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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
剣を創りに行っただけなのに

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ユグドラシル(2)






「ふ〜ん・・・・・。やっぱり聞いてた通り、君の身体(からだ)って不思議だねぇ〜」

「・・・・・・・あの、近いんですけど・・・・・・」


初対面のはずなのに、ユグドラシルさんはまったく気にせずグイグイと近寄っては、色々な角度から俺を(のぞ)き込んでいる。

って言うか、身体が不思議ってなに!?

"聞いてた通り"ってのも気になるけど、ナチュラルに身体の内部(臓器(ぞうき)などではなく、神としての()())を覗けてることに驚きだわ!

一体何が不思議なのか・・・・・・・・あ。

もしかして神気に目覚めたせいで何か不具合があるとか、それのせいで成長が止まっちゃったとかかな!?かな!?


「いや、君の身長(それ)は正常に育った結果だよ?とくに神気は関係してないかな」

「いいもん、分かってたもん・・・・・!どうせまだ成長期だし」

「ん〜・・・・君の成長期、もう終わってるみたい。具体的に言うと中学生くらいで」

「ぐふっ!?」


俺は(ひざ)から崩れ落ちた。

・・・・・・たしかにね、そんな気はしてたんだよ。

中一から中二にかけて十センチ伸びて(それでも145センチ )、"あれ、これ成長期来たんじゃね?"とか思ってたけど、そこから全然伸びなかったもんなぁ。

これも全て小さい頃に牛乳を飲まなかったせいか・・・・・・・。

今世紀最悪の事態(成長期終了のお知らせ)に一人絶望して遠い目をしていると、前にしゃがみ込んだユグドラシルさんが俺の頭を軽くポンポン叩いた。


「まぁ、男は何も身長だけじゃないからね!それ以外のことで頑張れば良いし、事実、サクヤ君はお嫁さんが四人もいるじゃんか」


モテモテじゃないか、と悪そうに笑うユグドラシルさん。

でもそれって、遠回しに身長は諦めろって言ってない・・・・・・・・?


「・・・・・・・なんか、ユグドラシルさん距離が近くないですか?」

「あ〜・・・・・・君が記憶を失くしてるってのも聞いてるんだけどね。昔会ったことがあるからつい」


ユグドラシルさんはそう言いながらほおをかいた。

物理的な距離もなのだが、なんと言うか・・・・・・感覚的には友達に接しているみたいな感じかな。

まあなんか友達に対するそれとは違ったものも感じるけども。

とか思っていたのだが・・・・・・なるほど、そういう事か。


「それに最近はずっと一緒に()たからさ」

「え?」


・・・・・・・・今なんて?

最近ずっと一緒に居た?何それどういうこと・・・・・・?


「君、この前まで黒色の剣を使ってたでしょ?」

「うんまぁ・・・・・なんで知ってんのかはさて置き、それがどうしたの?」

「あの剣の素材って、世界樹(せかいじゅ)の枝先だったの。つまり私の一部ってわけ。あんな小さな物でも私の意識は移せるから、時々君のことを見守ってたんだよ?」


・・・・・・・・・全然気が付かなかった。

と言うか、皐月(さつき)ってばそんな貴重な物を渡してくれてたのか。

めちゃくちゃ軽く扱ってたから、少し良い素材なのかなぐらいにしか思ってなかったんだよね。

道理(どうり)で使いやすかったわけだ。


「・・・・・・一応、皐月には大事に扱ってって言っておいたのになぁ・・・・・・。ま、そのおかげでサクヤ君に使ってもらえたんだけどさ!」

「うわっ!?」


(こま)(がお)から一転、満面の笑みを浮かべたユグドラシルさんが思いっきり抱きついてきた。

初めて感じる特別な甘い匂いと、押し付けられている極上の柔らかいモノが俺の意識をトロトロに溶かしていく。

くっ、なんて殺人的(さつじんてき)包容力(ほうようりょく)なんだ・・・・・・・・このまま永遠に包まれてたい・・・・・。

微塵(みじん)も抵抗する気が起きずされるがままに抱きつかれていると、もう我慢ができないといった様子の二人が割って入ってきた。


「ユグドラシルそこまでよ、サクヤ君は私のご主人様(しゅじんさま)なの!」

「いや、それも違うからね?」


引き()がされたことで我に返った俺は、とりあえずそうツッコんでおく。


咲夜(さくや)さん、デレデレしすぎです!私たちが居ること忘れてませんでした?」

「そ、そんなことないよ・・・・・・・」


いやー、なんでイシスといいユグドラシルさんといい、神様の抱擁(ほうよう)って(あらが)いづらいんだろうね。

花恋(かれん)のも良い意味でやばいし・・・・・・・・なんかそう言う特殊な効果でもあるのかな?


