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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
二人の転校生

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時には休みも必要





ベッドでスースーと寝息を立てている皐月を見て、俺は安堵のため息を漏らす。

どうにか落ち着いたみたいだね。

あの後、連絡を受けた花恋がすぐに"ユグドラシル"所属の魔法医を連れてきてくれて、彼女の診察の結果、皐月は"魔風病(まふうびょう)"にかかっていることが分かった。

魔風病とは、外部や内部の()()()()()によって起こる風邪の上位互換的な病気で、症状としては急な高熱や目眩、頭痛、呼吸困難、倦怠感などがあり、ほとんど前例はないが最悪の場合は死に至ることもあるらしい。

普通魔法抵抗の高い人はかからないらしいんだけど、今回は皐月が弱っていて、抵抗力が落ちていたから発病してしまったようだ。

魔法医さんによると、今回は幸いなことに早い段階で治療が済んだから、このまま寝ていれば徐々に回復していって数日で完治する、とのこと。

今は花恋が"ユグドラシル"に行って皐月の変わりをしてるし、その間は俺たちに任せてゆっくり休んでて・・・・・・・・って言って聞いてくれればいいけど、皐月が大人しく寝てるわけないよなぁ。

俺の予想では無理してでも行きそうな気がする。


「・・・・・・・・んぅ・・・・・・ぁ・・・・・れ・・・・・・・?」


重たい(まぶた)をゆっくりと開いた皐月はしばらくぼーっとした様子で天井を見つめていたが、徐々に意識が戻ってきたのか、突然はっとして勢いよく上半身を起こす。

一瞬で現状を理解したらしく、焦燥に駆られた表情でベッドから降りパジャマのままドアへ向かうが、まだ万全ではないようで数歩歩いてへたり込んでしまった。


「はいはーい、ストップストーップ。病人は大人しく寝てましょうねー」


立ち上がれずにいる皐月に肩を貸してベッドに運ぼうとすると、しゃがんだ俺の胸元を皐月が弱々しく掴み、絞り出したような声で。


「・・・・・・・行かせてください。皐月は、大丈夫ですから・・・・・・・・」

「だーめ。一人じゃほとんど歩けないくらいなんだから、仕事はちゃんと休んで体調を整えてからにしよーね」

「あっ・・・・・・・・・」


へたり込んだまま微動だにしない皐月を問答無用でお姫様抱っこして、そっとベッドに寝かせる。

・・・・・・・・持ち上げてみてビックリしたんだけど、皐月めっちゃ軽い。

身長はあんまり俺と変わらないと思うのに、女の子ってみんなこんな感じなのかな。

もし栄養失調とかだったら笑えんぞ・・・・・・・。

俺が見ていた限りでは食事はちゃんとしていたからそんなことは無いはずだけども、どうしても心配になっちゃうんだよね。


「なんで皐月はさ、こう・・・・・・責任感っていうか、そうまでして自分のことより仕事を、人助けを優先するのさ」


ずっと気になってたんだけど、なぜ皐月は魔風病にかかっても(なお)、あそこまで他人を助けることに固執していたのだろうか。

皐月の様子を見てると、なーんか訳がありそうなんだよなぁ。


「・・・・・・・皐月が、力を持っているからです。生まれつき人の何倍もの魔力を持っていたからこそ、ただ傍観しているんじゃなくて、その恵まれた力を人助けのために使いたい。みんなが躓く困難さえも、皐月なら飛び越えられるから。確かに辛いですけど、皐月さえ我慢すればもっともっとたくさんの人を助けられるんです。皐月一人なんかより、困っている大勢の人たちの方がよっぽど大切です」

「そっか・・・・・・・」


うーん、あれは皐月なりに色々考えての事だったんだな。

今まで会った人の中で、最上位にランクインするくらいめっちゃ良い人じゃん。

でもなぁ・・・・・・・・。

このままにしてるといつか歯止めが効かなくなって、ほんとに取り返しのつかない所まで行ってしまいそうだ。

そんなの嫌だし、これ以上皐月には無理をして欲しくない。

ったく、もっと自分の体にも気を使えっての。

ジト目になりながら皐月の額にデコピンをする。


「あたっ!?」


パチーンッと気持ちいいくらい良い音がした。

頭の上に"!?"マークを浮かべ、何が何だか分からない様子でデコピンされた所を押さえている皐月。

そんな彼女を見ながら俺は自分の思ったことを口にする。


「皐月の考え方はわかったよ。たしかに人一倍力があって、それを他の人のために役立てようって思いはすごい。でもさ、何もそこまでしなくてもいいんじゃないかな。皐月は力を持つ人である以前に、一人の女の子でもあるんだから、もっと俺たちに頼ったり甘えたりしてくれていいんだ」

「でも・・・・・・・・・・」

「皐月が自分を犠牲にしなきゃいけない理由なんてどこにもない。花恋や"ユグドラシル"の人たちも、もちろん俺だって、皐月には元気に笑っていて欲しいんだ。きっと、今まで皐月が助けてきた人達だってそう思ってるはずだよ?」

「・・・・・・・・・いいんですか?皐月が甘えてしまっても、頼ってしまってもいいんですか?」


俺を見つめる皐月の頬を涙が伝ってぽたぽたと落ち、シーツを濡らす。


「いいに決まってるよ。むしろ一人で全部背負われる方が心配になっちゃう」


少し躊躇いつつ、最後の一押(ひとお)しとして皐月の頭を優しく撫でる。


「よしよしよーし。今まで一人で頑張ってきた分、これからはみんなで頑張ろーな。でもとりあえず今日は疲れを取るために休もっか。おつかれさん」

「うぅぅ・・・・・・うわあぁんっ・・・・・・!」


俺の胸に飛び込んで(せき)を切ったように泣きじゃくる皐月が落ち着くまで、俺はずっと彼女の頭を撫で続けた。





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