王城にて
脱字があったので修正しました。
馬車の中はそれなりに広く、だいたい5、6人乗れそうである。今はエレナさんとラナと自分しか乗っていない(マリーさんは御者)ので余裕はあるのだがなぜかエレナさんは自分にくっつくほど近くに座っている。ラナは自分の向かいに座っているので顔が見えるのだがあの怖い笑みをしている。
「ユートさんとラナさんとはどういう関係はなんですか」
「ラナとは冒険者仲間です」
「女性の冒険者とは珍しいですね」
やはりだがラナとの関係を聞かれた。ただでさえ女性の冒険者が珍しいのに男女で行動しているからだろう。これはもう仕方がない。
「ユートさんは冒険者ランクがFだと聞きましたが本当ですか」
「はい、おととい冒険者登録したばかりですので。今日も依頼のため森に行き、その帰りに結界に気付いたのです。まさか襲われているのが王族の方とは思いませんでしたが」
「結界に気付き氷魔法まで使えるなんてAランクの冒険者でも魔法に長けた人数人しかいませんよ。ユートさんは剣を持っていたので剣も得意なんでしょう?」
「いえ、護身用なのでそこまでは……」
魔法はイメージで発動すると聞いていたので凍らせるイメージをしただけだが、そんなに使えないのものなのだろうか。剣はスキルによるところが強いので得意とは言いづらい。
「あっ、もうすぐ門に着きますね。ユートさん、マリーが呼ぶと思いますが兵士の方に説明よろしくお願いしますね」
エレナさんと話をしていたら門の近くまで来たらしい。たぶんいつものように身分確認されるのだろうが今回は置いてきた奴らを回収してもらわないといけないため自分も説明しなければいけないらしい。エレナさんから説明されていると馬車が止まった。門に着いたらしい。
「これはマリーさん。お早いお帰りで。何かありましたか」
「盗賊に襲われてしまったので緊急ですが帰ってきました。ただ盗賊たちはロープで縛って放置しておきましたので回収をお願いします」
「それは本当ですか!縛っているということはマリーさんが倒したということですか」
「いえ、偶然通りかかった冒険者が助けてくれました。その方は今馬車に乗っておりますので少々お待ちください」
マリーさんが自分の名前を呼んだので馬車から出る。そこにいた人はカルナから出るときにいた人と同じだった。
「おや、君が盗賊を倒したのかい。Fランクなのにすごいね」
「はい。依頼の帰りに見つけて助けました。まさか王族の方だと思いませんでしたが」
「ははは、まあ人助けも冒険者のお仕事だからね。とりあえずギルドにも報告しつつ盗賊を回収しに行きます」
そういって門の近くにあるちいさな建物に行った。たぶんギルドやほかの兵士に連絡するのだろう。
「さて私たちも行きましょうか」
マリーさんがそういって御者の席に座る。自分も馬車に乗る。
「そういえば馬車が通っているところ見たことないけど通れるの?」
ふと思ったことをラナに聞いてみる。ラナに向けて言ったのだが先にエレナが答えてくれた。
「門からお城までの道はいつでも馬車は通れます。その通りには馬小屋を多く設置しているので馬車で来た方でも安心して馬を休ませることができます。しかしほかの道は決まった時間しか通れません。人通りが多い時間に馬車が通ったら危険ですからね」
エレナさんの丁寧な答えに納得していたらラナが頬を膨らませていた。説明役を取られて怒っているのだろう。外を見てみるとエレナさんの説明通り馬小屋が並んでいた。きちんと馬車を置く場所もある。この世界での駐車場みたいだ。そんなこんなでお城の前に着く。お城の外に門があると思っていだがなかった。防犯対策とか大丈夫だろうかと思っていたら馬車が止まった。
「ユートさん、お城に着きました。降りましょう」
エレナさんに言われて馬車から降りる。周りを見てみると庭があり、王都の中からも見えていたが大きいお城だ。そして入り口近くにメイドと執事らしき人たちが並んでいる。一体いつからいたのか、それとも連絡してあったのか謎だ。