「反省してます?」

「アハイ、スミマセンデシタ」


やばい、皐月さんが(おこ)だ!

顔は笑ってるのに目が笑ってない。

・・・・・・・・・・あれ、なぜだか既視感(きしかん)が。


「ご主人様って・・・・・・そっか、夢が叶ったんだ良かったじゃん」

「ええ。私より先にそばに(つか)えてたくせに、モジモジして一歩踏み出せなかったどこかの誰かさんのおかげで、私が一番乗りになれたわ」

「へぇ〜・・・・・誰だろうね」


・・・・・・・・・・あっちはあっちでなんか知らんけど修羅場(しゅらば)ってた。

分かりやすすぎるマウントを受けたユグドラシルさんの(まゆ)がピクリと反応し、わざとらしく首をかしげる。

うわぁ・・・・・二人とも目が笑ってなくて怖い。


「・・・・・・・まあ、今日はそんなこと話すために来てもらったわけじゃないからね。サクヤ君、早速剣を(つく)ろうか!こっちに来てくれる?」

「あ、うん・・・・・・って言っても、俺に手伝えるようなことなんてほとんど無いだろうけど」


ユグドラシルさんはやれやれと肩をすくめると、イシスの横からひょっこり顔を覗かせて手招きしてきた。

不満そうにほおを膨らませている皐月に謝ってから、ユグドラシルさんの近くに移動する。

出来ることは少ないだろうけど、わざわざ俺のために創ってくれるのだから、力になれることがあれば積極的に手伝いたい。

どんな事でもばっちこーい!

何やら詠唱(えいしょう)を終えた彼女は、真剣な表情で皐月とイシスに少し離れていてと言うと、おもむろに神気を(まと)わせた右手を俺の額に当てた。


「じゃあ、君が求める剣を想像してみて?能力とか形とか・・・・・なるべく詳しくね」

「りょーかい」


真っ先に頭の中に浮かんだのはついこの前まで使っていた黒い剣。

あれと似たようなものを創り、さらに能力も上乗せ出来れば、シンプルかつ強力な剣が簡単に出来る。

しかし、()()()()()()と俺の中の何かが訴えかけてくる。

(しか)るべきものを(しか)るべき時に。

()()()()()()()()()()()()()

となれば───────────────。


「決まったみたいだね。それじゃあ、いくよ・・・・・・?」

「っ!?」

「「なぁっ・・・・・!?」」


コツンッとお互いの額が接したかと思うと、周囲に圧倒的な光が(あふ)れ出し、少しずつ頭上に収束していく。

・・・・・・・しゅ、集中しろ俺よ、今はそんな煩悩(ぼんのう)に構ってる場合じゃにゃいぞ!

目と鼻の先にあるユグドラシルさんの綺麗(きれい)な顔にドキドキが止まらない。

駄菓子菓子(だがしかし)

それで剣の作成が失敗したら笑えんぞ!

そうだ、目を閉じてよう。

そうすれば集中できるはずだ・・・・・・・・・。

決してそばで見守ってくれている二人の雰囲気が怖いとか、背後に般若(はんにゃ)の面をかぶった何かが見えるとか、そんな事は一切ない。

ないったらない!




