ユニコーンボーイとメタリックな彼女
「ねぇ、わたしのこと、すき?」
ベッドの中で僕の腕にもたれ、ハルはとろけるような声で言った。
「もちろん、大好きだよ」
「うれしい、わたしもだーいすき!」
ハルがその小さなむねを僕に押し当てるようにすりよる。僕は彼女の艶やかな髪を撫でる。
普通のカップルなら、ここから始まることはひとつなのだろう。
しかし、僕とハルはそのまま身体を寄せあったまま静かに時を過ごした。
夜更け過ぎ。ハルがすーすーと寝息をたてているのを確認して、僕は寝床を抜け出した。
着替え、そのまま家を出る。
「こんばんわ。時間通りですね」
白衣に身を包んだ女性。豊満な身体つきに目を奪われがちだが、どこか達観したような目付きがとにかくぐっとそそられる。
「まあ、約束でしたしね」
「それで、ハルの具合はいかがですか?彼女は、人間の女性と比べて遜色ありませんか?」
「ええ、そうですね。むしろ人間以上だと思います。外見も内面も。気配り上手ですし、会話も特に違和感はありません」
「セックスしましたか?」
唐突な質問。白衣の彼女は、まるで天気の話でもしてるように動じていない。
「いや、してません。その、、」
「なぜ?ハルの外見も内面も人間以上なのではないですか?」
「だって彼女はアンドロイドじゃないですか」
「私とセックスしたいと思いますか?」
「急ですね」思わず苦笑する。
「答えてください。あなたは私の質問に答える義務があります」
「わかってますよ。、、、えぇ。出来るなら」
「なぜ私とはセックスしたいのに、ハルとは出来ないのですか?」
「あなたは人間で、ハルは機械だからですよ!」
白衣の彼女はふふと笑みをこぼした。初めて彼女が笑うところを見た。
「男性は不思議ですね。裸の女性の絵でも興奮するのに、手を触れることのできる距離にいる魅力的なアンドロイドとはセックスしないだなんて。これまでご協力ありがとうございました。報酬は指定の口座に振り込んでおきます」呆気にとられる僕を尻目に彼女はさらに続ける。「これまで同様のテストを5回行いましたが、誰もハルとセックスしなかった。でも」
白衣の彼女が哀れむような目で僕をみた。
「ハルは、人間ですよ」
僕が家に戻ると、ベッドはもぬけの殻だった。ハルの残り香さえ、そこにはなかった。