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普通の男子高校生、色々あってハーレムの主になる~記憶を失くした神様が十二人の花嫁と幸せになるための話~  作者: 没
一章

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プロローグ




果てしなく広がる大空の下。

あたり一面に広がる雲海の中に、一際大きな雲の塊があった。

その大きさはなんと東京ドーム二個分ほどあり、自然の多い大地と古代ギリシャ風の住居や神殿などの建築物がたたずんでいた。

行き交う人々の服装はまるで神話に出てくる神様のような純白の装束ばかりで、違う服装をしているのは所々に少人数居るだけ。

住宅が集まる場所から少し離れた所には緑に囲まれた丘があり、頂上には様々な花が咲き誇っている。

この雲海の孤島随一の景色が見れる名所だ。

丘自体がかなり高いのに加えて、頂上までの道のりが険しく、途中にある"迷いの森林"をある特定の行き方で抜けないと入れないため、一人で行くのは中々勇気のいる場所でもある。

子供が一人で入るなんて以ての外だ。

そんな恐ろしくも美しい丘の中腹に、一人の少年が立っていた。

歳の頃はおそらく四、五歳辺り。

彼の目の前には、"この先迷いの森林につき"と書かれた木製の看板が一つ。

彼自身も親からこの場所には一人で行ってはいけないと聞いていて、普段なら決して立ち寄らないスポットである。

が、少年は何かを見上げて、まるで蝶々を追うようにその何かに手を伸ばしながら"迷いの森林"に入ってしまう。


『クスクス、大丈夫だよ!私たちは道知ってるから!』

『本当だよ?あ、そこ左だよ!』

『こっちこっち、もう少し!』


彼の視線の先には、人差し指サイズの、羽の生えた女の子が三人いた。

彼女達が小さく羽ばたく度にキラキラと鱗粉のようなものが綺麗に舞い落ち、少年はそれを追いかけて森林の奥へ奥へと入っていく。

これまた普段なら少年もこんな怪しい子の言うことは聞かないが、何故かこの子達の言ってることは本当だと思ったので、こうして着いてきた。

具体的な理由はない。

何となく、ついて行って大丈夫だと思ったのだ。


『着いたー!』

『着いた着いたー!』

『見て見てー!綺麗でしょー?』


やがて森林を抜け徐々に視界が開けてくると、ついに花々が咲き誇る丘の上に到着した。

嬉しそうに花畑を飛び回る女の子達は少年を呼び、首を傾げる彼に色んな花でできた花かんむりをかぶせる。

彼女達曰く、これは一緒にここに来てくれたお礼らしい。

丘の突き出た先端部分に座り、頭や膝の上に座った女の子たちと共に眼下の景色や風によって舞う花びらを眺める時間は、少年にとってとても大切な時間だった。

ふと、少年はこのどこまでも広がる雲の下には何があるんだろう。

そんな疑問を持った。


『ん〜、知らな〜い!』

『何も無いとか?』

『大地があるとか?』


彼女達も知らないらしい。

お母さんなら知っているだろうか。

帰ったら聞いてみよう。

少年が風にそよぐ花々を眺めながらそんな事を思っていると、突然頭上の少女がピクリと何かに反応して顔を上げた。

それを機に膝の上にいた二人も少年の背後の森林に目を向ける。


『・・・・・誰か来た〜!』

『きゃー!逃げなきゃ!』

『バイバイ!』


そう言い残すと、少女達は少年の返事を聞かぬまま三色の淡い光の残穢を宙に舞わせ、忽然と姿を消してしまった。

少し遅れて手前の茂みがガサガサと音を立て、やがて一人の少女と女性がやって来た。

片や、純白の装束と天使の羽のようなヘアピンを付けた同い年くらいの金髪の少女。

片や、水色の装束を着た蒼髪の大人な女性。

この二人は先程の小さな少女達とは違い、少年のよく知る親しい人達だ。


「も〜、心配したよー!一人でここに来ちゃダメって、アリスお母さんにも言われてたでしょ?」

「あらあら、悪い子にはお仕置きが必要よね〜」


なぜか興奮したようにキラキラ・・・・・・ギラギラ?瞳を輝かせた女性が、座った少年を鼻息荒く見つめる。

これまたなぜかは分からないが、本能的に女性の視線に危険を感じた少年は、若干引き気味に少女の後ろに隠れてしまう。


「んっ、無垢な少年の視線もこれはまた────────!」

「・・・・・・・こうなっちゃったらもう止めようがないんだよね・・・・・」


