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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
文化祭は美人教師と共に

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海辺祭り(3)





海辺祭り三日目、午前の部。




「パパー!はやくはやく〜、もう始まっちゃうの!」

「はいよ!ほら、アイラ頑張れ!体育館は目の前だぞ!」

「・・・・・・も、むり・・・・。無念・・・・・・」

「ちょ、背中によじ登る元気あるんだったら自分で走ってよ!?」

「あはは、相変(あいか)わらずアイラは面倒くさがり屋だね」

「そうね〜。まぁ、少し甘えん坊な所もあるみたいだけど」

「・・・・・なんの事だか。それよりさくにぃ、スピード落ちてるけど大丈夫?」

「一体誰のせいだと思ってるんですかねぇ!?」



体力の限界と言っておきながら、ガバッ!と走る俺の背中に飛び乗り、いつもの定位置に移動したアイラはむふ〜、と満足気(まんぞくげ)に鼻息を漏らす。

そんな事する体力があるなら、目の前にある体育館まで走れるだろうに・・・・・・・。

ずっしりと背中にのしかかるアイラのせいで、馬鹿みたいな勢いで体力が削られていく。

かと言って振り落とす訳にもいかないので、ぜーぜー息を荒らげながらも頑張って歩を進める。

くっ、いくらアイラが小柄だとは言え、人一人背負いながら走るのってマジで辛い!

ぜひアイラには体力をつけて、このくらいの距離なら走れるようになってもらわないと困る。

毎回こうしておんぶしてたら俺が大変だ・・・・・・・。

絶対今度、アイラ体力増量計画を実行してやる!

