episode 7 夢
よろしくお願いします。
「ねえね!今年は花火.....!一緒にみんなで見れるよね?」
「花火......?」
「そう!花火!去年はみんなで見に行けなかった
けど、今年はみんなで行きたいなぁって」
そう言い、屈託のない笑顔を見せる凪。
なんで凪が目の前にいるのか、ここはどこなのか
分からなかったが、凪が目の前にいる。
それだけが確かなわけだから、それ以外のことは
どうでもよかった。
「あぁ、今年はみんなで花火見よう!なぁ、隼人、伶奈」
「......そうだね!一緒に見たいね」
「......この前は見えなかったもんな」
唐突の提案に驚いた様子。
2人が喋るまでに少しの間があったような気がしたが、2人とも凪に共感したみたいだ。
だけど.....このやり取りどこかで......?
「花火見る前にまずは自分たちでも花火したいよね♪」
「うん!夏といえば花火だしね!」
「なら、花火は俺が用意しとくよ」
「サンキュー隼人」
自分の頭とは別に口が動く、そんな不思議な感覚が
した。
言葉を交わして為、分からないが2人もそれを感じているように思えた。
それはまるで決められた台詞を言うかのように......
話はトントン拍子に進んでいく。
「じゃあ隼人くんにとびっきりの準備してもらおうよ~」
「でもあまり高いのは申し訳ないよ?」
「ならみんなでお金出し合うにするか?」
「いやいーよ。みんなでするって言ったら喜んでだしてくれるからさ!」
「じゃ、隼人にお願いしようぜ!」
「うん!またなんかみんなでお礼することにしようよ!」
「うん!賛成!」
「ならまた詳しいことは今度話そう!」
楽しげな、それでいて懐かしげな雰囲気。
何故だか、久しぶりに心から笑えた気さえした。
だけど、この会話に何かの違和感を感じているのが自分もいた。
次の瞬間、その違和感は、凪の一言でそれ以上のものへと変わることになる。
「来年の花火は私、見ることはできないもんね.....,」
その一言で俺は、胸が凍りつくような、心が張り裂けるような感覚を覚えた。
「な、なんでだよ、凪!今年も来年もまたみんなで見ればいいじゃないか」
「そ、そうだよ!」
「なにいきなり変なこと言ってんだよ」
「そうやって3人は私をいなかったことにするんだね。私に来年も、また明日もなかったんだ。
なのに、みんなには......」
「凪、誰もお前のことを忘れちゃいない!だからそんなこと言うのはやめてくれ」
「そうだよ。凪、凪のこと忘れたことなんてあるわけないよ!」
「あぁ、凪を忘れたことなんてあるはずが......」
「そっか!みんな私のこと忘れてないんだ。よかった......ごめんね、いきなりこんなこと言って......
じゃあ最後に1つだけ聞いてもいい?」
その言葉の後に、今まで見たことのない、感情のこもっていない目で凪はこう言った。
「私が死んだのは誰のせいかな?」
……
気がつくと、俺は自室のベッドで横になっていた。
俺たちに朝を告げるかのように遠慮のない眩しい光を太陽が部屋全体を照らしていた。
どうやら、さっきまでのやり取りは夢......
だったらしい。
だけども俺はそれをどうしてもただの夢として捉えることができなかった。
凪が死んだのは間違いなく俺のせいだ。
俺が嘘なんかつかなければ......
どうすることもない後悔の波がまた俺を飲み込もうとする。
でも、これが何かしらのメッセージだったら?
あの日以来、行くことができていない凪のお墓、あそこに行けば何かが分かるかもしれない。
許してほしいなんて思えない。だけど、少しでも気持ちを伝える事ができるのなら......
「母さん、ちょっと出かけてくる」
一歩踏み出さないと行けないのだと思った。
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