どういう事だろう。

やれやれと呆れたような顔の少女に疑問を抱いたが、彼女は君は純粋なままで居てね、と言うだけで教えてくれなかった。

まぁそこまで興味津々という訳でもないので、少年もすぐに興味を失って再び景色の方に目が向く。

少年の左右に少女と女性も腰を下ろし、少しの間三人で景色を眺める。


「よ〜し、じゃあそろそろ帰ろっか!」


ふと少女が立ち上がって元気よくそう言った。

確かにもう日が傾いてきて、空がオレンジに染まりかけている。

そろそろ帰らないとお母さんに怒られてしまいそうだ。


「それじゃあお家に向かってレッツゴー!」


ご機嫌な少女が差し出してくれた手を取って、二人で手を繋ぎながら先を行く女性の後を追う。

帰り道は、行きと違って小さな少女達の案内がないので、少年には道が分からない。

つまり彼女とはぐれてしまうとかなりマズイので、高い位置にある衣服の裾を掴みながら、ちょこちょこと早足でついて行く。


「そんなに心配しなくても大丈夫よ。二人だけはぐれるなんて、そんなヘマするつもりは無いわ」


あまりに少年が必死にしがみついていたため女性は苦笑いだったが、それでもその後ちゃんと手を繋いでくれたのは、女性の優しさを表す良い例だろう。

三人仲良く横一列で花畑を後にし、やがてどんどん狭くなっていく道の奥に、唯一森林に繋がっている一本道が見えてきた。

さらにそこを進み、ついに森林へと足を踏み入れようとした瞬間────────────。


ビシィッ!!


空からガラスが砕かれるような音がした。

一箇所だけではない。

次から次へと音は増殖し、見上げた頃にはすでに空一面が無数のヒビが刻まれたガラスのように割れていた。


ピキピキッ・・・・・・・ガシャーーーーンッッ!!!


ど真ん中に一際大きなヒビが入り、ついに空が・・・・・いや、空・間・が・砕けた。

覗く漆黒の向こうから現れたのは、数え切れないほど多い異形の化け物の大群。

理性を失った獣のような目の彼らは最前列に立つ一匹が咆哮を上げると、それに追従して雄叫びを上げながら街に向かって降下していく。


『ギャオォォォォォォォォッ!!』


化け物の口から吐き出された業火がチリチリと大気を焦がしながら家々に命中し、辺りはあっという間に火の海と化してしまう。

一方孤島側からも純白の翼を携えた戦士の風貌の者が集結し、大空の元、化け物達との全面衝突が巻き起こっていた。

あちらこちらで戦火が上がり、生ぬるく血なまぐさい空気が肌を撫でる。

のどかな景色が一転、まるで地獄絵図かのような光景だ。

それがまだ子供の少年と少女に与える恐怖は計り知れず、二人とも上手く声を出せないまま地面にへたり込む。


メキメキッ!


目の前の空間にヒビが入る。

それは破滅の音。

バキンッ!と大きな音を立てて割れた空間の奥から力の本流が溢れ出し、莫大なエネルギーの気流が背後に駆け抜ける。

それが上空のに比べて明らかに異質なのは子供の二人でもよく分かった。

コツ、コツ、とゆっくり近づいてくる足音。

一際大きく地面を叩く音がしたかと思うと、漆黒を割いて十代後半くらいの少女が姿を見せた。

真っ黒なドレスアーマーに身を包み、右手には全てを飲み込む漆黒よりさらに黒い片手剣が握られている。


「────────っ!!」

「遅い」


一瞬呆気に取られた女性がすぐさま動いて右手に三又の槍を顕現させるが、その時にはすでに少女によって斬られた後だった。

体に斜めの剣閃が走り、ダラダラと血の流れる傷口を押さえながら息も絶え絶えに片膝を着く。

そんな女性を一瞥もせず通り過ぎた少女は、真っ直ぐ少年の元に歩を進める。

逃げなきゃ・・・・・!

少年はそう思ったがこの人相手に逃げ切れるとは考えられないし、隣で震える少女はそもそも恐怖で体が動かせないようだ。

少女を置いて逃げる?

そんな事出来るはずがない。

ならどうするべきか。

答えは一つ。

少年を震える体を叱咤して立ち上がり、少女を護るように背後に庇いながら漆黒の少女の前に立つ。


「ふっ、安心したまえ少年。今回は殺しが目的じゃあない」

「・・・・・・・っ・・・・」


暗く微笑んだ少女の人差し指が少年の眉間に触れた途端、彼の体から力が抜け、同時に意識も失ってしまった。






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