ヒィヒィ悲鳴を上げて何とか目的地である体育館の入口にたどり着き、先に着いていたスゥと朱華(あすか)美雨(みう)とともに中へ入る。


「ま、間に合ったぁ〜・・・・・・」

「段差があるし、ここからでも見れそうで良かったわ〜」

「パパ、大丈夫なの?」

「着地っ!」

「ぜー・・・・ぜー・・・・・これ完全に・・・運動部のトレーニング並の、重労働だったろ・・・・・・・」


キメ顔で見事な着地を披露(ひろう)するアイラの横で、汗だくで膝に手を着き、荒い呼吸を繰り返す俺。

ここは涼しい風に当たるか盛大に寝っ転がって心行くまで息を整えたいところだが、この満員の体育館ではどちらも叶わない。

それどころか充満(じゅうまん)する熱気に当てられると熱中症になることすら有り得そうなので、まだ風通しの良い出入口付近で水分補給だ。

うわっ・・・・・汗でワイシャツがベタベタになってる。

朝イチでこれはきついなぁ・・・・・。


「ほれ〜。お兄ちゃん、涼しい?」

「あ〜、涼しい涼しい〜。生き返るぅ〜」


朱華が持っていたうちわでパタパタと扇いでくれる。

危うく溶けてスライムになりかけていた体が一瞬で元通りだ。


『皆さん、大変長らくお待たせしましたー!ただ今準備が整いましたので、これより白峰(しらみね)高等学校ダンス部が誇る美少女達による、ライブステージの開演です!!』


そんな放送と共に閉ざされた幕が開き、派手に打ち上げられた白煙(はくえん)の向こうから五人の少女達が姿を現した。

普通なら開会式を終えた体育館は休憩スペースになるので、混んでいてもここまで満員になることはまず無い。

それなのにこれだけ人がいる理由は、三日目の今日だけ行われるダンス部の出し物で使われるからだ。

それがこのライブステージ。

毎年恒例(こうれい)で開催の決まっているこのライブは、ダンス部の中でも美少女が集められたグループが出演するため、その人気っぷりは想像を絶するほど。

"海辺祭り"の代表演目と言っても過言ではないはずだ。

全員が舞台上にそろうと、左右とステージ上にセットされた音響機器(おんきょうきき)からアップテンポでリズム感のある曲が流れ出す。

かなりメジャーな曲だけあり、イントロの時点でリズムに合わせて手拍子する人が多数居た。

ノリに乗ったアイドル衣装の少女達から奏でられる歌声は透き通っていて、不思議なくらいスルッと耳の中に入って離れない。


「あっ、桃花(とうか)お姉ちゃん見つけたの!」

音夢(ねむ)もみっけ」

「すごい・・・・・なんて言うか、桃花ちゃん輝いてるね・・・・」

「くっ、やっぱり若いっていいね〜!これはお姉さん、流石にもう恥ずかしくて出来ないよ〜!」

「むぅ・・・・敵ながらやりおる・・・・」


そして遠くだから分かりずらかったが、舞台上で踊って歌っている少女達の中に、知った顔が二人ほどいらっしゃった。

実は今回俺達がこれを見に来た理由でもあるのだが、なんとこのステージ、あの桃花と音夢が出ているのだ。

白峰高校の三大女神の一人である桃花と、美少女に定評のある音夢が同時出演するとあっちゃぁ〜、見ない訳には行かないよね!

本当なら三日目の今日はバチバチに委員会の仕事入ってたんだけど、なんと委員長の(はか)らいで丸々一日休みになったからこうして見に来れた。

委員長(いわ)く、一日目と二日目にいっぱい働いてくれたからとの事。

ありがとうございます委員長、一生着いていきます!


『"他でもない、貴方が好きなの"♪』


「「「「───────────っ!!!」」」」


決めポーズと共にもう一度大きな五色の煙が上がり、観客席からは声にならない声援がもはや絶叫となって体育館中に響き渡った。



         ◇◆◇◆◇◆



「やー、やっぱりライブものすごい盛り上がってたね〜」

「ね。桃花ちゃん可愛かったなぁ・・・・・んっ、このアイス美味しい!お兄ちゃん、一口いる?」

「いるいる」


朱華が差し出したスプーンをパクリと(くわ)えると、口の中に(ほの)かな甘さとバニラの匂いが冷気と共に溶け込んできた。

くぅ、火照(ほて)った体に染み渡るぅ!

ライブステージ(体育館)で得た熱気と残暑に悩まされていたけど、すぐ目の前にアイスクリームの出店があって助かった。

計算されたかのような場所に・・・・・・と言うかまぁ、計算してだろう。

こんな絶妙な位置にアイスクリーム屋さんがあれば、誰だって買いに来たくなるはず。

実際に、体育館から流れ出た列はそのままアイスクリーム屋さんの前に並ぶ列に繋がっている。

例に漏れず俺達もそこでアイスを買い、近くのちょうど木陰(こかげ)になったベンチで美味しく頂いているわけだ。

今の俺達には、ただのアイスもエリクサー並の回復薬に成りうるからね〜・・・・・・。

そりゃこんだけ混むわ。


「ほい、朱華も俺の食べる?」

「うん!・・・・はむっ・・・・・んっ、マンゴー味はさすが王道。美味しいね!」

「あーーーーっ!朱華お姉ちゃんずるいの!」

「ぐえっ!?」


突然声のした方から結構な勢いのタックルを喰らい、危うくアイスを落としそうになってしまう。

犯人は言わずもがなスゥ。

美雨達と一緒にアイスを買いに行ってたはずだけど、手に持ってるってことは買い終わったのかな?

犯人ことスゥは当然のように俺の太ももにちょこんと座ると、まるで餌を待つ(ひな)のように俺の方を向いてあっ、と口を開いた。

・・・・・これは私にもちょうだい、と言う事だろうか。


「分かった分かった。はい、あ〜ん」

「あ〜ん、なの・・・・・・ん〜、おいしいの!」


はむっ、とスプーンを咥えたスゥが、自分の柔らかいほっぺを押さえて全身で美味しさを表現する。

その様子は可愛らしい限りだ。


「ん、やっぱり地上のスイーツは美味(びみ)。いくらでも食べられる」

「あはは・・・・お腹壊さないようにね〜?」


お、アイラも美雨も買い終わったみたいだね・・・・・・って!

アイラ、何そのアイスの量!?

