episode 4 妻夫木隼人
隼人視点のお話です。よろしくおねがいします!
キーンコーンカーンコーン
……
「えー、真紀は隼人くん派なんだ~」
「顔もイケメンだし凄く優しいし、親は金持ち!ぜったい隼人くんでしょー!」
「私は結城くんかなぁ」
「あーそれわかる~あの何考えてるかわかんないのがいいのよねぇ!」
「雫はあのクールな感じで耳元で囁かれたいって言ってたもんね~」
「ま、私たちの高校が誇る二大イケメンだもんねー」
「ほんと、それも真逆の!言うなれば黒王子白王子だね!」
「笑顔でいつも優しい隼人くんに、クールな感じで口数少ない結城くん。同じ空間にいれることに感謝しなきゃだね!」
……
白王子ねぇ、そもそも岳と比べられる時点て気に食わねえ。
それに......なんでいつも岳ばっかりなんだ!
伶奈もそして凪だって......いつもみんなに注目されるのも、好意を寄せられるのも全てあいつだ。
それが悔しく、そして憎かった。
だから、あの頃から俺はあいつに負けないように頑張ってきたんだ。
岳が代表リレーのエースになろうものならそれを奪うために早起きして、走る練習もした。
岳が学力テストで100点を取り、俺は90点、それが悔しくて寝る間も惜しんで勉強もした。
それでも俺が岳に勝てたことといえば、家が裕福でお金を人より持ってたこと。そして親からもらったこの顔だろう。
結局自分の力であいつに勝つことは出来なかった......
だが勘違いして欲しくないが、決してあいつのことが嫌いな訳じゃなく、悔しさ、憎しみと同時に友達、そして仲間として尊敬、そして信頼もしていた。
可笑しな話だろう?それでも当時は劣等感を感じることもあったが毎日が楽しかった。
だが、それはあくまで小学校までの話だ。
凪が死んでから岳は変わっちまった。
あいつは頑張らなくなった。
何をするにもやる気のない態度。
そして俺が岳に負けることはなくなった。
俺は今まであいつに負けることが嫌でずっと頑張ってきたんだ。それなのにあいつは簡単に頑張ることをやめた。
だが、死んだとはいえ、凪の中の1番は間違いなく岳だった。そして今の伶奈に取っての1番もだ。
いつまでも死んだことを言い訳にして、腑抜けるあいつが気に入らない。
努力しているお前に勝たなきゃ俺は一生お前に勝ったとは言えないしな。
それに、お前がいくら願ったところで凪が帰ってくることはねえんだ。
いつまでウジウジしてやがる。
「隼人様、お迎えに上がりました」
「あぁ、今日はそのまま家に向かってくれ」
「かしこまりました」
車に興味のない俺からしたらどうでもいいことだが、他の学生やら先生やらが羨望の目で見ている様子を見れば中々の高級車らしい。
俺はこの車、好きじゃねえんだけどな......
ま、岳が凪のことを引きずる理由もわからないでもない。
あの日、俺たちがお膳立てしてやったのに、お前は嘘をつき悲しませた。
そうだ、お前が大好きだった凪が死んだのは、あの日お前が素直にならなかったから。
その後に凪は轢かれて死んだんだからな。
凪を殺したのは轢いた車じゃない。岳、お前自身だ。
轢いた車を責めるのはおかしいことだ。あの日、お前が素直に気持ちを伝えていれば起きなかったことだろう?
「隼人様何かお考え事ですか?」
「いや、本当あいつは馬鹿だなぁって思っただけだ」
「私が知っているお方ですか?」
「あぁ、お前もよく知っているやつのことだよ」
......
俺がどんな思いであの時、お前の為に凪を呼んだのか分かるか?
あの時の......俺の気持ちをお前は知らねえくせに......
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