そして、一体どれくらい経ったか分からないある時。

頭上でリンッと鈴の鳴るような音がした。


「もう大丈夫、ちゃんと完成したよん!」

「ふぅ・・・・良かったぁ・・・・・・・」


見上げると、(さや)から出た状態の()()()が、黄金(おうごん)(から)を砕いて宙に浮かんでいた。

ゆっくり降下してきたそれは、すっぽりと俺の手の中に収まった。


神眼(しんがん)で剣を見てみて」

「え・・・・あ、うん・・・・」


言われるがまま神眼を発動させて、手元の白い剣を見る。

だが、べつにこれといって何かある訳でもない。


「意識を集中させて・・・・・。物事の真理を見抜く、じゃ難しいから、ゲームやアニメにある【鑑定眼(かんていがん)】だと思えば良いよ」

「たしかにそれ分かりやすいかも。・・・・・・むむっ、何か見えてきた」


ユグドラシルさんに言われたことを意識しつつ、目を凝らして剣をじーっと見つめていると、剣の少し上にじわじわ文字が浮かび始めた。


     ────────────   


(めい) 精霊剣(せいれいけん) ?????


・精霊神(精霊王)ユグドラシルが創った神器(じんぎ)。契約した精霊の力を通常の数倍から数十倍まで引き出せる。


     ─────────────


・・・・・・・・・なんかすごい神器ができてるんですけど。

"契約した精霊の力を数十倍引き出せる"って、完全にチートじゃんか。

しかも名称不明だし。

大体こういうのって、名前が分かった時に覚醒するフラグなんだよなぁ。

現実でそんな上手くいくか分からないけどね。


「ん、見えたみたいだね!それは【神理眼(しんりがん)】って技。使えると色々便利だから、ちゃんと覚えといてね」

「うん・・・・・・にしてもすごいね、こんなすぐに神器を創れるなんて」

「まあね〜。でも喜ぶのはまだ早いよ?」

「と言うと?」

「その剣は書いてある通り、精霊の力を最大で1()0()0()()引き出せる。逆に言うと、精霊と契約(けいやく)してないとその真価(しんか)を発揮することが出来ないの」

「つまり、これからその精霊と契約しに行くってこと?」

「ピンポンピンポ〜ン!」


ほほう、それはテンション上がる。

精霊と契約したら、今まで以上にかっこいい技が使えるようになれそうだ。

あとファンタジー好きとして精霊と契約はロマンだよね!


「それじゃあ早速私と契約しよっか!」

「え、ユグドラシルさんとも出来るの?」

「うん。私は精霊の"王"であり"神"でもあるからね。存在としては精霊よりなんだ〜。それに神としての特性を合わせ持つ私なら精霊以上に相性バツグンだよ!」


なるへそ、それなら契約しない手はないか。

でも契約ってどうやってやるの?


「サクヤ君こっちおいで?」

「はーい。あ、もしかしてさっきみたいに──────────んむっ!?」

「あーーーーっ!?」

「!!?!?!」


ユグドラシルさんが俺のほおに手を添えたので、さっきみたいに額を合わせるのかと思いきや、いきなり(くちびる)を奪われた。

おかげで一瞬頭が真っ白になってしまう。

イシスと皐月もかなり・・・・・と言うかとてつもなく驚いたようで。

イシスは慌てふためいたように俺たちを引き剥がそうとするが、契約が大事なことと分かっているようで、止めるに止められない様子。

皐月に(いた)っては衝撃的すぎて、その場で呆然(ぼうぜん)と立ち尽くしている。

イメージ的には、デフォルメされた皐月が雷に打たれたみたいな衝撃を受けている感じ。


・・・・・・・・って言うか長い!


(いま)だに唇は繋がったままだ。

そろそろ皐月たちが我慢の限界、みたいな表情になってきたから──────────────っ!?

突然、俺とユグドラシルさんから膨大な神気が溢れ、力の本流が勢いよく天へと昇っていく。

と共に、ユグドラシルさんの記憶の一部や想いなどが流れ込んできて、一体化していくような感覚に(おちい)る。

きっと彼女も同じことを思っているのだろう。

そして、心の中でこんな声が響いた。


『──────────同化(どうか)


溢れ出していた神気が一斉に俺たちの元に降り注ぎ、二人を繋ぐモノとなって身体に溶け込むと同時に、ユグドラシルさんも(あわ)く輝いて俺の中に吸い込まれた。

あっという間に力の本流は消え去り、巻き上げられた花々が美しく落ちていく。

えっ、あれ、もしかして失敗した!?

