無視して皆がいう。



ここはどこ。

どこに行けば逃げられる?

わたしは、



「みーつけた」



声がして、振り向くと黒い蛇目傘を差したあの人が立っていた。



「探したよ」


「その先は崖だよ、危ないね」


「さあ帰ろう、こんな所は体が冷えてしまうよ」



手を差し出したあの人の目に浮かぶのは、

受け入れられない”狂気”。



わたしは、

あなたの思う通りになんて、ならないわ。



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