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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
夏だ!海だ!神殿だぁ!

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VSイシス(3)




ゴウッと風を斬る特大のブレスを()け、逆袈裟斬(ぎゃくけさぎ)りをする。

だが硬い(うろこ)(はば)まれてしまいイシスにダメージを与えることが出来なかった。

しかもその鱗には傷一つ付いておらず、もしかしたらいけるかもという(あわ)い期待すら(いだ)かせてくれない。

くっ、竜の姿になったせいで装甲(そうこう)は硬くなるわ、殺意高めの攻撃が多くなるわ・・・・・・。

これほんとに合格できるかな!?


「"万焼波紋突(ばんしょうはもんづ)き"!」


イシスの背中に着地して頭の方まで走っていき、炎の衝撃波(しょうげきは)を乗せた拳を叩き込む。

表面が硬いのであれば、防御力の低い内部を攻撃すれば良いのではないのだろうか。

リヴァイアサンの時と同じような感じでね。

そう考えてやってはみたが、結果はお世辞(せじ)にも効いているとは言えなかった。

そうなるとあとは、逆鱗(げきりん)を探すくらいしか方法が見当たらないな。


『逆鱗は探しても無駄よ〜。私にそんなものは無いわ』

「うわっ!?」


(なめ)らかな動きで振り落とされ、遠心力(えんしんりょく)の乗ったしっぽの一撃が華麗(かれい)にヒットする。

あっという間に神眼(しんがん)による付与(ふよ)は粉々に粉砕(ふんさい)されて、生身のまま海にはたき落とされる。

その衝撃で肺の空気が一気に吐き出されてしまい、目の前の液体がうっすらと赤く染った。

しかし休む暇無く放たれたブレスが海を斬り分けて迫ってくる。

うぅ、身体が上手く動かない・・・・・。

骨は折れていないものの、腕が(しび)れて剣を持つことさえままならないのだ。


(ぐ、【暴食之罪(グラトニー)】!)


ガボッと残り少ない空気を出しながら(とな)えると、(てのひら)から漆黒(しっこく)の闇が飛び出しブレスを食らっていく。

・・・・・・・・ったく、どんだけ巨大な神気(しんき)が込められてるんだか。

ブレスと【暴食之罪(グラトニー)】が拮抗(きっこう)し、ついに容量オーバーとなってしまった俺の方が負けてブレスが直撃する。

暴食之罪(グラトニー)】が吸収できる()()の量は、俺の神気量と魔力量に左右されるのだが、神気や魔力だけで言えば俺と同じ量は入る。

つまり今のブレスはそれ単体だけで、俺の神気と魔力の合計量を越していたってことだ。

それを平然とやってのけるなんて・・・・・・。

イシスの神としての格が高いというのもあるだろうが、何よりも俺の実力不足が大きいだろう。

まだ完全に神気を使いこなせていない。


「"水華流爛(すいかりゅうらん)"!」


勢いよく海面から飛び出して、イシスの攻撃を避けながら所々に攻撃を加える。

陣が形成され放たれた水刃(すいじん)が、ピッとほおを斬るギリギリで避けて(ふところ)へ潜り込み、何度も技を繰り出す。


『"水龍凰(すいりゅうおう)"』

「"抜剣(ばっけん)花朧(はなおぼろ)"!」


踊るように()不規則(ふきそく)に接近してくる、二体の水の龍を無数の斬撃(ざんげき)で斬り刻む。

が、すぐに再生した龍達は俺にまとわりつき、万力(まんりき)の力で締め上げてくる。

こんなに小さな身体からは考えられないほどの力だ。

簡単には抜けられそうにないな・・・・・・ってちょ、首はダメだって・・・・・・息できない・・・・・!

鋭いキバが(のぞ)く口をガパッと開いて、イシスがこちらに迫ってくる。


「【テレポート】っ!」


勢いよく閉じられた口の横に転移し、思いっきり(あご)横蹴(よこげ)りする。

イシスが()()っている隙に水龍を吸収すると、畳み掛けるように神速(しんそく)の斬撃を繰り出す。


「"冥桜閃々(めいおうせんせん)"!」


ギギンッという硬い音がして、イシスが大きく後退した。

が、そう思ったのも(つか)()

一瞬で復帰した彼女のしっぽによって地面に叩きつけられる。

あまりの破壊力に丘の方がもたず、俺がいた先端部分がガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。

視界の端で青い竜が天高(てんたか)(のぼ)り、こちらを見下(みお)ろしながら陣を生成しているのが目に入った。

そして、大きな咆哮(ほうこう)が一つ。

四つの巨大な閃光(せんこう)といくつもの水の刃が降り注ぐ。


「や・・・・あぁっ!!」


迫る閃光と水刃の核を全て両断して消滅させ、落ちる瓦礫(がれき)を足場に飛び上がる。

素早い動きで撹乱(かくらん)しながら強烈な攻撃を加えるが、目の前の竜はビクともせずに落ち着いた様子で(たたず)むだけだ。

そしてついにイシスの目が俺を(とら)えた。


「っ、あぶなっ!?」

『あら、今のをよく防御したわね』


下から突き上げられた尾を、ギリギリのところで剣を盾にして耐える。

直前に後ろに飛んだおかげで衝撃が吸収されて無事に済んだようだ。


『それなら、これはどうするのかしら?』


イシスはそう(つぶや)いて海へ潜る。

すると(ほど)なくして海面が荒れ始め、波が徐々(じょじょ)に高くなっていく。


「─────────なっ、待て待てそれはやばいぞ!?」


はるか遠くから発生したのは、十階建てのビルさえも飲み込んでしまいそうな特大の津波。

見る見るうちにこちらに接近している。

なんとか【テレポート】で・・・・・・くっ、無理か!

