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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
月面戦争編

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月面戦争(5)



投稿が遅くなってしまってすみません(。>ㅅ<。)





ギャギャッ!っと金属がぶつかり合った時のような耳障(みみざわ)りな音が響き、続いて荒野(こうや)の一角に(まばゆ)い閃光が走る。


「はんっ、やっぱ強ぇなぁお前!」

「それはどうもっ!」


現在その場所で激しい戦闘(せんとう)を繰り広げているのは、"不思議(ふしぎ)(とう)"第一席アクチュエータと第一番隊隊長ルカ。

先程の甲高(かんたか)い音は、二人の武器である(するど)い爪(爪とは言っても指のものとは別で、指の付け根から真っ直ぐ生えている)と片手剣がぶつかり合った音だ。

二人は周囲の岩壁(いわかべ)やら大きな岩石やらを粉々(こなごな)粉砕(ふんさい)しながら荒野を駆け回る。

彼らの戦闘テリトリーには他に生物の姿は無い。

少しでもこの中に入るとすぐに巻き込まれて、無事に出ることが出来ないからだ。

アーマードスーツを着た兵士達はとっくに逃げている。

その代わりに、テリトリーの境界線(きょうかいせん)から少し離れた所に無人兵器(むじんへいき)大群(たいぐん)が押し寄せてはいるが、それすらも入ることなく立往生(たちおうじょう)

邪魔(じゃま)が入ることの無い二人だけの戦場だ。

地を踏み(くだ)く力強い踏み込みと共に両者が接近する。


「"ヘルクロー"!!」

虎月(こげつ)"!!」


黄金(おうごん)の虎を(まと)った剣が黒く染った爪ごとアクチュエータを喰らい、その胸に大きな牙の跡を刻み込む。

だがこの程度の傷は戦い好きの彼にはかすり傷も同然なようで、まったく気にしていない様子。

それどころか顔には笑みまでも浮かんでいるではないか。

(またた)く間に近距離での爪の連続攻撃。

全てを(さば)ききれず軽い傷を負うが、攻撃の手を緩めずさらにもう一太刀(ひとたち)斬撃をお見舞(みまい)する。


「ギア上げてくぞ!着いて来れるだろぉなぁ!?」


幾度(いくど)となく繰り返される激しい衝突の(すえ)、距離を取ったアクチュエータがそう叫び、一瞬で目の前から姿を消した。

・・・・・・・・・・・・速い。

速すぎて目で追えない。

ただ地を蹴る音がどこからともなく聞こえてくるだけで完全に見失ってしまった。

さすが(ひょう)の特徴を持っているだけあって、動きまで豹その物のようだ。


(どこだ・・・・・!?まさかこれ程速く動けるとは・・・・・・・今の僕ではスピードが完全に負けている!)


自分を(はる)かに超えた速度に警戒を高めたルカは、どこから来ても反応できるように力を抜いた構えで待ち受ける。

神経を研ぎ澄まし、彼が姿を見せるその時を─────────────殺気!

背後から肌を刺すような鋭い殺気を感じ取り、振り向きざまに逆袈裟斬(ぎゃくけさぎ)りを繰り出す。

回避できない完璧なタイミングだったはず。

だが実際は違った。

斜めに斬り上げた剣が(むな)しく(くう)を斬る。


(いない・・・・・!?)