美雨と共に戻ってきたアイラが持っていたアイスの数は、なんと五個。

これを一人で食べるつもりなのか・・・・・・・。


「大丈夫、スイーツは別腹どころか無限に行けるから」

「それは知ってる」


女性特有のスイーツは別腹スタイルね。

ただでさえ食欲旺盛(しょくよくおうせい)なアイラともなると、その別腹の量はありえないくらい大きい。

いやほんと、腹八分目とは?ってなるくらい大きい。

だけど俺達が心配してるのはそこじゃなくて・・・・・・。

それに、そんだけ食べて運動しないと太る気が。

まぁさすがに女の子に直接それを言うほどデリカシー無いわけじゃないけども。

とりあえずすでにほとんど食べ終えていた俺と朱華は席を変わる。

やがて美雨とスゥも食べ終わり、俺達の五倍の量のアイスをペロリと平らげたアイラが一言。


「頭痛い・・・・・・」

「だーから言ったのに。ほら、今はおんぶしてあげるから」

「うぅ・・・・さくにぃ大好き。愛してる・・・・」

「もしかして割と元気なのか・・・・?」


頭が痛い割にはギュッと力強くしがみついて、俺の背中を堪能(たんのう)してる気がするんですが。

あっ、こら!匂い嗅がないの!


「だが断る。さくにぃの匂いは特効薬。これは必要なこと」

「あ、なるほど〜。それなら全然良いよ・・・・・・とはならないからね?」


この汗まみれの状態で匂いを嗅がれるとか、恥ずかしい以外の何ものでも無い。

普通ならここで急に腕を離して落とす所だが、アイラはまだ頭が痛いようなのでそれはやめておこう。

・・・・・・何気に背負ってから元気そうなのは見なかったことにしたい。


「さて皆、次はどこに─────────ってあれ、朱華とスゥは?」

「あそこよ〜。射的屋の前に居るわ」

「あほんとだ。どうしたんだろ」


特にこの後の予定は決めてなかったので、次はどこに行こうかと皆に聞こうとすると、ふと朱華とスゥが居ないことに気がついた。

美雨に言われて見ると、アイスクリーム屋さんの少し先にある射的屋の前で、二人が何やら心を奪われたように景品を見つめていた。

びっくりしたぁ、てっきり迷子になっちゃったのかと。

いくら俺と朱華がスマホを持っているとはいえ、心配なのは心配だしね。


「二人とも、何か欲しいのあった?」

「あ、うん・・・・あのクマの人形が可愛いなぁ、って」

「スゥは?」

「クマさんの隣のキツネさんなの!」

「おっし任せといて、パパ兼お兄ちゃんが取ってしんぜよう」

「えっ!?お兄ちゃんいいよ、あー言うのはだいたい取れないから!」

「まーまー、見てなって」

「でも・・・・・・」


朱華が欲しがっているのは、眠たげな目をしたどこか憎めない雰囲気(ふんいき)のクマの人形。

そしてスゥが指さしたのは、その横でなんとも言えない表情をした可愛らしいキツネの人形。

どちらもデフォルメされた二頭身くらいの人形だ。

今の所お客さんは少ないので、狙うなら今がベストだろう。

申し訳なさそうにする朱華をなんとか説得して店員さんにお金を払い、一回分の弾六個と銃を受け取って人形達の右斜め辺りに立つ。

ふっふっふっ、今回は()()()()()()()()で景品を取りに行くぜぇ!

何せ娘と妹のためだからね!

少し高めの位置にあった台に両肘を着いて、まずクマの人形に狙いを定める。

狙うは人形の耳ら辺かな・・・・・・。

パンッ!という炸裂音(さくれつおん)と共に発射された木製のコルクが狙い通りクマの耳に命中し、そのもふもふした体が大きく右斜めに傾いた。


「よし、次は反対側に・・・・・」


もう一度コルクを銃に詰め、今度は左耳を狙って引き金を引く。

心地良い音と振動が腕を震わせ、見事クマの人形は最上段から落下してブルーシートの上に着地した。

とりあえず一つゲット!

