episode 3 朝比奈伶奈
伶奈視点のお話です。基本3人視点で話は回っていく予定です。よろしくお願いします!
私、朝比奈伶奈は結城岳が好き。
小学校の時は照れることもなく、そして深く
その意味を追求することもなく、口にできた「好き」の二文字。
それが簡単に口から出せなくなったのはいつだろう?
毎年恒例のように渡していたバレンタインチョコに特別な思いを込めるようになったのはいつだろう?
岳と話すと胸が苦しく、そして切なく感じるようになったのはいつだろう?
だけど、どんなに想ってもこの気持ちを伝えることはできないんだよね。
「結城ーおはよー!」
岳に楽しそうに、幸せそうに話しかける楓。
いいよね、楓は。何にも縛られずに岳に話しかけることもできるし、普通に恋だってできる。その気になれば告白だってできる。
岳は鈍感なところがあるから気づいてないし、楓もバレてないつもりかもしれないけど周りからしたら本当バレバレだよ?
まあ、その気持ちが実ることはないと思うけど......
岳はずっと凪のことが好きだった。いや、今も好きの間違いかな?
そしてきっと凪も岳のことが好きだった。
あの頃、凪がまだ生きていた頃、私たちはいつも4人で過ごしてたけどあの2人はそれ以上に一緒だった。
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“凪ー早く来いよー!みんなと遅れるぞー?”
“よいしょっ、がっくんはやいよぉ~”
“ったく、仕方ねえなー!ほら、手貸してやるから。急ごうぜ!”
“岳、早く来いよー!頂上へは俺が1番乗りになっちゃうぞー?”
“凪ー早くしなよー。岳も早くこないと私にまで負けちゃうよー?凪なら大丈夫だって!”
小学校生活の折り返し地点に差し掛かった頃にはもう岳のことを好きだと言うことを自覚していた私は、凪と岳が2人でいるのに嫉妬を覚えていた。
そして負けず嫌いな岳を煽ればきっと凪を置いてこっち、私の方へ意識が向いてくれるんじゃないかなと思った。
“隼人、伶奈、先にあがっといてくれ。凪のやつ体力ねーから俺が待っとかなきゃいけねーから”
岳は誰に負けるのも嫌で、あんなにも強気で先頭を行きたがるのに、凪がいるときばかりはこうなんだ。
だから、その挑発に岳は乗ることはなく、凪から目を離すこともなかった......
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小学校5年生のバレンタインの日だったかな?
1度だけ私は岳に告白をしたことがある。
もちろん、恋愛的な好きの意味。
今思えば彼はきっと恋愛的な好きだとは思ってなかったのだと思う。
岳は私のことを大事な仲間だし、大事な友達だよと言ってくれた。
その言葉だけでも私は嬉しかった。
でもそれは、私に対して恋愛感情はなく、文字通りの友達でしかないことも理解せざるを得ない言葉でもあった。
なんで凪ばっかり......
いつも岳の目に映るのは凪ばっかり。
私だって凪と同じように、同じ時間を過ごしている。それなのにどうして凪ばっかりなの?
だから当時、凪のことが好きだった隼人に2人の本当の気持ちを探ろうよと持ちかけた。
凪の気持ちを知りたかったであろう隼人は二つ返事で協力してくれて2人を別々に呼び出そうと言うことになった。
女の私からしたら凪は間違いなく岳が好きだと分かっていた。
だから、この計画は私は2人が両想いだと知っていて、2人の思いが実るのか、もしくはすれ違ってくれるのかを見るための計画だった。
だけどそれはとんでもない悲劇を生み、取り返しのつかない事態を巻き起こしてしまった。
もし、凪が死んだのは誰のせいかと言われれば間違いなく私のせいだ。
私がそんなことを考えなければ凪は死なずに済んだ。4人がバラバラになることもなかった。
凪が死んで五年経った今でも岳の目には未だに凪しか見えないのはきっと恋愛感情に流され、友情に亀裂を生んだ私の報いなんだ。
もう一度、岳の笑顔が見たい......
ここまでご覧いただきありがとうございます!