「残念、こっちだ!」


すぐさま声のした正面を向くが、時すでに遅し。

もう目の前まで凶悪(きょうあく)な爪が接近していた。

やはり速すぎる。

後ろに残像(ざんぞう)を置き去るだけでなく、(はっ)した殺気までもが消える前に反対側に移動するなんて・・・・・・・。

反則級だ。

ただの兵士では何が起こったか分からないどころの話ではない。

ドゴォンッ!と巨大な土煙が巻き起こり、バク宙したアクチュエータがその中から飛び出してくる。

そのほおにはうっすらと斬り傷が。

近くにあった岩壁の上に着地すると、自身のほおを(ぬぐ)って楽しそうに口の端を曲げる。


「あの体勢から致命傷(ちめいしょう)を避けて、さらに反撃してくるのか!すげぇな!」


対して土煙を払って出できたルカの両腕と体には計五本の爪痕(つめあと)があり、破けた服の隙間から血が(したた)り落ちていた。

致命傷を避けたとは言っても、それなりに深手なのは変わらないらしい。


「今の僕じゃ、目で追うことすら出来ないのか・・・・・・・」

「まぁ俺はアドレータ様の軍の中でも最速だからな。・・・・・・とは言っても、諦める気はないんだろ?」

「当たり前だよ。だって僕だけ負けたら皆に顔が立たないじゃないか」


目を(つむ)って顔を伏せたルカは大きく息を吐き出し、再び吸い上げながらアクチュエータの方を見上げる。

すると、ズズッ!と彼の(ひたい)に黄金の幾何学模様(きかがくもよう)が浮かび上がり、(ひとみ)もそれに対応して金に染まった。

体から吹き上がる圧倒的(あっとうてき)な魔力。

その大きさは灰髪(はいはつ)では考えられない・・・・・・・いや、紫髪(しはつ)や水色の髪でも考えられないほど強大だ。

リナやアニに並ぶと言っても過言(かごん)ではない。

一体なぜ灰髪の彼が・・・・・。

理由は当然ながら額の幾何学模様。

あれは数年前ツクヨミがルカに教えた術で、本来はツクヨミと同化した者しか使えないもの。

だがいざと言う時に月の(たみ)(とりで)となるため、特別に与えられた術である。

未だに実践で使えるレベルではないが、出し惜しみして負けては元も子もないので今使うことにしたのだろう。


「はっ、そう来なくっちゃなぁ!!」

「はあぁぁぁぁぁっ!!」


一斉に真っ直ぐ踏み込み、ぶつかり合った衝撃波が(いかずち)となって四方に飛び散る。

さらに速度が増して二つの閃光となった二人はもはや一箇所に留まらず、月中を駆け回りながら幾度となく衝突を繰り返す。

彼らが通った跡は無人兵器(むじんへいき)やアーマードスーツの残骸(ざんがい)しか残らない。

ちなみになぜ月の民の軍勢にあまり損害が無いかと言うと、少し前に(ひそ)かにルカが連絡をしていたため、かなりの人数が里周辺の特殊結界(とくしゅけっかい)内に居るからだ。

もちろん外にもそれなりの人数が残っているので、巻き込まないように細心(さいしん)の注意を払っているが。

岩山が衝撃波が触れただけで豆腐(とうふ)のように砕け、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる。


「【カマイタチ】・月輪(げつりん)!」


生み出された二つの真空の刃が左右からアクチュエータに襲いかかる。

と同時に縦の半円を描きながら突っ込み、真上から思いっきり片手剣を振り下ろす。

彼も咄嗟(とっさ)の反応で爪を盾に使うが、落下の勢いに乗ったルカの一撃には耐えきれず、真っ二つに折れてしまった。

左肩から一直線に刻み込まれた斬撃。

さらに抑えていた【カマイタチ】までもが彼を斬り裂く。

二人の間に緑色の鮮血(せんけつ)が舞う。


「良いねぇ良いねぇ、最高の気分だ!!」


地が砕けアクチュエータの姿が消える。

しかし今のルカにはそれを目で追うことが出来るため、すぐに近くの岩壁に飛び移ったのがわかった。

が、続いて真横にあった小さな谷間(たにま)の入口付近に、さらにその次は後ろの地面と次々に飛び移っていく。

しかもその間の時間がどんどん短くなって────────────。


(速度が増している!)