津波が大きすぎるせいで範囲外となる場所がかなり遠く、正確な座標を把握(はあく)することが出来ない。

こうなったら津波に穴を開けて、そっから向こう側に抜けるのが一番()()(ばや)いか。

そうと決まれば(ぜん)は急げだね。

すぐそこまで迫っている津波の方へ飛びながら、黒剣(こくけん)に神気を(まと)わせ構えを取る。


「"黒聖一閃(こくせいいっせん)神羅(しんら)"!」


白い炎を纏った一筋(ひとすじ)剣閃(けんせん)が津波に激突して、大きな穴を開ける。

今だ・・・・・!

急いでその穴を抜け、向こう側へと────────────。


『ゴアァァァァアァァァッッ!!』


ちょうど穴の真ん中辺りに差し掛かったころだっただろうか。

下から口を大きく開いた青い竜が飛び出してきた。

俺とイシスの視線が(から)み、互いの無言の意思がたしかに伝わり合う。

────────惜しかったわね。

そう言われた気がした。

だけどそれは。


「ご生憎様(あいにくさま)、それは予想通りなのさ!」


ここに来る前に左手に用意しておいた白い炎をイシスに向ける。

賜与(しよ)神眼(しんがん)によって、俺自身にはあらゆる防御系バフを。

白い炎には【範囲拡散(はんいかくさん)】を付与し、驚くイシスと俺の間で解放する。


「【白熖(はくえん)】!」


もちろん、この炎だけでイシスを倒せるなんて思っちゃいない。

だけどここにはふんだんに水がある。

炎と水。

水が炎という非常に高温のものに触れることによって気化(きか)し、体積が約1700倍にも膨張(ぼうちょう)する爆発現象。

つまり、水蒸気爆発(すいじょうきばくはつ)だ。

これだけの炎と水があるんだ、さぞかし高威力な爆発となるだろう。

次の瞬間、ゴッ・・・・!と空間が(きし)んで大気は震え、目の前が真っ白に染め上げられる。

神眼による結界や防御、神気のガードも全部もろとも吹き飛ばされてしまう。

しかしそれでもまだ収まることはなく、有り余る衝撃を受けて軽々(かるがる)と吹っ飛ぶ。


「ぅ・・・・・あ・・・ど、どうよ、さすがにこれなら──────────」


やっとの思いで体勢を立て直して、視界を(さえぎ)る水蒸気を前にポツリと呟いた。

だけど俺はどうやら、龍化(りゅうか)したイシスのことを甘く見ていたらしい。


「なっ!?」


正面から水蒸気を吹き飛ばして青い竜が現れた。

所々に傷はできているが、あれでは倒せなかったようだ。

ガパッと開かれた口には既にブレスの準備がされている。

この距離ならば()けることは不可能だろう。


『ゴアァァァァアァアァァァッッ!!!』


青い(ひらめ)きと共にブレスが放たれた。

咄嗟(とっさ)に俺は剣に神気を纏わせて振り下ろし、ブレスに対抗する。


「う・・・おぉぉぉぉっ!!」


必死に抵抗するが、無慈悲(むじひ)にも決着はすぐに着いた。

ピキピキッと亀裂(きれつ)が走り、(はかな)い音と共に俺の黒剣は折れてしまった。

そのまま俺は、青色のブレスに飲み込まれた。



         ◇◆◇◆◇◆



目の前で白い炎が燃え広がり、とてつもない爆発が起こる。

驚いて反応が遅れてしまったせいで神気のガードが間に合わず、かなりのダメージを受けてしまった。

なんなら結界も何枚か持っていかれたわ・・・・・・。

まさか水蒸気爆発を狙っていたなんて。

でも龍化した神族(しんぞく)耐久力(たいきゅうりょく)()めていたみたいね。

水蒸気を吹き飛ばしてサクヤ君の前に姿を現すと、彼は凄く驚いていた。

そんな彼の表情がとても()()()()、うっかりブレスを()めそうになってしまった。

だけど煩悩(ぼんのう)を振り払って青いブレスをサクヤ君に命中させる。

ふぅ、たぶんこれで終了かしら。

これなら全然合格を与えられるレベルだわぁ〜。

記憶を取り戻して、自分の神格(しんかく)を目覚めさせる時が楽しみね。

それにもし記憶が戻ったら、ちゃんと()()()()()を守ってくれるといいな・・・・・。

やっぱりサクヤ君の()()格別(かくべつ)だったもの。

砂煙(すなけむり)が晴れるのを待ちながらそんなことを思う。

だけど砂煙が晴れて、相手を舐めていたのはお互い様だってことが分かった。

なんとサクヤ君はボロボロになりながらも、明確(めいかく)な意志を宿(やど)した(ひとみ)で私を見つめていたのだ。

折れた黒剣を片手に持ちながら。






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