続いて同じ要領(ようりょう)でキツネの人形も取り、余った二つのコルクでキャラメルとスナック菓子を落として終了。

店員さんから景品を受け取って見ていた皆の所に帰ると、朱華と美雨が唖然(あぜん)とした表情で俺の事を見つめていた。


「はい、これあげる。美雨とアイラはお菓子だけどごめんね」

「わーっ!パパありがとうなの!」

「ん、キャラメル貰う」


射的のことをあまり知らない大精霊の二人は、すぐさまキツネの人形とキャラメルを受け取って大はしゃぎしている。

が、朱華と美雨は今目の前で起きた事が信じられないご様子。


「朱華もほら、クマの人形欲しかったんでしょ?」

「あ、うん、ありがとう・・・・・・じゃなくて!お兄ちゃん、今の何!?」

「そ、そうだよ〜!たった二発でお人形落としちゃうなんて!」

「ふっ、関東のゴ〇ゴ13とは俺のことよ」


中学生の時はお祭りの度に射的屋さんを荒らしまくったせいで、それ関連のお店のブラックリストに載ってしまったらしい。

なのでそれ以降かなり自重していたのだが、今回はそれを解禁して、本気と書いてマジに取りに行った。

成果はこの通り、六個の弾で四つの景品が取れた。


「色々とツッコミどころが多すぎる・・・・・・」

「まぁ良いじゃない。せっかく咲夜(さくや)君が取ってくれたんだから、大事にしないとね〜」

「そうですね・・・・・ありがとう、お兄ちゃん!」

「どういたしまして」


嬉しそうに人形を抱きしめながら、最大級の笑顔でお礼を言ってくれた朱華。

うん、これだけで頑張ったかいがあるってもんよ!


「ふむふむ、妹のためにここまでやるとは・・・・・兄貴の鏡だねぇ」

「わっ、バルス!いつの間に!?」


声がして横を向くと、いつの間にか隣で肩をすくめるバルスこと(すばる)が居た。

バルス、君は一体どこから湧いて出たのさ・・・・・・・・。


「いやー、音夢のダンスを見に来てたんだけどね。そこで見つけちゃった訳よ、子連れの咲夜を」

「・・・・・・一応聞いておくけど、何しに来たの?」

「ん?茶化(ちゃか)しに決まってんじゃん」


あっさり断言しおった・・・・・・。

バルスは俺から離れ、美雨と手を繋ぎながら人形を持ってはしゃいでるスゥの前でしゃがみ込むと。


「こんにちは、スゥちゃん。パパのお友達の彗だよ〜。よろしくね」

「パパのお友達さん、なの?」

「そそ。あ、美雨さんもお久しぶりです」

「久しぶり〜。彗君、元気そうだね〜」


この二人は去年まで特に共通点は無かったのだが、バルスが時々俺のバイト先に遊びに来るため、その流れで知り合った。

バルスは少しの間美雨やアイラと話すと、再びスゥに視線を戻す。


「スゥちゃん、パパは好き?」

「当たり前なの!パパ大好きなの!」

「アイラちゃんは?」

「好きに決まってる」

「おー、愛されてるね咲夜」

「まぁね・・・・・・」


正直言うと、嬉しいが死ぬほど恥ずかしい。

まさか友達の目の前でこんな事を言われるとは・・・・・。

そんな俺を知ってか知らずか、笑顔のまま両サイドに抱きついてくるアイラとスゥ。


「・・・・・・なるほど。ライバルは多いね、朱華ちゃん」

「そうなんですよ・・・・・。まぁでも、ちょっと進展もあったんです」

「へぇ、それは何より」


マイリトルシスターとバルスが何やらコソコソ話していたが、声が小さすぎて聞き取れなかった。


「あ、そう言えば気になってたんだけど、スゥちゃんって誰の子供なの?美雨さん?それとも朱華ちゃん?」

「ぶっ!?」


突然来た予想外の質問に思わず吹き出してしまう。

美雨はともかく、なんで選択肢に朱華が入ってるの!?

バルスはまだ俺と朱華が義兄妹で、しかも両思いな上に婚約者(仮)なのは知らないはず。

俺の疑問をよそに朱華と美雨は顔を見合せると、薄く微笑み合って俺とスゥ、アイラを左右からまとめて抱きしめ、



「「ナイショ♡」」


とだけ呟くのだった。




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