なんと彼の思った通り、繰り返す度にその速度が上昇しているのだ。

(つい)にはまた目で追うことも出来なくなってしまうほど。

地面が砕けたかと思いきや、次の瞬間には斜め後ろの岩壁が音を立てて崩れ落ちる。

もはやどこにいるか完全に分からなくなってしまった。


「うっ!?」


ズバッ!と背中が斬られる。

反射的に反応して剣を横薙(よこな)ぎするが、やはり空振(からぶ)り。

今度は左足に爪痕が刻まれた。

このままではルカが倒れるまでこれが繰り返される事になってしまう。


(ジリ貧だ・・・・!この術ももう長くは持たない。切れてしまえば確実に僕の負け・・・・・次の一撃で決めないと後がないぞ!)


ルカは最後の()けに出た。

あらん限りの魔力を絞り出し、全てを自身の片手剣に集束(しゅうそく)させて行く。

彼の全てをかけた最後の一撃だ。

しかし、それも当たらなければ意味が無い。

どれだけ威力があろうと外れれば相手にダメージは残らないし、何も彼は"運良く当たれば・・・・・"なんて神頼みの賭けをしようって訳じゃない。

ルカには確証があった。

こうすれば戦い好きの彼がどうするか。


「・・・・・・おもしれぇ、お前の思惑(おもわく)に乗ってやんよ!」


魔力が凝縮(ぎょうしゅく)して黒い雷のようにバチバチとスパークする剣を持つルカを前に、アクチュエータも(おのれ)闘争心(とうそうしん)(あお)られたらしく、そう言いながらさらに速度を上げる。


