神様のオンパレードですぅ!?
皐月視点のお話ですぅ!
「─────────魔神王の復活ですか・・・・・・・・・。なんと言うか、スケールがデカすぎて頭痛くなってきました」
ルクス・テネディス内の全種族を巻き込んだ世界戦争が再び始まろうとしていること、確定した魔神王の復活、魔神王が求めるは咲夜さんの身柄、などなど。
もー、何がなんだか・・・・・・・・。
現実逃避したくなるような内容が盛り沢山じゃないですか。
「まあ普通はそうなるよねー」
「残念なことにまだ話は続くんだけど、その前に何か聞きたい事あるかな?できるだけ頭を整理して欲しいからどんどん聞いてよ!」
いやもう、聞きたいことだらけですよ?
ただそれを全部差し置いて一番聞きたいのは、何で魔神王が咲夜さんを狙ってるかですけどね!
私から大切な人を奪おうとはいい度胸じゃないですか、まったく。
「何か魔神王には咲夜さんを狙う理由があるんですか?」
「うんとね、たぶん咲夜くんが生まれ持った特殊な体質のせいだとおもうんだぁー。咲夜くんは本来、一つしか無いものを二つ持っているの。何故かその片方が全く機能していなくて、魔神王はそれに目をつけた。上手く利用すれば大戦で失った力を取り戻すだけでなく、それ以上のものを手に入れられると考えたみたいなのよ」
「さっきの話では大戦中に魔神王が咲夜を攫っていましたけど、それは?」
「こうなることを予想していたのか、それとも私たちの故郷を攻めてきた時に手頃な子供がいたからなのか・・・・・・・これに関しては正直分からないなぁー」
「・・・・・・・・・・・・」
「魔神王って言うのはその名の通り"魔の神の王"、つまり神族なの。そんなやつが力を取り戻せるだけの肉体を持つってことは、咲夜自身も───────」
「神族・・・・・・神様ってことですか!?」
「そゆこと。ちなみに私もアリス伯母さんも同じだよー」
「衝撃のカミングアウトですぅ!あうぅ、なんですかこれ、神様のオンパレードじゃないですか・・・・・・・。まさかの人類は皐月だけと」
皐月たちの主であるユグドラシル様よりも上位の存在にして、全ての根源たる者たち。
普段は神界にて数多の世界を見守っていると聞いたことがあるのだけれど、神様ってみんなこんなにフットワーク軽いの・・・・・・・・?
「んー、基本的に私たちには絶対的なルールがいくつかあって、まあ憲法みたいなものなんだけど、それを破らない限りは結構自由に行動できるかな。最近の神々は、試行錯誤してなんとかそのルールをすり抜けられないか、必死に考えてるような子たちもいるねぇー」
・・・・・・・やってる事が校則を破るか破らないか、ギリギリのところを攻めてる先輩方と同じ!
と言うかそれって大丈夫なんですか!?
「心配ご無用だよー。一つだけね、神の頂点である最高神でさえ破ることができない法があるの。"緊急時以外の神の力による世界への干渉、また地上での力の行使は認められない"」
「まあ神の力を使っちゃいけないだけで、私たちみたいに人化して地上に降りるのはセーフなんだけどねぇ。さっき言った子たちも力を悪用するためじゃなくて、なんとか理由をこぎつけてバカンスに行きたい!って感じだったから、そこまで問題じゃないんだぁ」
もちろんお説教の後に仕事に戻ってもらったけどね、と笑顔で付け足したアリスさん。
横にいる花恋さんが乾いた笑みを浮かべていることから、かなり厳しいお説教だったのが目に見えてくる。
まさか、バカンスに行きたいって言ったの花恋さんじゃないでしょうね?
(後で聞いたら、花恋さんが言った訳ではなくて、説教をされている所を密かに見ていただけらしい)
まー、花恋さんに限ってそんなことはないと思いますけど。
ふと視線を感じてその方を見ると、何かに気づいたようなアリスさんが皐月の顔をじっと見つめていた。
な、なんですか・・・・・・?
ひよっとして皐月の顔に何かついてます!?
「不相応な恋だって思った?」
「っ・・・・・・ええ、まぁ・・・・・・・」
内心密かに思っていたことをズバリと言い当てられて、一瞬言葉に詰まってしまった。
神と人間。
地位も力も寿命も、いっぱい違うところがあって、一緒になることは決して楽じゃない。
他の神々だってこれを良しとするかどうか。
まあ愛の前では些細な問題ですけどね!
