↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛮族女王の情夫《ジゴロ》 第一部【ブリジットの章】  作者: 枕崎 純之助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/101

第22話 『夜明け前の秘め事』

 深い眠りに落ちていたボルドはふいに胸元に肌寒さを覚えた。

 そうかと思うとすぐにしっとりとした温《ぬく》もりが肌を包み込む。

 そこでボルドは強い刺激を胸先に感じ、思わず身をくねらせて目を開けた。


「んっ……」


 目を開けると自分の目の前にはブリジットの頭が見える。

 彼女は今、夜着がはだけて胸元が露《あら》わになったボルドの肌に舌を這《は》わせていた。


「目覚めたか。ボルド」

「ブリジット? これは……」


 ボルドが戸惑ってそう言うとブリジットはバツが悪そうに視線を逸《そ》らす。


「……悪く思うな。ふと目が覚めて隣《となり》で眠っているおまえの姿を見たら、妙に気が昂《たか》ぶってな。伽《とぎ》はいつでも出来るなどと言っておきながらアタシも辛抱できない女だ。嫌だったか?」 


 嫌だったか。

 元よりボルドは嫌だからやめてくれ、などと言える立場にはない。

 だが、ボルドには嫌だという気持ちはなかった。

 突然のことに驚《おどろ》きこそすれ、彼女が自分を求めてくれることにボルドは少しずつ喜びを感じ始めていた。


「嫌ではありません」

「だろうな。ゆうべは滋養食を口にしていないというのに、この滾《たぎ》りようだ」


 そう言ってボルドの下半身に手を伸ばしながらブリジットは意地の悪い笑みを浮かべた。

 思わずボルドの口から切なげな吐息《といき》が漏《も》れる。

 本邸《ほんてい》から離れた別邸《べってい》であるため、多少の声が漏《も》れようとも聞く者はいない。

 同じ別邸《べってい》で休んでいる小姓《こしょう》らも眠っているし、起きていたとしても彼らも慣れたものだろう。


 窓の外は闇《やみ》が徐々に青くなりつつあった。

 まだ夜明けまでは時間がかかるだろうが、空を包む漆黒の闇《やみ》が刻々と薄まりゆく時間帯だ。

 窓から差し込む月明かりだけが2人の姿を闇《やみ》の中に浮かび上がらせていた。

 まるでこの世界にたった2人しかいないように感じられ、ブリジットもボルドも夜明け前のこの秘め事に没入《ぼつにゅう》していく。


 深く息を吸い込んだブリジットはボルドの上に跨《またが》ると、勢いよく夜着を脱ぎ捨てて素肌を晒《さら》した。

 彼女の双丘《そうきゅう》が目の前で勢いよく揺れるのを見ながら、ボルドは彼女に息を合わせる。

 この女性《ひと》が少しでも喜ぶのを見たい。

 そんな思いがボルドの胸に広がっていく。


 そんなボルドの思いを感じ取ったのかブリジットは愛《いと》おしげにボルドの黒髪を撫《な》で、彼の頬《ほほ》を両手で掴《つか》むとその唇《くちびる》を奪う。

 勢いでボルドの舌を絡《から》め取ってしまうかのような熱烈な接吻《キス》だった。


 そこまで夢中になっていたため、ブリジットは気付かなかったのだ。

 だが、ボルドは視界の隅《すみ》でふと何かが動くのを感じた。

 月明かりの中、窓の外にサッと影が差すのを見たのだ。

 ボルドのその視線に気付いたブリジットは情事の最中《さなか》にも関わらず、枕元に置かれた小刀を掴《つか》み取ると後方の窓に向かって投げた。


「曲者《くせもの》っ!」


 鋭く飛んだ小刀は窓枠にビィンと音を立てて突き立ち、それに反応して窓の外の人影が消えた。

 ブリジットは夜着を引っ掴《つか》んで羽織るとすぐさまベッドから跳ね降りた。


「ボルドッ! ベッドの裏に隠れていろっ!」


 そう叫ぶとブリジットは夜着がはだけているのも構わずに、ベッド脇から剣の鞘《さや》を掴《つか》んで窓を押し開き、即座に外に出た。   

 ボルドは言われるまま慌《あわ》ててベッドから転げ落ち、床に腰をぶつけて痛みを覚えるも、すぐさまベッドの裏にうずくまった。

 外からこの寝室を覗《のぞ》いていた人物がいる?

 ボルドは何やら嫌な感じを覚えた。


 ここは別邸《べってい》とは言え、歴代のブリジットが幼年期と老年期を過ごす本邸《ほんてい》の敷地内だ。

 そこにある建物の中を外から覗《のぞ》くなどという恐れ多いことをする人物が、この奥の里にいるとは思えない。

 一体誰が……?

 

 甘い秘め事の時間から一転し、ブリジットの身を案じる不安と恐怖の時が過ぎる中、ボルドはじっとうずくまったまま主の帰りを待った。

 ブリジットが部屋に戻ってきたのはそれから5分もしないうちだ。

 不審な人影が何だったのか……結局、分からずじまいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。