契約のはずだったのに何かやらかしてしまったかと不安になっていると、近くで見ていた二人がさっきとは違った意味で呆然としていた。


「さ、咲夜さん、その髪と目って・・・・・・」

「くっ、やられたわ!まさか同化するだなんて」

「え?髪がどうかしたの・・・・・・・ってえぇ!?」


後ろを見るとなんと、【神威解放(しんいかいほう)】状態の白髪(はくはつ)が腰あたりまで伸びていて、うっすらと桃色に染まっているではないか。

皐月が言うには目も紫と緑のオッドアイになってるらしいし。

どゆこと?


『ん・・・・・無事同化が成功したみたいだね!』

「わっ!」


脳内に直接ユグドラシルさんの声が響いてきた。

そして次の瞬間、目の前に光が集まって彼女の姿が形成された。


「"同化"。簡単に言うと、契約より強固な関係だよ〜」

「びっくりしたよ・・・・・てっきり失敗しちゃったのかと」

「ごめんね〜、言ったらイシスに邪魔されると思ってさ!」


「〆-:<×:・+$*☆+%!!」


「いや、せめて何かしらの言語であってくれよ・・・・・・・・」


もはや原型さえ無くなった(なぞ)の言語で怨嗟(えんさ)の声を上げるイシスに、流石の皐月もドン引きしている。

悔しそうなイシスを見て意地悪(いじわる)な笑顔を浮かべるユグドラシルさん。

この二人、ほんと仲悪いな・・・・・。


「さて、サクヤ君には最後に、私に名前をつけてもらうよん!」

「名前って・・・・・・何で?」


もうすでにユグドラシルって名前があるじゃん、と思っていたのだが、彼女(いわ)く、契約した(あるじ)に名前を貰うと、元々の名前が真名(まな)昇華(しょうか)するらしい。

主との繋がりがより強固になり、真名を解放した時にさらに強い力を得ることができる、との事だ。


「ご主人様!ユグドラシルの"ドラ"を取ってドラちゃんなんてどうですか!?」

「それじゃノゲ〇ラのス〇フと同じじゃんか。却下で」

「普通に英語のニンフとかですかね」

「たしかにそれが一番ノーマルで良いかなぁ・・・・・・」


ん〜、でもそれだとさすがに安直(あんちょく)すぎる気が・・・・・。


「じゃあ"フィア"で───────────おおぅ?」


考えた名前を(つぶ)いた途端(とたん)、少量の俺の神気が紋様(もんよう)となってフィアに刻み込まれた。

すると、頭の中に機械のような声が聞こえてくる。


【精霊王"ユグドラシル"が真名に昇華し、新たに"フィア"と名付けられました】


「よし、これで契約の儀式は終了だよん!」

「ふぅ・・・・・・疲れたぁ」


とくに目立って何をしたわけでもないように見えるけど、精神的(せいしんてき)に結構疲れる。


「へばるのはまだ早いよ〜。次は精霊達の番。各属性の大精霊(だいせいれい)たちと契約して貰うからね!」

「え、うそん!?全属性の子とあれやるの!?」


属性の頂点である大精霊と契約することで、下位の精霊も使役することが出来るのだが・・・・・・・・・。

それでも全員分の名前を考えたり、その・・・・・・・フィアみたいにキスするのは気が引けると言うか。


「べつにその必要はないよ?ふつーに契約の儀式(ぎしき)して、名前を与えるだけ」

「・・・・・・・じゃあ何でフィアは─────────」

「それはもちろん、私がやりたかったからだよんっ!」


後ろに手を回したフィアはトトッと前に出ると、クルリと振り返って優雅(ゆうが)にワンピースの(すそ)を持ち上げて頭を下げた。


「精霊王"ユグドラシル"─────────名を(あらた)め"フィア"は、今この時より貴方(あなた)片割(かたわ)れとして、この命尽きるまで共に(あゆ)むことを誓います」


(おごそ)かにそう()げたフィアはサッと顔を上げると、片目をつぶってペロッと舌を出し。


「これからよろしくね、()()()!」


最高の笑顔を見せてくれた。






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