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越智家の棟梁  作者: 路傍工芸
4/4

間違いないんよ

 やや寝不足

 いつもは6時半には目覚めるのだが、今朝は7時過ぎまで寝てしまっていた。

 もっとも盆休みの真っ最中なので何の心配もいらないのだが。


「おはようさん、桂ちゃん。」

 真知子叔母さんの声が布団の私に投げかけられた。

 ふと隣を見ると将がいない。


「将君ならもう朝ご飯食べよるよ。」

 真知子叔母さんの朝ご飯だ。私も早く食べなければ。


 今日は墓参りに行く日だ。越智家代々の墓は歩いて15分ほどの裏山にある。

 将をなだめすかして連れて行かなければならない。途中までは車で行けるが、細い階段があるので、そこからは徒歩になる。


 しかし昨晩の記憶はいったい・・・

 ふすまを開けて隣の大部屋を覗く。

 

 8畳の大部屋。

 欄間には先祖の写真が額縁で飾ってある。中には桂太郎さんのものもある。

 なんの変りもない。


「どうしたん、桂ちゃん。」

「いや、なんでもないです。」


 昨晩の出来事を叔母さんに言おうか迷ったが、気がふれたと心配されるのがオチであろうからやめておいた。


 しかし、気になることだらけだ。昨晩の出来事をそのまま言うことはないが・・・


「おばちゃん、桂太郎さんってどんな人だったんです?」

「突然なん?桂太郎さんはそりゃあ軍人らしい軍人・・・」

「いや、なんていうか、その。それじゃ人間味がないので・・・」

「ああ、性格とか人となりとかんこと?」


「案外ひがみっぽかったらしいんよ。」

「へえ」

「沖縄に派遣されると決まった時、桂次郎叔父さんやお父さんに「俺ばっかりだ!」って相当自棄になって愚痴を言ってたらしいんよ。」

「初めて聞くよ。」

「今更内緒にすることもなかろうからね。お父さんがこっそり教えてくれたんよね。」


 私はあと一つ、確かめねばならなかった。


「あの~」

「なん?」

「恭子さんのこと。」

「桂太郎さんのお嫁さん?」

「火傷で亡くなったときに妊娠されてたらしいんですけど・・・」

「よう知っとるねえ。桂次郎叔父さんが話したんか?」

「ええ。」

 私は嘘をつくのが苦手なので、桂太郎さんの写真を見ながら答えた。


「赤ちゃんも一緒に亡くなったんですか?

 もう内緒の話もなにもないとおもうんですけど・・・」

 私は含みを持たせて叔母さんに質問した。


「恭子さんと赤ちゃんは確かに、空襲のあとに亡くなったんよ。

 二人とも亡くなった。間違いないんよ。」


 叔母の言葉に含みがあったのか、それとも素直に亡くなったという事実を教えてくれたのか。

 はたまた仮に桂太郎さんと恭子さんの赤ちゃんが生き延びていたのが真実だとして、叔母もその真実を知らないのか。


 気付くと蝉の声があたり一面に聞こえる。まさに夏だ。


 さあ、叔母さんの作ってくれた朝ご飯を将と食べて、支度をしたら墓参りだ。

 今年は念入りに墓参りをせねばなるまい。

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