「真正面から行くぞォォ───────!!!」


「月には叢雲(むらくも)(はな)には風と、月詠(つくよ)見守る朧月(おぼろづき)─────────!!!」




「"ブラッティファング"!!!」

「"月晶斬華(げっしょうざんか)"!!」



宣言通り真正面から突っ込んで来たアクチュエータ。

その速度は一時的とは言え光速に達し、彼の一撃は先程とは比べ物にならないほど重い一撃となっていた。

いつの間にか復活した両方の爪を合わせて開き、まるで肉食動物の牙かのようだ。

二つの閃光が衝突し、辺り一体が光に飲まれる。





光が収まると、そこは大地がひび割れ周囲のものが粉々になった瓦礫(がれき)の山。

しかし中央だけはサラ地になっており、位置が変わった二人が背を向けて立っていた。


「・・・・・・・最後の技、ありゃあ何だ?」

「我らが守護神(しゅごしん)、ツクヨミ様から教えて頂いた最強の技だよ。未熟(みじゅく)な僕じゃあ成功率と失敗率が五分五分(ごぶごぶ)だけどね」

「ははっ、なるほどな・・・・・・最後に良い技・・・・見せて、もらったぜ・・・・・!」


上半身の斬り傷が(あらわ)になるとともに、両腕の爪がパキンッ!と折れアクチュエータがその場に倒れる。

全てを賭けた最後の一撃、勝ったのはルカだったようだ。

剣を地面に突き刺して片膝をつく。


「はぁ、はぁ・・・・・魔力枯渇(こかつ)で、倒れそう・・・・・」


やはりまだ"月晶散華"は彼には早かったらしい。

これまたツクヨミによって与えられた技なのだが、剣に纏わせる魔力の調節が効率良く出来ず、無駄に拡散(かくさん)してしまう魔力が多かったのだろう。

まだまだ修行が必要だ。

魔力の使いすぎで頭痛と倦怠感(けんたいかん)がものすごいことになっている。

今すぐ増援に行きたいだろうが、少しの間体を休めないと動くことすらままならないはず。

幸いな事に周囲の敵はだいたい一掃(いっそう)されているので、襲撃(しゅうげき)されることを気にすることなく休めそうではある・・・・・・・・・・・・・はずだった。


「ふむ、貴方(あなた)がアクチュエータを倒した月の民ですか。なるほど中々興味深い」

「なっ!?」


誰もいないはずだった。

それなのに、いつの間にか横たわるアクチュエータの真横に十六の足を持つ、いわゆる火星人のような宇宙人が立っていた。

この宇宙人の見た目がアルサーボに類似(るいじ)していることはルカはまだ知らない。


「やはり魔力という物は不思議ですね。遥々(はるばる)ここまで来たかいがありました」


そう言うや(いな)や一本の触手をルカに向けると、そこから細いレーザーが放たれる。

咄嗟に剣を反転させて逸らそうとするが、あまりの重さに逆にルカが弾かれてしまう。


(くっ、何だこいつの力の大きさは・・・・・・!相変わらず()()()()()()分かりずらいけど、明らかにアクチュエータよりでかい!)


受身を取って立ち上がったルカは、力の入らない手で何とか剣を握り正面に構える。

ここで食い止めなければ。

差し違えてでも奴を皆の所に行かせてはならない。

そう本能がガンガンと危険信号(きけんしんごう)を鳴らしている。


「【カマイタチ】・月輪!」


一対の【カマイタチ】が少しの時間差で触手の宇宙人に迫る。

当たる・・・・・・・と思っていたら、驚いたことに伸ばした触手がまとめて【カマイタチ】を喰らい、体の中を通って反対側の触手からこちらに向けて放たれるではないか。


「・・・・・・っ・・・は、あぁぁぁぁっ!!」


受けた【カマイタチ】を上空に逸らして何とか受け流す。

と同時に首を傾けると、ほおを薄くカスってレーザーが背後の岩石を破壊した。


「ほう、今のを避けますか。あれほど魔力を使っていたのにまだ動けるのですねぇ」


ガクッ!と膝を曲げて片足を地面につけたルカに触手の宇宙人が近づいて行く。

もうすでに最後の力を振り絞ったルカは動けない。

正直意識を(たも)っているのも不思議なくらいだ。


「苦しいでしょう。すぐに楽にして差し上げますから、動かない方が良いですよ?」


目の前まで来た触手に光が集まる。

しかし、その光が放たれることはなかった。


「ほうほう、中々楽しそうじゃないか。アタシも混ぜてくれよ!」

「むうっ!?」


触手の宇宙人の鳩尾(みぞおち)(こいつに鳩尾があるかは分からないが)に拳がクリーンヒットし、遥か遠くまでぶっ飛ばされる。

そしてスタッ!とルカの前に着地したのは、彼らの頼れる族長様だった。


「ぞ、族長!?何故こんな所に!?」


たしか族長はラビに拘束(こうそく)されて・・・・・じゃなくて、指揮官(しきかん)として本部に残っていたはず。

それがなぜ戦場へ?


「え?なんか楽しそうだったから、隙をついて逃げてきたんだよ」

「何してるんですか・・・・・・・」

「まぁまぁ、アイツはアタシに任せとけ。今のお前じゃ全開の状態でも荷が重いからな」

「と言うことは、やはりアイツが」

「ああ。帝王軍幹部のアドレータだ」


遥か遠くで瓦礫を吹き飛ばして立ち上がったアドレータがこちらを(にら)んでいるのが見える。

どうやら余程さっきのが怒り心頭(しんとう)のご様子。


「んじゃラビよ、ルカを頼むぞ」

「はぁ、族長を追いかけて来てみれば凄いことになってますね・・・・・・」


これまたいつの間にかルカの背後に現れたラビに思わずビックリしてしまう。

本当にラビは神出鬼没(しんしゅつきぼつ)だ。

文句を言いながらもラビがルカを背負って移動したのを確認し、彼女を改めてアドレータの方を向く。


「よそ見とは随分余裕ですね、リューネ!」

「相変わらず気持ち悪い敬語を使っているな、アドレータ!」


不意打ちのレーザーを避け、拳と触手がぶつかり合う。

両軍の筆頭(ひっとう)戦士の戦闘が終わり、続いて大将同士の殺し合いが始まった。






次回こそ主人公達が登場します!たぶん!

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