「べつに良いんじゃない?私たちは人間だとか神だとか、そんなにこだわりは無いもの。むしろ祝福してくれると思うよぉ?咲夜くんは非リアな男神たちにボコボコにされるかもしれないけど」
「非リアな男神ってパワーワード初めて聞きましたよ・・・・・・・。なんて言うか、神様って良い人(?)だらけなんですね」
アリスさんがそう言うくらいなんですから、これに関しての心配はしなくて大丈夫そうですね!
となると、残る問題は・・・・・・・。
「咲夜さんを好きな人が多すぎるってことですかねー。皐月と花恋さん、桃花さん、美雨さんに朱華ちゃん。既に五人もいますぅ・・・・・・」
「あ、それは皐月たちが良いんであれば平和に解決する方法あるよ?」
「えっ、そんなのあるんですか?」
「うん。要はそれって、一人しかお嫁さんになれないからそうなるんでしょ?でもルクス・テネディスは一夫多妻制。つまりあっちで結婚すれば、もれなく全員がお嫁さんにー」
「ほほぅなるほど、それは良い案ですね。皐月は賛成ですよ」
みんなが幸せになれるのなら、それが一番ですから。
他の人たちが賛成するかは分かりませんけどね。
「うんうん。こんなにモテモテだなんて、さすが私の息子よねぇ」
皐月たちの会話をニマニマして聞いていたアリスさんが、少し誇らげに頷きながら衝撃の事実を口にした。
えっ、ちょ・・・・・・・・え?
「あれ、言ってなかったっけ?」
「初耳ですよ・・・・・・・」
花恋さんがジト目になるとそれを誤魔化すように、"てへぺろ☆"と可愛らしく舌を出している。
たしか、アリスさんってうん千歳なんでしたよね・・・・・・・・てことは咲夜さんも皐月よりかなり年上ってことですか・・・・・・・!?
「ううん、私と咲夜は今年で十六歳。皐月たちと同い年だよー」
・・・・・・・それはそれでアリスさんとの年の差が凄いことになってますね。
「そう言えば花恋さん今更ですけど、アリスさんのこと"アリス伯母さん"って呼んでましたよね。咲夜さんとはいとこみたいな感じなんですか?」
「んー、実際はちょっと違うんだけど、だいたいそんな感じかな。私はアリス伯母さんの先代が生み出した神の子孫で、咲夜は先代が自分の神格の遺伝子を使って直接産み出した、言わば先代の直系であるアリス伯母さんの子供なんだー」
「私たち神々はみんなで一つの家族みたいなものなの。先代が生み出した子たちだって私の本当の姉弟みたいなものだし」
「はふぅ、なんだか難しいです・・・・・・・」
「まあ、一回パッと聞いただけじゃ分からないよねぇー」
だんだん頭がこんがらがってきました。
いとこと言うのは当たらずとも遠からずくらいですかね。
「さて、私の伝えたかったことはもう全部言っちゃったんだけど、君たちからは何かあるかな?無いんだったら私、早く遊びに行きたいんだけれども!」
途端にソワソワし始めたアリスさん。
あなたは子供ですか・・・・・・・・・。
皐月と花恋さんが特に無いと言うと、歓喜の声を上げてどこに行こうかなぁー、と瞳を閉じて考え始めた。
魔法を使ってる気配があるので、遠視の魔法で楽しそうなところを探しているのかな?
「・・・・・・・・あらあらぁ、咲夜くんも隅に置けないわねぇ」
アリスさんがニマニマした口元を抑えながら言ったこの言葉に私はすぐに食い付いた。
「アリスさん、どういうことですか!?」
「私もちょっと気になる・・・・・・・」
パチッと片方のまぶたを開けたアリスさんは、意地悪そうに笑って人差し指を立てる。
「咲夜くんがぁ、美雨ちゃんに告白されてるのよぉー」
「んなっ・・・・・・・・!?」
「あらー、もうそこまで行ったんだー」
「ちょっと花恋さん何呑気に言ってるんですか!先越されちゃいましたよ!?皐月と花恋さんはまだ告白してないのに!」
「むぅ、まあたしかにそれはそうだけど・・・・・・・・」
「ほら、行きますよ!こうなったら突撃あるのみです!」
「あっ!?待ってそこ引っ張らないでぇ!」
「アリスさん教えてくれてありがとうございます!皐月たち行ってきます!」
「頑張ってねぇー」
ヒラヒラ手を振るアリスさんに別れを告げ、皐月が転移魔法を唱えると視界が白く染め上げられた。




