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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
三章 最初の依頼

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六百年前の少女(2)



遅くなってしまいすみません!




「ぐぅ・・・・・・・・!」


一瞬暗転しかけた意識を(すんで)の所で手繰り寄せ、両膝を地面につけて肩で荒い息をする。

なんという凄まじき威力の攻撃か・・・・・・・。

無数にある魔法の中でも、"竜"の名を含む魔法の火力は段違いで高く、"広範囲殲滅魔法"などと言われたりもするほどだ。

しかしその分、発動のための難易度も極端に高く、とんでもない魔力量が必要な上に、竜族の最上位に位置する古竜(エンシェント)に認められなければ使うことが出来ないらしい。

世界に使用できる者が五人居るかどうかで、一時期は幻の魔法とまで囁かれていた。

それほどの大魔法を軽々と撃ち、まるで何事も無かったかのようにケロリとしているとは、底知れぬでも足りぬ真の化け物だ・・・・・・・・!


「化け物だなんてひどいなー、もう」

『貴様が化け物でなくては、一体どんな奴が化け物になるのだ』


金棒を杖のようにして支えながら立ち上がり、正面に居る少女の瞳を見据える。

動かす度に体は軋み悲鳴をあげるが、自然と笑みがこぼれた。

久々の圧倒的強者との戦い。

これこそ我が求めていたもの、この戦いの中でこそ我はより高みへと登ることが出来る。

しかし、残り魔力量は微々たるもので、これで放てる魔法など高がしれているだろう。

"超魔十芒(デモンカグラ・)暴風星(テンペスト)"でさえ傷一つつけられぬほどの防御力を持つ少女には、明らかに火力不足だ。

ならば・・・・・・・・。


「えっ、ちょっと君!今の状態で()()使うとすっごく危ないよ!?」


どうやら心を読んだらしい少女が、この先起こることを想像して慌てふためいている。

その理由が畏怖ではなく、心配なのが少し残念だがな。

漆黒の金棒を頭上に掲げて魔力を流すと、段々と意識が研ぎ澄まされていくのを感じる。


『"凶魔化"』


瞬間、金棒の形状がより禍々しいものに変化し、溢れ出た同色の漆黒が我の中に入り込む。

闇属性禁忌魔法の一つ、"凶魔化"は自身の限界を超えた魔力を手に入れる代わりに、理性と寿命を代償として払うため、使用者はその命の灯火が消えるまで、ただ本能の赴くまま破壊の限りを尽くす。

む、一応言っておくが、我は禁忌魔法など代償を払わずとも使うことが出来るぞ。

そもそも代償が必要なのは使用者の実力が足りていないだけで、それをねじ伏せるほどの力があれば代償無しで使うことも容易い。

しかし、たとえ代償無しで使えたとしても危険だからこそ禁忌魔法と言われる訳で、例えば"凶魔化"ならば、限界を超えた力なんぞ自身をも滅ぼしかねんし、体内の魔力力場をぐちゃぐちゃにするため、長く使えば最悪の場合、後遺症も残ってしまうのだ。

抵抗力が弱くなっている魔力枯渇に近い状態で使ったのならば尚更、長期戦は避けたい。

制限時間ありの大幅パワーアップなのだから、悠長にしている場合ではないな。

瞬きする間に少女の背後に回り込み、居合斬りのような動作で金棒を振るう。

流石の反応速度でそれを受けた少女だったが、単純な力比べでは我に部があるのか、もう先程までの余裕の表情は消えていた。


「【フレアボム】!」


至近距離で炎が爆裂し、強制的に距離を取らされたがすぐに地を駆け接近すると、頭上の黒雷を纏わせた金棒を思いっきり振り下ろす。


「んぅぅっ・・・・・・・・・・・!」


触れた瞬間感電してほんの僅かばかり動きを阻害した隙に、もう片方の拳をがら空きの胴に打ち込むと、ドンッと重い感触がして少女の華奢な身体が宙に浮かび上がる。

む、この感覚は、重ねられた結界を何枚か破壊しただけだな。

追い打ちに回し蹴りをするが少女は体をひねってそれを躱し、お返しとばかりに我の胴目掛けてレイピアを振るう。

回し蹴りをした勢いのまま一回転して持ち替えた金棒でそれを受けると、ぶつかった衝撃だけで地面は深く陥没し大きなクレーターを作り出した。

一旦距離を取ってからあちこちを走り回り、撹乱しながら時折攻撃を加えていく。

・・・・・・・・・ぬぅ、ここまでしてもなお攻撃を的確に捌かれ、あと一歩決定打に欠けるとはな。

仕方あるまい。

残る魔力を全て絞り尽くしてほんの数秒だけ今まで以上のスピードを出し、ついに少女の腕を軽く斬り裂く。


『はあぁぁぁぁっ!!』


それによって少女がグラリと体勢を崩した瞬間、地が砕けるほどの力で踏み込み、我の全てを乗せた最後の一撃を繰り出す。

漆黒の金棒による神速の突き。

一筋の魔の流星は漆黒の軌跡を描き少女を貫くかと思われた寸前、ピタリと動きを止められてしまった。

少女の細い指一本によって。


『な・・・・・に・・・・・・・?』


絶句する他なかった。

コンマ一秒ほどの間に少女の魔力量がケタ違いに跳ね上がり、その総量は深淵としか言えぬほど深まってしまっている。

使用している割合的には最初と同じく三、四割以下ほどだが、それだけでも"凶魔化"した我でさえ手も足も出ない。


「あー、ごめんね?実は君に会ってからさっきまで、探し物を見つけるために世界中に魔眼()を向けたり召喚獣を出したりしてたの。で、その状態じゃさすがにやばそうだったから、それに使ってたリソースの半分をこっちに戻してきたんだ」


体をおおっていた漆黒が霧散し、我は倒れるように地に伏せる。

・・・・・・・世界中に魔眼()を向けるという神の御業(みわざ)と並行で、あれほどの力が使えると言うのか。

つくづく化け物な奴め。


「もー、だからやめなって言ったじゃん!魂がボロボロだよ!?結構重症だから、後数百年はまともに動けないと思う」


我を覗き込んで顔を顰めている。

なるほど、たしかに思うように体が動かんな。

まあ良かろう。

この戦いで我は満足したから、それぐらいの年月は大人しく過ごしていようではないか。

回復に専念すればもう少し早く治るかもしれんしな。


「いや、何一人で決めてんのさ。反省の色目無しの君は、問答無用で封印!」


少女がばらまいたお札が魔法陣を描き、我を中心に大規模な封印が構築されていく。

現代のオタクが見たならば、どっかの弾幕勝負して異変解決してる巫女さんかな?、と言ったであろう。

お、おい!我が動けないのを良いことに、それは卑怯だぞ!


「自業自得だよ?もう、数百年間大人しく反省してなさーーーい!」


構築される速度が上がり、あと数秒で完成して外界と遮断されてしまいそうだ。

自業自得に関してはぐうの音も出ぬが、些か強引すぎるだろう!?


『せ、せめて名を名乗れ!自身が負けた者の名ぐらい知っておきたい!』

「・・・・・・・・・アリステラ。みんなはアリスって呼んでる」

『そうか、アリステラと言うのだな。その名、我の胸の中に刻み込もう』

「まったく、そんなことより回復に専念しなよ?君だって出来るだけ早く治したいでしょ。・・・・・・・・それじゃ、おやすみ~」




呆れ顔なアリスのその言葉を最後に、結界が完成し我は外界と切り離された。







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