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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
二章 何でも屋"夜桜"へ

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待ち合わせ場所へ




「そういえば、どこ行くの?」


藤沢駅(ふじさわえき)に向かって街道を歩きながら、俺は右腕に抱きつく花恋(かれん)にそう聞く。

腕を抱かれたまま有無(うむ)を言わさず連れ出された俺はもちろん、花恋と何かを話していた朱華(あすか)さえどこに行くか何も知らされていないのだ。

家出る前にちゃんと行先だけでも聞いとけば良かったなぁ。

このままどっかに連れ去られたりしないだろうね・・・・・・・・・・。


「今日は辻堂(つじどう)の駅前にある、ショッピングモールに行こうと思ってるよー。もう一人もそこで合流する予定なんだー」


(いま)だに姿の見えない同期さんは、ちょっとした用事があって、先に辻堂に行って俺たちを待っているらしい。

それにしても、あそこ行くのか。

辻堂の駅の近くにある大型ショッピングモール。

とても広いモール内にはオシャレお店や飲食店も充実(じゅうじつ)し、映画館やスーパー、雑貨店(ざっかてん)等だけでなく、冬には綺麗(きれい)なライトアップもあるらしい。

あそこって俺の場合映画()る時くらいしか行ったことないから、(くわ)しく何があるとかは分かんないんだよね。


「お兄ちゃんの同期さんって、どう言う人なんですか?」


今度は俺の左手に抱きつく朱華が首を(かし)げながら口を開く。

たしかにそうだね、同期がいるってことは何回も聞いてたけど、そう言えばどんな子かは知らないな。

気になる・・・・・・・・・・んだけど、それよりも今はこっちにツッコんで良い?

何で朱華まで俺の腕に抱きついてんのかな?

・・・・・・・・あれ、スルーですか二人共。


「んと、一言で言うとすごく元気な子かな。どんなことにも全力投球(ぜんりょくとうきゅう)みたいな。そのせいでちょっとバカっぽく見られちゃうんだけど、実際はそんなことなくて、かなり優秀(ゆうしゅう)な子なんだー」


ふむ、元気っ子か・・・・・・。

陰キャかつオタクな俺からするとちょっと近寄り(がた)い存在なのだが、同じ職場で働く以上頑張って仲良くならなければ。


「へー。やる時はやる、はしゃぐ時ははしゃぐ。そんな感じで、メリハリのつけられる人なんですね」

「・・・・・・うんまあ、そうなんだけどねー・・・・・・」


感心したように(うなず)く朱華を見て、なぜか花恋はまさに"ザ・苦笑い"みたいな顔をする。

?これだけ聞くとめっちゃ良い人っぽいけど、もしかして他にも何かあんの?

花恋はどこか言い(よど)む様子を見せた後。


「・・・・・・・さっき、元気な子って言ったよね。なんて言うか、その・・・・・元気すぎるんだー」

「元気すぎる?どう言うことですか?」

「まあ、会えば分かると思うよー」


むぅ、そこで話を切られるとその先が凄く気になるんだが。

朱華も同じだったようで何回か質問していたが、着いてからのお楽しみ、と(ふく)み笑いと共にそう言われ、結果的に余計に気になるハメになってしまった。

やっぱ着くまでおあずけですか・・・・・・・まぁここで深く追及(ついきゅう)する意味もないから、素直に諦めるけどさ。

どうせ着いたら分かることだしね。

元気っ子についての追及を辞めて雑談をしながら歩くこと数十分。

駅の近くにある芝生(しばふ)の広場に着いた。


「よし、さっきは普通にスルーしてたけど、そろそろ腕離してもらっても?さすがに人がいっぱいいる駅でこれは恥ずかしいんだけど・・・・・・」

「「え?」」

「え?」


ちょっとちょっと、二人そろってなんですかその"こいつ何言ってんの?"みたいな顔は。

俺、変なこと言ってないよね!?

ここまで文句(もんく)は言ってなかったけど、結構恥ずかしかったんだからね?

まだ微妙(びみょう)な時間帯だからいつもより人は少ないものの、それでも駅に近いためそこそこ人はいる。

すれ違うたびに、生温(なまあたた)かい視線を送られる俺の気持ちを考えてみ?


「えー・・・・・・・。朱華ちゃん、どうする?」

「順番ことかはどうですか?」

「時間は少なくなっちゃうけど、そうしよっか。じゃないと咲夜、恥ずかしくてデートを楽しめないもんねー」

「あ、俺と腕を組むこと自体はやめないのね?」

「まったく、お兄ちゃんはわがままですね!」

「ねー」


え、これって俺が悪いの?

