第4話 《そして再び》
あれから数ヶ月が経った。
あの時とは景色が変わり、町には綺麗に桜が咲いている。俺は桜を見るたびあの時の事を思い出してしまう。
学校は午前で終わり、その日の帰り道、俺は何となくいつもと違う道を歩いていた。
途中にある大きな公園のベンチに座って本を読んでいる少女の姿が見えた。
俺は自分の目を疑った。
「(まさかそんなことって……)」
少し髪が伸びていたがその少女は志音だった。
間違えるはずがない。
俺は走って向かった。
「志音!!」
俺は思わず叫んだ。
「えっ……幸太……?」
志音は振り返ると本をベンチに置き立ち上がった。
「どうして。やっぱりあれは夢じゃなかったんだね……」
「夢じゃないさ。俺と一緒に漫画作ったんだ。銭湯に行ったりコタツを買ったり、いろいろ楽しい話もしただろ」
「うん、覚えてる……覚えてるよ」
志音の瞳からは涙が零れた。
「そうだ、これ」
「なに?」
鞄のポケットから桜のペンダントを取り出した。
それを志音は涙を拭き受け取った。
「これ幸太がくれたプレゼント……」
志音はあの時のようにペンダントを首に付けた。
「懐かしいな……」
「あの時から志音の事を忘れないためにずっとペンダント持っていたんだ。……あのさ時間空いているなら少し話さないか?」
「うん、いいよ」
俺と志音はベンチに座りあの日からの事を言うことにした。
「私ね、気が付いたら病院のベッドに寝ていたの。永い夢を見たのかと思ったよ。数日検査と様子見たんだけど異常が無かったから自宅療養になったの。それから定期的に病院で様子を見ることになっていてね。今日も病院の帰りなんだよ。幸太は?」
「俺はまぁ普通に生活していたかな? あっ、でも漫画は佳作取ったぞ。金賞が欲しかったけどな」
「佳作でもすごいよ。おめでとう。」
それから俺と志音はお互いこの数カ月の記憶を埋めるかのように話した。
「志音。あの時は本当にありがとう」
「私なにかしたっけ?」
「俺さ、あの時あの場所から落ちて死んでいかもしれない。けど志音が止てくれたおかげで今こうしてここに居る。本当にありがとう」
「当然の事をしたまでだよ。お礼を言うのは私の方でもあるんだから」
「えっ……どうして?」
「私もさ、あの時あの場所で幸太に出会ってなければ天国に行っていたのかもしれないし」
「どういうことだ?」
「事故に遭った後、気が付いたら何故かあの廃墟ビルの屋上に居たの。そしたら目の前で幸太が柵を越えようとしていてね。目の前で自殺されたら後味が悪いっていうか、どうせ消えるなら最後に良いことして消えた方が後味良いと思って」
「でも今は消えずにここに居るだろ。もし会わなかったら俺も志音もここに居なかったって事か」
「何て言うか、奇跡だね」
「そうだな。……あのさ」
「なに?」
「俺思ったんだ。志音とならやっていけるって。だからさ、これからも俺のそばに居てくれないか?」
「えっ……」
「これだけは伝えておきたいんだ。俺が志音を好きだという気持ちを」
静かに時間が流れ俺の鼓動が速くなっていた。
「あーあ、先に言われちゃった~」
そう言うと志音は立ち上がりゆっくり歩き出した。
「えっ?」
俺は思わず立ち上がった。
すると志音は振り返り走って来て、俺に抱き付いてきた。
その瞳には涙が輝いた。
「私も幸太と一緒に居たいし、好きだってこと。これからもよろしくね」
「こちらこそ。俺そろそろ帰るから家でしっかり休めよ」
「うんっ」
「それで俺の部屋は―――—」
「103号でしょ」
「覚えているじゃん」
「当然!」
志音はあの時のようにまた小さな胸を張った。
「そろそろ病院に戻らないと」
「おう、分かった」
「じゃっまたね」
「おぅ、またな」
「本当にありがとうねー!」
そう言って志音は帰って行った。
俺は志音と出会った出来事を漫画にしてSNSに投稿した。
それが話題になり出版社から連載の話しが来た。
タイトルは出会った時の場所から“暁の空”と名付けた。
ありがとうございました
次回作もよろしくお願いします
@huzizakura