「さて、ユートさんとラナさんは客室に案内しましょう。エレナ様は王様に今回の出来事をお伝えに行ってください」
「わかりました。ではユートさん、ラナさん、私はここで失礼させていただきます。またお会いしましょう」
といってエレナは一人颯爽とお城に入っていった。自分たちはマリーさんについていく。お城の中はやはり豪華だ。廊下にシャンデリアがついているし、床もきれいな石でできている。 しかし見た目が大きかったので中も相当広い。案内がないと迷子になってしまいそうだ。
「さて、ここが客間です。どうぞお入りください」
中に入ると豪華ホテルのスイートルームのように豪華だった。関係ないが自分はテレビでしかスイートルームは見たことがない。部屋の真ん中に大きなテーブルと椅子がある。庭に出れる大きな窓、扉もあり料理もできそうなキッチンルームもある。
「そちらに座ってお待ちください。今お茶とお菓子をご用意いたします」
マリーさんはキッチンルームに行ってしまった。自分たちは椅子に座って待つ。さすがに興味本位に部屋の中をうろちょろするわけにもいかない。しかしすぐにマリーさんはお茶の用意を終え来てくれた。
「お待たせしました。こちらダージ茶です。お菓子は私が作りましたものですがクッキーです。お召し上がりください」
マリーさんが持ってきたダージ茶は珈琲みたいに黒い。何か苦そうに見える。クッキーはシンプルなものだった。ダージ茶を恐る恐る飲んでみると見た目と裏腹にほとんど味はない。しかし後味がかなりすっきりする。ハーブティーみたいなものかもしれない。クッキーは甘すぎないのでお茶ととてもあう。
「すみません、ハチミツがあればお茶もクッキーももっとおいしくなるのですが今切らしていまして。本日ギルドに依頼をしましたがこの時期ハニーベアも冬眠から覚めるので採取も危険で量も少ないのです」
「今日依頼でハチミツを取りに行きましたが依頼主さんはマリーさんですか?依頼主の名前が空欄でしたが」
そういいながら自分はアイテム袋から依頼書とハチミツを出す。もし依頼主でなくてもまたハニービーさんに頼んでみよう。さすがにもらえないかもしれないけど。
「はい、正確にはエレナ様が依頼主です。王族の名前を出すわけにはいかないので空欄にさせてもらいました。こちらで依頼達成のサインをしますので依頼書をください」
マリーさんが依頼書にサインをする。これで依頼達成ということらしい。
「報酬もあとでお渡しします。ギルドに依頼書を渡せば依頼達成数にカウントされますのでよろしくお願いします。ではせっかくですのでハチミツを使ってみてください」
ハチミツをダージ茶に入れてみた。ハチミツの甘さがいい感じに広がるが後味は先ほどのようにさっぱりしている。クッキーとも相性がいい。お茶とクッキーを楽しんでいるとノックの音が響いた。マリーさんが扉の方に行くと扉の外にはメイドさんがいた。何か話すとそのまま中に入らずどこかに行ってしまった。戻ってきたマリーさんが
「ユートさん、ラナさん。王様がお会いしたいようです。謁見の間に案内します。ついてきてください」
なぜ王様がこんな低ランクの冒険者に会いたいのか謎だが断るわけにはいかないのでついていく。少し歩くと大きな扉の前に案内された。
「ここが謁見の間です。まだ王様が来ておりませんので楽な姿勢で大丈夫ですよ」
扉が豪華なせいか、この先に王様がいると思っていたせいか緊張していて固くなっていたようだ。少し気を楽にしてマリーさんと一緒に謁見の間に入る。中は意外と豪華さはなかった。なんというかいらないものはおいていない感じである。しかしそれが逆に身を引き締める。マリーさんが謁見の間の真ん中あたりで泊まると
「こちらで申し訳ございませんがお立ちになったままお待ちください。王様が来ましたら跪くようお願いします」
