様子がおかしい・・・・・?
あっさりした回で申し訳ないです!
章の始まりということで、プロローグ的な何かとして読んでいただければと・・・・・・・!
「おーにぃちゃーん!朝だよぉ♪」
「ぐえぇっ・・・・・・」
寝起きに突然乗っかってきた重みに、潰されたカエルみたいな声が漏れる。
うぅ、しまった。
平日はアラームかけてるから、この起こされ方はしないのに、今日に限ってアラームに気が付かなかったとは。
「怪我人になんて仕打ちするんだ、朱華よ」
「いつもより優しくやってるじゃん」
やらないという選択肢はないんですかね・・・・・・・。
ボーっとする頭でツッコミながら起き上がり、大きなあくびをする。
いててっ、もう数週間経つってのに、まだ傷残ってんのか。
リバイアサンとの戦いから時間が経ち、季節は夏に差し掛かろうとしている。
それなのに受けた傷は完治しておらず、このくそ熱い中、俺は色々な場所に包帯や絆創膏などをつけていた。
まあ、もう日常生活に支障がない位には治ってるんだけどね。
そろそろ包帯も取っていい頃合いだろう。
とりあえず眠気を覚ますため顔を洗いに行こうとしていると、横に避けていた朱華に止められてしまった。
「ほら、お兄ちゃん脱いで」
「あいあ〜い」
言われるがまま着ていた大きめの部屋着(上)を脱ぎ、ベットにちょこんと座る。
正面に膝をついた朱華は俺の身体に触れると、巻かれていた包帯を取って、その下のガーゼを遠慮なく剥がした。
いてっ!?
ガーゼを止めるためのテープが勢い良く剥がされ、肌にちょっとした痛みが走る。
いや、剥がすの雑かて。
「眠気、覚めたでしょ〜!」
「たしかに覚めたけどさ・・・・・・あたっ!?」
にししっ、と笑いもう一つのガーゼも剥がすと、今度は両腕の包帯や絆創膏を取って、綺麗になった俺の身体をあちこち眺めている。
「ふへへ、君ぃ、良い身体してるねぇ」
「オッサンかよ」
うちの妹、悪そうな顔でセクハラしてるオッサンみたいなこと言い出したぞ。
ひとしきり俺の身体を見回し、持ってきていた箱から絆創膏を一つ取り出す。
「まあ冗談はさておき、傷がほとんど治ったみたいで安心したよ。あとはここだけだね」
よかったよかったと言いながら、治りかけの胸元の斬り傷にペタリと貼ると、そのままさり気ない動作で俺のズボンに手をかけ・・・・・・・・・ってちょっと待ったぁ!
下げられる直前になんとか止めに入る。
あ、危なかった。
「何してんすか?」
「え、ズボンを下げようと・・・・・・・・?」
そんな何で止められたんだろう、みたいな顔されましても。
そりゃ止めるよね、普通。
「だって、太ももの包帯も取らないといけないし」
「下は自分でやるよ」
「えー、見られて減るものじゃないじゃ〜ん!」
「それは見るものが"ナニ"かにもよるかなぁ」
諦め悪くズボンを下げようとする朱華を引き剥がして、申し訳ないが部屋の外に出てもらう。
あっ、こら、お腹ペチペチしないで!
部屋のドアを閉めて鍵をかけると、すぐさま外から抗議の声が聞こえてきた。
「むー、お兄ちゃん!今まで動けなかったお兄ちゃんをお世話してあげた恩を忘れたか!」
「それに関してはありがとうございます!朱華のおかげで助かりました!でもこれはさすがにアウトだよぉ!」
少しの間ドアの前で粘っていた朱華だったが、どうやらもう諦めて自分の部屋に戻ったようだ。
ふぅ、危機一髪だった。
ベットに腰掛けてズボンを脱ぎ、太ももの包帯を剥がす。
・・・・・・・・・なんか最近、朱華の様子が変なんだよね。
いつもより俺にくっついてる時間が長くなったし、さっきみたいな逆セクハラ紛いのことも増えてきた。
どこか焦っているようにも見えるんだけど・・・・・・・・どうしてそうなったのか、心当たりが全く無いんだよなぁ。
朱華に取ってもらった包帯と絆創膏と一緒にビニール袋に入れ、口を縛ってからゴミ箱にスローイン。
放物線を描いた袋はガサッと擦れる音がして、見事にゴミ箱に入った。
そそくさと脱いでいた部屋着を着直し、アラームのスヌーズを止めていると、隣の部屋から朱華が出て階段を降りていく音がする。
「お兄ちゃん、そろそろ朝ごはん食べないと、学校間に合わなくなるよー!」
スマホの現在時刻を見ると、たしかに危なめな時間だ。
「うん、すぐ行くよ」
まあ特に害がある訳でもないし、むしろ妹に好かれるのは兄名利に尽きるからね。
俺はスマホ片手に部屋を出て、下の階へ向かって行った。
◇◆◇◆◇◆
最近、お兄ちゃんの様子がおかしい。
なんて言うかこう・・・・・上手く言えないんだけど、妹だからこそ分かることがあるのですよ。
朝に花恋さんや皐月さんが来ることも多くなったし、時々お兄ちゃんがいつもより早く家を出る時があるけど、絶対二人と待ち合わせしてるでしょ!
この前なんて美海さんって言う、年上のお姉さんまで家に連れ込んでたし・・・・・・!
もしかして、誰かとできちゃったの!?
でもそんな話聞いてないし・・・・・・・・。
むぅ、誰だろうと負けるわけには行かないもん!
・・・・・・・て息巻いたは良いものの。
お兄ちゃんめ、何をしても全然動揺してくれない。
完全に一人の"女の子"として意識されていないことがよく分かる。
お兄ちゃんの中では、私はあくまでも大事な妹なだけ。
今日なんてズボンを下ろそうとしたのに、普通にツッコまれて部屋からつまみ出されたんですけど。
「お兄ちゃんのばかばかばかぁ・・・・・!」
ベットに寝っ転がり枕に顔を埋めてじたばた悶える。
せっかく私が勇気出して頑張ったのに、ガンスルーしてたよあのバカ兄ぃ!
もうあんなのじゃあ動じないってこと!?
分かったよ次はもっと凄いのやってやるもん!
絶対お兄ちゃんは誰にも渡さないもん。
私を妹としてじゃなくて、女の子としてしか見れないようにしてやるぅ!
「ぅぅぅぅ〜〜〜・・・・・・・・」
最後に枕に顔を押し付けて唸ると、ガバッとベットから起き上がる。
よし、落ち込むの終了!
頭上に置いてあったスマホを手に取りホーム画面を開く。
「むふふ、このお兄ちゃん、いつ見てもかわいぃ〜・・・・・・・・って!もうこんな時間!?やばっ、朝ごはん食べてない・・・・・・」
スマホをベットに放り投げて部屋から出ると、隣の部屋にいるはずのお兄ちゃんに声をかける。
「お兄ちゃん、そろそろ朝ごはん食べてないと学校間に合わなくなるよー!」
「うん、すぐ行くよ」
お兄ちゃんの返事を聞いて、私は階段を降りていった。