て言うか君たちは恥ずかしくないんか・・・・・・。

釈然(しゃくぜん)としない俺の前でジャンケンが始まり、数回のあいこの後朱華が勝った。


「やったー!」

「あらら、負けちゃったー・・・・・・・」


嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる朱華と、ガックリ肩を落とす花恋。

対照的(たいしょうてき)な二人のテンションの差がすごい。


「じゃあ、二十分で交代だよー」

「はい!」


そう言うや(いな)や、朱華はジャンケンのために離していた腕をぎゅっと俺の腕に(から)めつける。

なんかさっきより近くね!?

なにやら甘い匂いがするし、腕に柔らかいものが当たってる・・・・・・・・・・・・・って、なに考えてんだ俺!

い、妹だぞ!?

あっ、血が繋がってないから義妹(ぎまい)か・・・・・・・っていや、そうじゃなくて。

動揺(どうよう)して思考(しこう)が変な方に行ってる。


「あ、朱華、もうちょっと離れて・・・・・・・」

「えー、いいじゃん、せっかくのデートなんだよ?」

「いやでも・・・・・・・・」

「あ。もしかしてお兄ちゃん、今すっごくドキドキしてる?」

「・・・・・・・・・っ・・・・・・!ちょ、ちょっと・・・なに言ってるか・・・・・・・・。ほ、ほら、同期さんが待ってるから早く行こうよ・・・・・・・・!」


俺の気持ちを見透(みすか)かしたような朱華の言葉に、別の意味でドキッとしてしまう。

ええそうですよ、相手は妹なのにちょっとドキってしちゃいましたよ!

さらに言うと、さっきのはにかんでたのがグッと来たかな〜・・・・・・・・・はぁ、これじゃお兄ちゃん失格だぁ!

そんな中またもや突然、抱かれていた腕がさらにぎゅっとされて、当たる感触やら匂いがやばいくらいに増した。

(くだ)()りそうになる理性(りせい)をなんとか抑えて声を絞り出した俺は、クスクス笑う二人を引き連れて駅に入り、JR線の改札を抜けて階段を降りる。

時刻表を見ると、辻堂駅に止まる下り線は数分前に一本出ていて、次は五分後にくる熱海(あたみ)行きだった。


「・・・・・・花恋、ごめん」

「ごめんなさい!」

「べつに大丈夫だよー。あの子には大まかな時間しか伝えてないし、そんなに大きく遅れるわけじゃないしねー」


なんやかんやで十分くらい広場で騒いでいたので、一本乗り過ごしてしまった。

謝りながら待っていると、ホームに下りの電車が入ってきた。

それに乗り、揺られること約五分。

辻堂駅に着いたので電車を降り、ごった返すエスカレーターを登って改札を出る。


「あっちの階段を降りた先辺りで待ち合わせしてるよー」


花恋が指差したのは、ショッピングモールに繋がる道の途中にある階段。

そこを下りるとちょっとした広場になっていて、水の吹き出す場所だったり、謎の冬にライトアップされる四角いエリアがあったりする。

あれって休憩用(きゅうけいよう)の場所なのかな・・・・・・・・。


「じゃあ行こうか」

「ちょっと待って咲夜。朱華ちゃん、交代の時間だよー」

「うぅ、名残惜(なごりお)しいですけど、約束ですから・・・・・」


よっしゃあ耐えきってやったぜ!

電車の密着状態(みっちゃくじょうたい)でどれだけ苦労したことか・・・・・・・時々揺れてもっとすごいことになってたし。

少し残念だとかは思ってない。

思ってないったら思ってない。

そう考えていたのもつかの間、心底残念そうに離れていく朱華と入れ替わりに、嬉々(きき)として俺の腕に抱きついた花恋は、ぎゅっと自分の腕に力を込めた。

すると、朱華とはまた違った甘い匂いや柔らかい感触が、俺の理性をガリガリと容赦なく削る。

花恋の方が、大きいんだな・・・・・・・。

何とは言わないけど。


「お兄ちゃん、今失礼なこと考えてたでしょ!」

「いえ、べつに?」


ふいっと視線を逸らしながら答える。

やべぇなぜバレた。

なんか不思議(ふしぎ)と女子ってこういうの敏感(びんかん)察知(さっち)するよね。


「行こっかー」

「あ、はい!」

「あいよー」


(つと)めて平静(へいせい)(よそお)いながら返事をして歩き出す。

ちなみに内心は超ドキドキしております。

花恋は朱華と違って妹じゃなく単に女の子としてなので、何の邪魔(じゃま)も無く直球で響いてくる。

ぁ゛ー、落ち着け俺、落ち着け。

・・・・・・・・・いや、これは落ち着けって言う方が無理だろ。

うん、無理です!

内心荒れまくってるまま駅から出て左に曲がり、階段に差し掛かる。

そして、少し降りたところで。



「あっ!花恋さーーん!」



どこからともなく、そんな大きな声が聞こえてきた。


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