たぶんそれが礼儀だろう。よくライトノベルでも王様に会うときは跪いていることが多い。まさか自分がすることになるとは思っていなかったが。少し待っている間周りを見てみると壁際に武装した人が何人かいる。たぶん兵士だろう。自分と違って動く気配がない。置物のようだ。マリーさんも壁際に移動して立っていた。かなり時間がかかるものだと思っていたが急に鈴の音がした。何事だと思っていたらマリーさんや兵士の方々が跪いた。あの鈴の音は王様が来る合図だろう。自分たちも跪いた。頭も下げているので足音で判断するがたぶん王様が来て玉座に座った。
「さてユートとラナ。顔をあげて楽な姿勢にするがよい」
王様にそう言われたので自分は顔を上げ立ち上がる。ラナも少し遅れて立ち上がった。マリーさんや兵士の方々も立ち上がる。王様は髪の毛や髭が白いせいかすごく年齢が高く見える。細いサンタクロースみたいだ。王様の隣にエレナさんと若い男性がいた。男性は秘書みたいな人だろうか。
「そういえば自己紹介がまだだったのう。わしはアレン・オルステイン。ここオルステイン王国の王様じゃ。お主らのことも教えてくれんかの」
「私はユート・サクライといいます。最近冒険者になりましたのでランクはFランクです」
さすがに名前だけだといけないかなと思いフルネームでいう。名前を言った後マリーさんと兵士の方々が驚いたような顔をした。王様とエレナさんは特に反応はなかった。王族は何を言われても反応しないことになっているのだろうか。
「私はラナです。ユートさんと一緒に冒険者になりましたので私もランクはFランクです」
「ふむ、ユートに聞きたいのだがユートはどこかの貴族か?サクライ家は聞いたことがないぞ」
「サクライ家は遠くの小さな家ですので聞いたことはないと思います」
「ふむ……そうか、ならよい。あまり詮索せん。本題に入ろう。娘とマリーを助けてくれたらしいのわしからもお礼を言う」
王様が頭を下げた。近くにいた秘書らしき男性が慌てて王様に何か言っている。
「我が娘の命が助かったのじゃぞ。頭を下げるくらいお安いものじゃ」
秘書らしき人は『王様が頭を下げてはいけません』的なことを言ったのだろう。王様が頭を下げたらそりゃ慌てるわ。
「さてユートに褒美をあげたいのじゃが、ユートは何を望む」
王様の発言に今度は自分たちとエレナさん以外の人が驚きの表情をした。しかし褒美といってもたまたま助けただけのでもらう資格はないと思う。
「私はたまたま襲われているところを通りかかり助けただけです。助けた人が王女様だとしても褒美をもらう資格は私にはございません」
この答えに王様はなぜか笑った。大笑いとは言わないが声に出して笑った。
「ユート、お主のこと気に入ったぞ。『何を望む』といわれ何もいらないと答えたのは初めてじゃ。ほとんどのやつは大金や高価なものを欲しがる。まあわしもよほどのものでない限り褒美としては渡しておるがの。しかし褒美をいらないと言われるとさすがに困る」
王様が困ったように悩み始めた。そういわれても自分はもらう資格はないと思っているし、ハチミツの依頼報酬だけもらえれば十分と思っている。するとエレナさんが王様に近づき何かを言った。王様が驚いたような顔をした後納得したような顔をした。
「そうじゃ、お主の褒美は我が娘にしよう。エレナはもうすぐ16歳になる。16歳になるとほぼ同時に結婚するのがしきたりで結婚相手を探していたがなかなかみつからなくてのう。ちょうどいいユート、婚約相手になってくれんかの」
「「ええー!」」
謁見の間にいた、王様とエレナさんを除いた全員が叫んでしまった。まさか褒美から結婚、婚約相手の話になるとは思ってもいなかった。というよりなぜこんなことになった。
ユートはどう答えるのでしょうか。ユートにとっては予想外な展開ですね。読者様たちにとっては予想通りかもしれませんが。




